【六枚落ちマニュアル】第2部第1章第4節 スズメ刺し定跡 ステップ2ー1

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◆本節では、スズメ刺し定跡ステップ2ー1を解説します。(ステップ2は2-1と2-2の2つに分けて解説します)

それではステップ2の解説開始です。
下手が1筋を攻め、上手がその受けを諦めて△5二玉と逃げた局面です。
この局面、下手は香を成るマスが「1一」「1二」「1三」と3つあります。どこに成るのがよいか、詳しく解説しましょう。 
本マニュアルでは▲1二香成(36図)を推奨します。

この▲1二香成は、次に▲2二成香と銀を取る手を狙った「銀取り」の手です。そして「のちに飛車を成りやすくする」というメリットもあります。
 
続いて▲1三香成(参考2図)を考えます。

これは▲1二香成と同じく「銀取り」です。上手が△同銀と取れば▲同飛成で問題ありません。しかし、上手が成香を取らずに△3一銀(参考3図)と引かれた時、少し攻めにくいのです。

下手は香を成ることに成功しましたが、飛車を使いにくいのです。参考3図で▲1二成香と飛車の成る場所を作るのであれば、最初から▲1二香成の方が良いでしょう。(ただし、飛車の使いやすさという点を除けば▲1三香成は良い位置なので、▲1三香成という指し方も覚えてもらえたらと思います)
 
最後に、▲1一香成(参考4図)を考えます。

これなら次に▲1二飛成と飛車を成りこむ狙いがあります。
しかし1一の成香は隅っこなので攻めのスピードが遅く、先の2つの手と違って「銀取り」ではありません。さらに上手は△1三歩(参考5図)と受ける手があります。

これで飛車成を防がれ、さらに△1一銀と成香を取る手を狙われてしまいます。参考5図で▲1二香成と引けば悪くはありませんが、それなら最初から▲1二香成と成った方が良いでしょう。
 
以上の理由により、この場合は▲1二香成がベストだと考えます。 ▲1二香成と成った36図に戻ります。

上手は銀を取られたくないので△3一銀(37図)と引きます。

この局面も下手の分岐点です。2つの攻め方があります。
本マニュアルの推奨は▲2一成香(38図)です。

こうして上手の銀を狙いつつ、飛車を成るためのスペースを作ります。
そしてもう一つは▲1三飛成(参考6図)です。

この▲1三飛成も良い手です。次に下手はステップ1で解説した「突き捨ての歩+垂れ歩(▲2四歩△同歩▲2三歩)」を狙います。
どちらを本手順とするか迷ったのですが、▲2一成香はステップ3でも使うので、慣れておく意味でこちらにします。
 
38図に戻ります。

上手は銀を取られたくないので△4二銀(39図)と逃げます。

再度、下手の分岐点です。飛車を成るマスが「1一」「1二」「1三」の3つあります。どれも良い手ですが、この場合は金取りになる▲1二飛成(40図)がベストです。
 

下手は飛車を成りこむことができました。しかも△3二金を狙った「金取り」です。上手は金を守るため△4一玉(41図)と指します。

上手は玉みずから動き、金を守ります。これで▲3二竜なら△同玉と取ることができます。
さて、41図も下手に選択肢があります。「▲2四歩(42図)」と「▲2二成香(参考7図)」です。どちらも良い手ですが、本マニュアルでは▲2四歩を本手順とします。

この▲2四歩はステップ1で解説した「突き捨ての歩」です。△同歩と取らせて▲2三歩の垂れ歩が狙いです。

もう一つ、▲2二成香も自然な手です。

こうすれば△同金に▲同竜で上手の金をはがすことができます。最初はこちらを本手順にしようと思っていたのですが、「先にと金作りを目指す▲2四歩の方が、あとの攻めが楽」なので、こちらを本手順とします。
 
では、42図に戻ります。

この▲2四歩は次に▲2三歩成を狙っていますから、上手は△同歩(43図)と取ります。

そしておなじみ、▲2三歩(44図)の垂れ歩で攻めましょう。

下手の攻めが好調です。
なお、この▲2三歩に代えて▲1四歩と垂らす手もあります。ただし、
「▲2三歩→▲2二歩成」は2手で金取り
「▲1四歩→▲1三歩成→▲2二と」は3手で金取り
です。よって▲2三歩の方が、攻めが早いのです。
(なお攻めの速度を計算する際に、上手の手を考えず「攻める側の手だけ数える」という上記の考え方をよく使います) 

上手は受けがないので△6四銀(45図)と上がります。 

この△6四銀は次に△7五歩と攻める狙いがあります。しかしこの局面では下手の攻めの方が早いので、恐れずに攻めましょう。
(ただし、このあたりでいったん▲7八金と備える手もあります)
下手は予定通り▲2二歩成(46図)と攻めます。

上手は金取りを受ける手がありません。よって△同金(47図)と取ります。

下手はもちろん、この金を取ります。この場合は▲同成香(48図)が良いです。

こうすれば、下手は次に▲3二成香という良い攻めを狙うことができます。一般的に、成駒(と金や成香など)は一段目よりも二段目、三段目の方が動けるマスが多く、使いやすいのです。よって、一段目にいる成駒を二段目に移動させるチャンスがあれば、おおむねそうした方がよいです。
 
上手は△5二玉(49図)と先に玉を逃げます。

この△5二玉は王手がかかっていない局面で先に玉を安全地帯に避難する「玉の早逃げ」です。駒落ちの上手は、この「玉の早逃げ」をとにかくよく指します。
 
下手は予定通り▲3二成香(50図)と攻めます。

次に▲4二成香と銀を取られてはまずいので、上手は△5三銀上(51図)と逃げます。

(5三のマスには、6四の銀と4二の銀、両方を移動することが可能です。そのため、4二の銀が5三に上がったことを示すため△5三銀「上」と記述して区別します)

ここで下手に好手があります。今まで使えていなかったあの駒…そうです、角を使う時がきました。▲3三角成(52図)です。

これで下手の攻撃陣が「竜+馬+成香+持ち駒の金」と、手厚くなりました。しかも、次に▲5一金の詰みも狙っています。(もしこのように角を使えない局面であれば、角を使わずに攻めることを考えます)
 
上手は△6一玉(53図)と逃げます。

これも、▲5一金と詰まされる前の玉の早逃げです。
下手は▲4二成香(54図)と進撃します。

この▲4二成香は上手の△5三銀の利きに入るので、少し不安に思う方もいるかと思います。しかし下手の竜と馬が控えていますので、△同銀には▲同竜や▲同馬で大丈夫です。
 
上手はさらに△7二玉(55図)と早逃げします。

上手は金を1枚取られたものの、玉を金と銀で守ることができるマスに移動しました。下手は「竜+馬+成香+持ち駒の金」で好調な攻めです。
 
以上、ステップ2ー1でした。
次回は第5節「スズメ刺し定跡 ステップ2ー2です。 


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