【六枚落ちマニュアル】第2部第3章第5節 棒銀定跡 ステップ2-2

◆本節では、棒銀定跡、ステップ2-2を解説します。

前節ではこの△5三玉と上がった局面で、「▲2二成銀」「▲1二成銀」「▲1八飛」の3つを解説しました。
それでは本手順の▲1四歩(44図)の解説に入りましょう。

この▲1四歩はちょっと珍しい手です。垂れ歩…と言っても1三には成銀がいるのですぐにと金は作れません。また1三の成銀はすでに▲1九香が支えていますので、1三成銀を守る意味でもなさそうです。
説明すると、この▲1四歩はやはりと金を作る狙いです。
さて、今後は上手に選択肢があります。本手順は△7五歩と突きますが、△5五歩(ステップ3基本図)を下手の角道を止める手も有力であり、これをステップ3で解説します。

下手の角道を止めることで何が変わるのか、ステップ3のお楽しみです。
では、△5五歩に代えてステップ2の本手順である△7五歩(45図)に進みます。

この△7五歩は上手の反撃です。銀と歩の協力で7筋を攻めます。
「歩と歩がぶつかったら取るのが基本」なので、この△7五歩を▲同歩と取る手が基本です。ただし、この場合は取らなくても、被害は歩を損するだけです。そして、この△7五歩以上に厳しい攻めである▲2二成銀(46図)を本手順とします。

上手はもちろん△同金(47図)と取ります。

ここで下手は狙い通り▲1三歩成(48図)でと金を作ることができます。

1三のマスは「攻め駒2枚対守り駒1枚」ですから、下手の攻めが成功です。ここで、「なぜ下手は▲2二成銀と銀を取る前に▲1四歩と打ったの? 先に銀を取ってから▲1四歩と垂らしても同じことになるのでは?」と考えた方は鋭いです。その疑問の答えは、実は前節で解説しています。
まずは上手が△5三玉と上がった43図に戻ります。

この局面で、前節では最初に▲2二成銀(参考18図)と銀を取る手を解説しました。

上手は△同金(参考19図)と取ります。

下手はここで▲1四歩(参考20図)と垂らします。

これで次の▲1三歩成を狙えばうまくいきそうですが、ここで上手は△1二歩(参考21図)と受けることができます。

これは下手が攻めにくく失敗です。これを踏まえて、▲2二成銀と銀を取らずに▲1四歩と垂らした44図を改めて確認しましょう。

銀を取らずに先に▲1四歩と打つことで、上手に△1二歩と打てないようにしているのです! もしそれでも上手が△1二歩(参考31図)と打てば…

下手はもちろん▲同成銀(参考32図)と取ることができます。

下手は成銀が1三から1二に移動しても、次の狙いは▲2二成銀と銀を取る手ですから、損をしていません。
つまり、▲2二成銀と取る前に▲1四歩と垂らす意味は、「上手の△1二歩の受けを消し、確実にと金を作れるようにする」だったのです! (ちなみに、この▲1四歩は上野が考えた手ではなく、普及指導員の原田慎也さんの発案です)
では、▲1三歩成を実現した48図に戻ります。

あらためて48図。
上手は金を取られたくないので△3二金(49図)と逃げます。

ここでようやく、下手の飛車が役立ちます。飛車+と金のコンビで▲2三と(50図)と攻めます。

棒銀定跡では、飛車は1筋の攻めに参加せず、こうして2筋を攻める時に役立ちます。上手は金を取られたくないので△4二金(51図)と逃げます。

そして、下手はさらに角+と金のコンビで▲3三と(52図)と攻めます。

と金で金を狙いつつ、上手玉に近づき、下手好調です。
上手は金を取られたくないので△5二金(53図)と逃げます。

ここで下手は飛車を成ることができます。「2一」「2二」「2三」の3か所です。この中で「▲2一飛成」は一段目に上手の駒がなく、良い成り場所ではありません。よって「2二」か「2三」のどちらかです。どちらも良い手ですが、本マニュアルでは▲2三飛成(54図)を推奨、本手順とします。

ここに成ることで、間接的に上手玉を狙うことができます。そして下手は次に狙っている手があります。
上手は△7六歩(55図)と取ります。

この△7六歩のように歩を取りながら歩を進める手を、将棋用語で「取り込む」と言います。

この△7六歩は下手の歩を取りつつ、7七を狙う攻めの拠点になります。

ステップ2-2は以上です。
55図では、下手のうまい攻め手順がありますので、興味がある方は考えてみてください。3手先まで読めればOKです。
次回は「棒銀定跡 ステップ2-3」です。(4月11日公開予定)


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