【六枚落ちマニュアル】第2部第3章第6節 棒銀定跡 ステップ2-3

◆本節では、棒銀定跡、ステップ2-3を解説します。これでステップ2が完了します。

さて、上手が△7六歩と取りこんだ55図から再開します。ここでの下手のうまい攻め手順、それは▲4三と(56図)と捨ててしまう手です。

正確に言えばと金で歩を取っているので「と金→歩の交換」ですが、感覚的にはこれは「捨て駒」なのです

4三のマスは玉と金の2枚で守られており、竜+と金の2枚だけでは突破できません。もちろん上手は△同金(57図)と取ります。

この「▲4三と」は、数の攻めで考えれば失敗です。しかしここで▲4四銀!(58図)が必殺の手筋です。

この▲4四銀は竜の利きと角の利きを生かした攻め方であり、上手は△同金とも△同玉とも取れないことを確認してください。なんだか「一間竜」に似た攻め方ですね!
上手は仕方なく△6二玉(59図)と逃げます。

下手はもちろん▲4三銀成(60図)と金を取ります。

▲4三とから▲4四銀の技が決まり、下手優勢です。
上手は△7三玉(61図)と上がります。

この△7三玉は「玉の早逃げ」です。早めに下手の攻め駒から遠ざかることで、玉を安全にしました。
下手は▲4四角(62図)と出ます。

この▲4四角は、角を大きく使い、次に▲7一角成と上手玉の近くに馬を作る狙いです。なお、▲4四角に代えて▲3三角成(参考33図)も良い手です。

▲4四角に比べ、▲3三角成ならすぐに馬を作ることができます。ただし馬が竜の利きを止めてしまうマイナスもありますので、本マニュアルでは▲4四角を推奨します。
では62図に戻りましょう。

さて、上手は△5五銀(63図)と進出します。

金や銀などが前進する手を「進出する」と呼ぶことがあります

この△5五銀は、角取りかつ下手玉に向かって前進するとともに、▲4四角の下手陣への利き(特に7七のマスへの利き)を遮断する意味があります。
下手は▲7一角成(64図)と成ります。

玉は原則として「下段に追う」のが良いです。よってこの▲7一角成は(上手から見て)玉を下から追っている感じであり、あまり良い攻め方ではありません。しかし、実際に上手玉の近くに馬を作ることができたのは大きなプラスです。
上手は△7七歩成(65図)と攻めます。

この△7七歩成はと金を作った手です…が、よく見ると8九の桂で取ることができます。よって下手は▲同桂(66図)と取ります。

上手はせっかく作ったと金を取られてしまいました。しかしこれは予定通りの進行です。ここで上手は△7六歩(67図)と打ちます。

この△7六歩が上手の狙いでした。最初の△7七歩成は桂で取られてしまうのですが、今度はその桂を狙います。
さて、ここは下手にいろいろな手があります。まずは取られそうな桂を逃げる「▲8五桂」「▲6五桂」も良い手です。この二つの手は、桂を逃げると同時に上手玉に王手をかけることができます。その上で、本マニュアルでは桂を逃げずに上手の金を狙う▲5三成銀(68図)を推奨、本手順とします。

この▲5三成銀は上手の要の守り駒である△6三金を狙う手です。しかも成銀の後ろから竜と馬が支えています。
上手は△同金と取ると▲同竜で下手の竜が迫ってくるため、取らずに△7四金(69図)と逃げます。

下手は成銀を前進させて順調です。
ここでも下手にいろいろな手があります。さらに成銀を上手玉に近づける「▲6三成銀」や、上手玉と同時に△5五銀を狙う「▲5四成銀(王手銀取り)」も良い手です。本マニュアルでは、上手玉を8四に逃がさない▲6二馬(70図)を推奨、本手順とします。

この▲6二馬は前述したように上手玉を8四に逃がさない効果があります。
ここで上手が△8二玉と逃げる手を本手順としますが、先に△6四玉(参考34図)と逃げたらどうなるか確認しましょう。

この△6四玉は、玉をどんどん上に脱出しようという手です。このように逃げられると焦ってしまう方もいらっしゃると思います。しかしよく見ると、次に上手玉が逃げるマスは7五のみです。そしてそこから…行き止まりなのです! 下手の▲6七歩と▲8七歩が上手玉の逃げ道をあらかじめふさいでいる格好です。そのため、恐れずに▲6三成銀(参考35図)と寄ります。

この時、馬を動かさずに成銀で王手をかけるのが大事です。▲6二馬は8四の逃げ道をふさいでいるので、動かすと上手玉を詰ましにくくなります。
上手は△7五玉(参考36図)と逃げるしかありません。

上手玉がどんどん上に逃げてきました。しかしここで行き止まりです。▲8六金(参考37図)で上手玉が詰みとなります。

▲6二馬が8四の逃げ道をふさいでいることを確認してください

こうした詰まし方は、実戦ではよくあります。上と下の駒で挟み撃ちにするイメージです。
以上、△8二玉に代えて△6四玉と逃げる変化を解説しました。では下手が▲6二馬と王手をかけた70図に戻ります。

では、本手順の△8二玉(71図)の解説を進めます。

こちらに逃げれば、上手玉はまだ詰むことはありません。ここで下手が▲7二金と打っても△9二玉と逃げれば大丈夫です。
そこで下手は金を温存して▲6三成銀(72図)が好手です。

▲6三成銀に代えて▲3二竜と竜を二段目に入る手も好手です

この▲6三成銀で、馬と成銀で協力する形ができました。上手は受けがないので△7七歩成(73図)と攻めます。

この△7七歩成は、桂を取りつつ下手玉に近いマスにと金を作る、とても価値が高い手です。通常はこうした手を指させずに受けた方が良いのですが、下手はそれ以上のスピードで攻めているので大丈夫です。さあ、▲7二成銀(74図)と上手玉に迫ります。

▲7二成銀に代えて▲7二馬、あるいは▲7三成銀も好手です

上手は△9二玉(75図)と逃げます。

△9二玉に代えて△9一玉と逃げてもほぼ同じです

上手玉はここから先に逃げることができず、行き止まりです。そこで下手は温存していた金を▲8二金(76図)と打てば詰みです。

最後は上手にと金を作られながらも、下手が素早く上手玉を詰ますことができました。
これでステップ2が完了です。
次回は「棒銀定跡 ステップ3―1」です。


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