【六枚落ちマニュアル】第2部第3章第9節 棒銀定跡 ステップ3-3

◆本節では、棒銀定跡3-3を解説します。これでステップ3が完了します。

それでは、下手が「▲3四と」と指した97図から解説を再開します。ここで上手が△7四玉と指しても、下手の成香+と金の攻めを防げないことをステップ3-2で解説しました。そこで上手は△6六歩(98図)と反撃します。

またまた「歩と歩がぶつかった局面」です。ただし今回は、下手がこの歩を取らなければ上手に△6七歩成で「と金」を作られてしまいます。そうなると被害が大きいので▲同歩(99図)と取ります。

上手はさらに△6五歩(100図)と攻めます。

この△6六歩から△6五歩の一連の手順は「継ぎ歩(つぎふ)」の手筋です。上手の狙いは、下手が▲同歩と取れば△同金と取り、目標になっている金を逃げつつ逆に攻めに使うことです。
そこで、下手はこの△6五歩を取らずに▲4四と(101図)と攻めます。

上手はどう応じても金を取られるので、受けずに△6六歩(102図)と取りこみます。

下手はもちろん▲5四と(103図)と金を取ります。

ここで上手は△同金と△同玉、二つの取り方があります。本手順で△同玉と取る手を解説しますので、先に△同金(参考67図)の変化を解説します。

上手は△同金と取ることで、成香に玉を近づけずにすみます。しかし、上手玉の下部の守りが薄くなります。よって下手は▲6二竜(参考68図)と攻めます。

上手は竜の利きを止めるために△6三銀(参考69図)と合駒をします。

ここで下手に好手があります。▲7三銀などで王手をするのではなく▲7三金(参考70図)が良い手です。

王手をかけずに守りの銀を狙います

この▲7三金は、次に▲6三竜と銀を取りつつ上手玉を詰ます狙いです。これで下手の勝ちは目前です。
それでは、下手が「▲5四と」と金を取った103図に戻ります。

では、103図で△同玉(104図)の解説を進めます。

この△5四玉はと金を取りつつ▲4三成香を取る手を狙っています。そこで下手は▲5二竜(105図)が好手です。

この▲5二竜は成香にひもをつけつつ王手をかける一石二鳥の手です。ここで本手順は△6四玉と逃げますが、△4五玉(参考71図)と逃げたらどうするか、先に解説します。

ここでは長手数で上手玉を詰ます手もあります(▲3六銀△3四玉▲3二竜△2四玉▲3三竜△1五玉▲2五金△1六玉▲1三竜まで)

ここではいろいろな攻め方があります。覚えて欲しいのは▲2五金(参考72図)という手です。

これで次に「▲3四銀」や「▲4六銀」の詰みを狙い、上手は受けがありません。
では下手が▲5二竜と指した105図に戻ります。

ここで△6四玉(106図)の解説に進みます。

この△6四玉は守りの駒に近づく自然な手です。
ここでも下手にいろいろな攻め方があります。数の攻めでしたら「▲5三金」もよいでしょう。そして推奨は▲6五金!(107図)と捨てる手です。

この▲6五金はただ金を捨てる手ではありません。「送りの手筋」と呼ばれる手筋で、金を取らせることで上手の玉と金を引き離し、上手の金を取ってしまう狙いです。上手は△同玉と取る手を本手順としますが、取らずに△7三玉(参考73図)と逃げたらどうなるかを先に解説します。

こう逃げれば、金と玉が連携したままです。しかし今度は△7五銀が浮いてしまうため、下手は▲7五金(参考74図)と取ることができます。

上手の攻防の要である△7五銀と取りつつ、さらに次に▲8二銀の詰みを狙い、下手大優勢です。
では下手が▲6五金と打った107図に戻ります。

というわけで本手順の△6五同玉(108図)の解説を進めましょう。

下手は予定通り、上手の玉と金を引き離すことができました。よって▲6三竜(109図)と取ります。

これが「送りの手筋」の効果です。先に駒を捨てても、あとで取り返すことができるのです。
さて109図、上手は竜の利きを止めるため、合駒をする必要があります。この場合、駒を打って合駒をするのではなく、△6四銀(110図)が工夫の手です。

合駒は駒を打つパターンが多いのですが、このように盤上にある駒を動かして合駒をする手を「移動合」と呼びます。この場合は、玉が逃げるマスを作ることが目的です。
下手は▲7四銀(111図)と打ちます。

もしここで7五に逃げ道がなければすぐに上手玉が詰んでいましたが、移動合の効果で△7五玉(112図)と逃げることができます。

上手に△7五玉と逃げられましたが、下手はまだ持ち駒に金があります。よって▲8五金(113図)と打てば詰みです。

以上でステップ3が完了です。△5五歩と角筋を止めるてごわい指し方に対して、成香+と金+竜で上手陣を破ることができました。
次回は「棒銀定跡 ステップ4-1」です。


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