【六枚落ちマニュアル】第2部第2章第13節 9筋攻め定跡 ステップ4-2

◆本節では、9筋攻め定跡 ステップ4-2を解説します。

では、下手の▲8四歩に対して上手が△7四金と逃げた局面から解説します。ここは下手にさまざまな手があります。以下の5つです。
 
1)▲9四歩(本手順)
2)▲7五歩(金を攻める)
3)▲8五桂(桂を攻めに参加)
4)▲8三歩成(成り捨ての手筋)
5)▲9七香(9筋を狙う)
 
126図における本マニュアルの推奨は▲9四歩(127図)です。

これは突き捨ての歩であり、△同歩に▲9三歩と垂れ歩で攻める狙いです。これを本手順としてステップ4-3で解説します。
このステップ4-2では、▲9四歩以外の4つの指し手を順に解説します。まずは2)▲7五歩(参考92図)から。

この▲7五歩は金取りです。上手は△6四金(参考93図)と逃げる一手です。

下手はもともと8筋を攻めようとしていたので、上手の金が6四に移動すれば攻めやすくなります。…と思いきや、この▲7五歩は下手の角の利きを止めてしまうマイナスがあるのです。また、金を6四に移動させたのは下手にとってプラスばかりではなく、次に△5五歩と角の頭を攻める狙いができるという一面もあります。
よって、2)▲7五歩はプラスもマイナスもあるので、ベストの手ではありません。
では126図に戻ります。

次に3)▲8五桂(参考94図)を考えます。

この▲8五桂は、9三のマスに桂の利きを加える手です。せっかく▲7七桂と跳ねたのですから、こうして桂を使うのは自然な発想です。
ただし、この局面では上手に好手があります。△6六歩(参考95図)と突く手です。

この△6六歩は突き捨ての歩です。ただし、下手がよく使う「突き捨ての歩→垂れ歩」ではなく、下手の受け方によって指し手を変える高等テクニックです。
下手は次に△6七歩成と上手にと金を作らせるわけにはいかないので、歩か角、どちらかで取ります。まずは▲同歩(参考96図)から。

歩と歩がぶつかった時に▲同歩と取るのは自然な受け方です。ただし、この局面では角の利きが止まるので上手は△8四金(参考97図)と指せます。

下手はせっかくの攻めの拠点である8四の歩を取られてしまいました。さらに角の利きが止まって攻めにくくなりますので、これは下手が損をしています。
では、▲同歩に代えて▲同角(参考98図)と取ってみましょう。

こうすれば、角の利きが通ったままですので、▲8四歩は取られずにすみます。
しかし、角が上手の金に近づきましたので、上手はここで△6五金(参考99図)と攻めることができます。

この△6五金は角取りと同時に△7六金や△5六金と歩を取りつつ前進する手を狙っています。
この△6五金という手が指せるのは、下手が7七にいる桂を8五に跳ねたから。▲7七桂には攻め駒であると同時に6五のマスを守るという重要な役目があったのです。
下手は▲4八角(参考100図)と逃げます。

ここで上手はさらに△7六金(参考101図)と前進します。

下手から見て、上手の金にこうして攻めてこられるのは嫌ですよね。下手玉にだいぶ近づきましたし、下手の飛車も狙われそうです。
ここから、上手の狙いを知るためにもう少し進めてみます。下手は▲8三歩成(参考102図)と攻めます。

この▲8三歩成は成り捨ての歩です。上手は△同銀(参考103図)と取ります。

下手が▲8三歩成と成り捨てたのは角の利きを9三に通すためでした。
ここで下手は▲9三桂成(参考104図)と成ります。

8五に跳ねた桂が9三に進んで成りこんだので、攻めとしては成功しています。ただし、次の手が上手の狙いでした。△8六歩(参考105図)と垂らします。

こうして下手の飛車の利きを封じるのが上手の狙いです。次の上手の手番で△8七歩成という厳しい狙いがあります。参考105図では▲8三成桂と銀を取ることはできますが、△同金と取り返されて角も飛車もうまく使うことができません。
 
まとめると、3)▲8五桂と跳ねる手はプラスもありますが、6五のマスの守りを放棄してしまうのでベストの手ではありません。
126図に戻ります。

次に4)▲8三歩成(参考106図)を考えます。

この▲8三歩成は成り捨ての歩の手筋です。上手は△同金と△同銀の2つの取り方がありますので、順に解説します。まずは△同金(参考107図)から。

こう取られると、8筋の守りが堅そうですね。特に8四のマスは2枚の金で守っています。しかし8四のマスは下手の飛車と角が利いているので、現在「攻め駒2枚対守り駒2枚」です。そこで恐れずに▲8四歩!(参考108図)が好手です。

▲8四歩に代えて▲7五歩△6四金に▲8四歩と攻める手もあります

8四を攻める3枚目の駒です。これで「攻め駒3枚対守り駒2枚」になりました。上手は金を逃げることができないので△同金寄(参考109図)と取ります。

△同金寄と△同金上は、結局同じになります

下手は勇気を出して▲同角(参考110図)と取ります。

上手は△同金(参考111図)と取る一手です。

下手は▲同飛(参考112図)と取ります。

これで、8四のマスへの数の攻めは成功です。
下手は角と歩を取られた代わりに金2枚を取ることができました。加えて上手の守りが非常に弱くなったので下手成功です。
ここからもう少しだけ進めましょう。上手は△8三歩(参考113図)と打ちます。

下手はチャンスですので▲6四飛(参考114図)と回ります。

▲6四飛に代えて▲5四飛も良い手です。ただし上手玉に近すぎるので、次に飛車を成ることができません。よって▲6四飛が勝ります

これで下手は「6一」「6二」「6三」の3つのマスに飛車を成る手を狙い、下手優勢です。
ここまで▲8三歩成を△同金と取った場合の攻め方を解説しました。参考106図に戻ります。

では今度は△同銀(参考115図)と取ってみましょう。

先ほどの△同金との違いは、8三の銀を攻められても逃げやすいことです。つまりここで▲8四歩(参考116図)と打つと…

この▲8四歩を△同銀や△同金と取れば、▲同角から先ほどの手順と同様になります。しかし上手はこの歩を取らずに△9二銀(参考117図)と逃げる手があります。

こうなると、せっかくの▲8三歩成の成り捨ての歩の手筋があまり役立っていません。よって、▲8三歩成を△同銀と取った局面に戻り、▲9三角成(参考118図)が正解です。

上手の銀が8二から8三に移動したことで、9三のマスを守る駒がなくなりました。この▲9三角成はそれをついた手です。
下手は角を成って好調に見えますが、上手はここで△8四歩(参考119図)と受ける手があります。

こう打たれると、とたんに下手の飛車と馬が使いにくくなりました。ただし、参考119図が下手失敗かというとそうでもなく、▲8二歩(参考120図)と垂らす手があります。

こうして下手は次の▲8一歩成、さらに次に▲8二と、と引いて馬+と金で攻める手を狙えば下手優勢です。しかし依然として下手は飛車が使いにくく、あまりおススメできる攻め方ではありません。
以上、4)▲8三歩成を解説しました。下手優勢にはなりますが、あまりおススメできない手順です。
では126図に戻ります。

では最後に5)▲9七香(参考121図)を考えます。

この▲9七香は、次に▲9八飛と9筋を攻める形を作るための手です。
上手は△6四金(参考122図)と寄ります。

この△6四金は9筋を攻められる前に5筋を攻める狙いの手です。下手は予定通り▲9八飛(参考123図)と寄ります。

これで9筋を攻める形が完成しました。これまでのステップ1から3を読んでいただいた方にはなじみがある形ですし、次に▲9四歩から攻めれば9筋を破ることができそうです。しかし上手は△5五歩(参考124図)と先に攻めます。

上手は金+歩で角の頭、5六のマスを狙っています。下手の9筋の攻めの形もとても良いのですが、こうして上手に先に攻められてしまうと、下手はもう少し早く攻めた方が良かったのではないか、という感じです。
以上、5)▲9七香は「良い攻めの形を作ることができるが、上手に先に攻められてしまう」のであまりおススメしません。
これで一通り解説しました。あらためて126図に戻ります。

ここまで、この126図からの4つの攻め方を解説しました。4つの攻め方の上野基準の点数とその理由です。
2)▲7五歩 +100(△6四金と金を追い払うことができるが角の利きが止まるマイナスがある)
3)▲8五桂 +300(△6六歩の好手があり、6五のマスから攻められるマイナスがある)
4)▲8三歩成 +500(下手優勢になるが、飛車の利きを止められるマイナスがある)
5)▲9七香 +100(攻めに時間がかかり上手に先攻されやすいマイナスがある)
 
以上、ステップ4-2でした。
次回「9筋攻め定跡 ステップ4-3」では、上記126図から▲9四歩と攻める手を解説します。 


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