数の攻めマニュアル 第7章 他の手筋との組み合わせ
◆数の攻めは、それ自体が強力な攻めです。
他の手筋を合わせて使うことで、より強力な攻めになります。
本章では、「金縛り」と「王手金取り(開き王手)」の2つを解説します。
1,金縛り
金縛りとは、
「飛車や角など遠くまで利く駒で、その先にある玉を狙い、
間にある駒が動かせないことを利用する攻め方」
です。
1図を例として考えます。
攻め駒は竜+と金、守り駒は金と銀です。
竜+と金で攻めるとすれば、6二のマスを狙うのが自然です。
しかし、6二のマスは「2対2」です。これでは攻められません。
(1図で▲6二とは△同銀で失敗です)
こうした場合、今まで解説した知識で考えるなら、
「別のマスを攻める」方法があります。
この場合、と金は6三にも利いています。
では6三のマスの利きを確認します。
6三のマスは「1対1」です。
ということは、ここに竜の利きを加えれば「2対1」になります。
そこで、▲4三竜(2図)と指してみましょう。
これで6三のマスが「2対1」になりました。
2図で上手が△9四歩と突けば、
▲6三と(3図)が成立します。
3図以下△同金▲同竜(4図)で成功です。
(4図は、次に下手の手番になれば▲7二金と打つ手が王手かつ銀取りです)
この攻め方でも、もちろんOKです。
では、もっと素早く攻める手筋をご紹介しましょう。
1図に戻ります。
先ほどは一旦▲4三竜と指し、
6三のマスを「2対1」にしてから▲6三と、と攻めました。
1図では、いきなり▲6三と(5図)と攻める手が成立します。
6三のマスは「1対1」ですから、
△同金?(6図)と取られて失敗…
ではありません。
この金が動くと、竜の利きが玉に届いてしまい、
玉を取られてしまいます。
(正確に言えば、玉を取るということは将棋にはないので、
△6三同金と指してはいけません、ということです)
5図に戻って確認しましょう。
この5図の▲6三とを上手は△同金と取ることができません。
よって、下手は次の手番で必ず▲7二と、と取ることができます。
5図で△9四歩なら▲7二と(7図)で下手成功です。
5図は、竜の利きが7二の金、そしてその先にいる玉をにらんでおり、
間にいる7二の金は金縛りにあったように動くことができません。
この状態を利用した攻めが「金縛り」です。
数の攻めとして考えるなら、
7二の金は6三に動くことができないので、
6三のマスは実質的に「1対0」だったのです。
金縛りも数の攻めと同様に将棋の基本の手筋、考え方であり、
多くの局面で現れます。
ここでは、金縛りの代表的な例を2つご紹介しましょう。
8図は、平手でもよく現れる、美濃囲いを攻める図です。
8図では▲7四桂!(9図)が有名な手筋です。
実はこの局面でも金縛りの考え方が使われています。
5五の角の利きが、7三の歩と、その先にある玉をにらんでおり、
7三の歩は金縛りにあって動くことができず、
▲7四桂を△同歩と取ることができません。
よって9図で後手は玉を逃げるしかなく、
△9二玉に▲8二金(10図)で詰みです。
もう一つ、金縛りの原理を使った強力な手筋をご紹介しましょう。
11図は、▲1三竜と王手した手に対して、
後手が△1二金と受けた局面です。
△1二金は、玉を守りつつ竜を取る手を狙っていますから、
11図では竜を逃げたくなります。
しかし、11図では、必殺技があります。
竜を逃げずに▲2二金!(12図)です。
12図の▲2二金は、「2対2」の攻めなので、数では負けています。
しかし、竜が1二の金、そしてその先の玉をにらんでおり、
1二の金が金縛りにあって動くことができません。
つまり、12図では、
(1)△2二同金と取る手は、竜で玉を取られてしまうので指せない
(2)竜が2二に利いているので、△2二同玉ともとることができない
よって、後手はこの▲2二金を取ることができず、
12図で後手玉は詰みとなります。
この▲2二金は「一間竜」という有名な手筋であり、
金縛りと数の攻めを合わせたような必殺技です。
実戦で出現することがとても多いので、
はじめて見たという方はぜひ覚えてもらえたらと思います。
2,王手金取り(開き王手)
続いて「王手金取り」の技をご紹介します。
13図は竜+と金で5二のマスを狙っている局面です。
5二のマスは「2対1」です。
よって、13図では▲5二とが成立します。
上手は△同金と取ると▲同竜と取られてしまうので、
△6三金と逃げます(14図)
14図であらためてと金+竜で数の攻めを狙うなら、
6二のマスです。
しかし、6二のマスは「2対2」です。
そこで、「別のマスを攻める」ことを考えます。
今のところ、と金は5三にも動けますから。
5三のマスの狙いに切り替えます。
5三のマスは「1対1」です。
数の攻めなら、14図で▲3三竜や▲4二竜と指し、
5三のマスを「2対1」にします。
しかし、14図ではいきなり▲5三と(15図)が成立します。
5三のマスは「1対1」でしたから、数の攻めとしては失敗です。
しかし、15図をよく見てください。
と金を動かしたことによって、竜の利きが玉まで届き、
なんと王手になりました。
しかも、と金で金取りをかけていますので、
15図の▲5三とは、「王手」と「金取り」を同時に実現したのです。
つまり「王手金取り」です!
(正確に言えば、このように間にいる味方の駒を動かすことで、
竜などの大駒の利きが通って王手になることを「開き王手(あきおうて)」と言います)
15図では、上手はまず王手を受ける必要がありますから、
金を逃げる暇がありません。
△8一玉と逃げれば▲6三と(16図)、と金を取って大成功です。
これが王手金取りの技の威力です。
数の攻め、金縛り、そして王手金取り。
この3つを使いこなして上手の金や銀をはがすことができるようになれば、
六枚落ちは半分クリアしたと言ってもよいでしょう。
第7章は以上です。
これで、「数の攻めマニュアル」はひとまず完了です。
かなり長文になりました。
読んでいただきありがとうございます。
本マニュアルを読んでいただいた皆さんが、
終盤戦をよりうまく戦えるようになれば幸いです。
なお、この数の攻めマニュアルは、
私にとって新しい試みです。
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