【六枚落ちマニュアル】第2部第2章第4節 9筋攻め定跡 ステップ1-2

◆本節では、9筋攻め定跡、ステップ1-2を解説します。

前回は上手が△9三歩と受けた14図まで解説しました。ではその続きを。
下手はもちろん▲同香成(16図)と取ります。

角と成香のコンビで攻め、9三のマスを数の攻めで破ることができます。上手は△同銀(17図)と取ります。

下手はもちろん▲同角成(18図)と取ります。

これで下手は9三のマスの戦いに勝ち、ついに9筋を破ることができました! 角を成ることができたのも、大きな成果です。ただし下手は飛車を使えていないので、飛車を9筋から成りこみたいところです。
上手は△3二銀(19図)と囲いを作ります。

上手陣は△3二銀と△4一金だけ見れば美濃囲いのようです。このようにお互いの駒の利きで連結する形は良い形です。
下手は▲9八飛(20図)と回ります。

この▲9八飛で、ようやく飛車を使うことができました。
上手は△3一玉(21図)と引きます。

この△3一玉は玉を安全地帯に移動する手です。現在、戦場は9筋ですから、そこから玉が1マスでも遠ざかる手はとても価値が高いのです。
下手は▲8二馬(22図)と入ります。

この▲8二馬は、金取りにしつつ、飛車を成るスペースを作った「味がいい」手です。将棋用語の「味がいい」とは、2つ以上の効果がある手のことです。上手は△6三金(23図)と逃げます。

この△6三金は、金を逃げつつ玉に少しでも近づける手です。
下手は▲7二馬(24図)と追撃します。

この▲7二馬に代えて先に▲9二飛成と飛車を成っても良いです。ただし、この局面は飛車を必ず成ることができるので、慌てなくても大丈夫です。
上手は△5四金(25図)と逃げます。

上手は、本当は金を玉に近づけたいのですが、逃げるならここしかありません。
さて。ここで下手はいよいよ飛車を成ります。
成るマスは「9一」「9二」「9三」の3か所です。このうち、▲9三飛成はなんとなく働きが悪そうなので、▲9一飛成と▲9二飛成の二択です。本マニュアルでは▲9二飛成(26図)を推奨します。

この場合、この▲9二飛成はある狙いを秘めています(あとで解説します)。そしてもう一つ、▲9一飛成(参考20図)も自然な手です。

私は教室等で「飛車を成ったり打ったりする時は、相手玉と同じ段が良いですよ」とよく話します。理由は、参考13図のように竜と玉の間にいる駒、この場合は△4一金ですね。この駒が金縛りになって動けず、攻めやすいからです。
その意味では、この▲9一飛成も良い手です。
ただし、▲9二飛成には鋭い狙いがあるので、こちらを本手順とします。

あらためて26図です。
相手玉が一段目(この場合は△3一玉)にいる場合、こうして二段目に飛車を成りこむ形も、二段目の竜の利きを生かして攻めやすいのです。
一つの例として、参考21図を挙げましょう。

このように△3一玉を直接攻めるのではなく、▲9二飛成と二段目に成ることで、玉の逃げ道をふさぎ、次の▲3二金を狙う良い攻めの形になります。

またまた26図に戻ります。
相手玉が一段目にいる時に、二段目に飛車を成ることの良さがなんとなくお分かりいただけたでしょうか。
上手は△6五金(27図)と上がります。

この△6五金は攻めの手です。次に△5六金や△7六金を狙っています。ただし、歩を取られるだけなので、下手は受けずに攻めます。ここで▲6三馬(28図)が好手です。

この▲6三馬は竜の利きを通し、かつ△4一金に狙いをつけた手です。
上手は△5六金(29図)と攻めます。

この△5六金は、次に△4七金や△6七金を狙っています。下手玉にだいぶ近づいてきたので、不安に思う方もいらっしゃると思います。しかし、下手玉の周りには金と銀ががっちり守っているので、金だけの攻めではびくともしません。
よって下手は攻めます。ここでは▲6三馬の形を生かして▲4一馬!(30図)と切るのが好手です。

大駒で小駒を取って交換する手を「切る」と言います。

この▲4一馬は決断の一手です。通常、金よりも馬の方がはるかに価値が高いからです。しかし、この場合はここから上手がどう応じても詰んでしまうのです! 30図では上手に以下の選択肢があり、順に解説します。
1)△同玉(本手順)
2)△同銀
3)△2二玉

まずは△同玉(31図)から。

この2手で、下手が金を取り、上手が角を取りました。下手から見て「角金交換」の駒損です。しかも、ただの角ではなく馬に昇格していましたから、さらに損です。
しかし、この場合は守りの要である金を取ったのが大きく、その取った金を▲4二金(32図)と打てば詰みです!

頭金、基本の詰みです。
次に2)△同銀(参考22図)を考えます。

これなら、銀が3二や4二のマスを守っています。しかし竜の利きが通り、▲2二金(参考23図)と打てば詰みです。

▲2二金に代えて▲2二銀でも詰みです。

最後に、▲4一馬に対して取らずに3)△2二玉(参考24図)と逃げる手を解説します。

△2二玉に代えて△2一玉と逃げる手も、これから解説する手順で詰みます。

まずは▲3二馬(参考25図)と銀を取ります。

竜と馬のコンビで良い形の攻めです。上手は△1二玉(参考26図)と逃げます。

△1二玉に代えて△1一玉でも同様に詰みます

そしてさらに▲2二馬(参考27図)と近づければ詰みです。

▲2二馬に代えて▲2二金と打っても詰みです。

以上「9筋攻め定跡 ステップ1」が完了です。飛+角+香+歩で9筋を破る感覚をなんとなくつかんでもらえたかなと思います。
 
次回は「9筋攻め定跡 ステップ2―1」です。


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