「(金銀をはがす時の)数の攻めマニュアル」 第1章 数の攻めの基本

指導対局、特に六枚落ち~八枚落ちにおけるポイントは、
「上手の守りの金銀をはがす」
です。
ここがスムーズにできるようになれば、その手合いの半分はクリアしたと言ってもよいと思います。
その際、基本は何といっても「数の攻め」です。
そこで数の攻めマニュアルを作成することにしました。

本マニュアルは以下の方のために書きました。
 ・大体5級~15級程度
 ・特に六枚落ち、七枚落ち、八枚落ち、九枚落ちを教室やぴよ将棋などで  
  指している方

 ・数の攻めの基本を知りたい方

予定の章立ては以下の通りです。

第1章 数の攻めの基本
第2章 駒の数による成否一覧
第3章 数の攻めのパターン
第4章 数の攻めのコツ
第5章 狙った駒に逃げられた後の考え方
第6章 「2対2」の時の考え方
第7章 他の手筋との組み合わせ

それでは、第1章スタートです。

第1章 数の攻めの基本


1、数の攻めとは何か


数の攻めとは、
「相手よりも多くの駒であるマスや駒を攻め、
 そのマスでの戦いに勝つ、将棋の基本原理の一つ」

です。

駒落ちを想定しているので「上手」と「下手」で表記します。

1図は竜+と金で攻めている局面です。
上手陣には6二に玉がいて、その隣の金が守っています。

1図では▲4二と(2図)が好手です。

こうして、と金と、その奥にいる竜で力を合わせて金を狙います。
2図以下、上手が△同金と取れば▲同竜(3図)で攻めが成功です。

3図は、守りの金をはがして大成功です。
このように、相手の守っている駒よりも多くの駒で攻めるのが、数の攻めです。金銀をはがす時の基本の概念です。

2,数の攻めの用途


数の攻めは、将棋の基本原理です。
駒の交換や、相手陣を破る、相手玉を詰ますなど、
将棋のあらゆる場面で使われているといっても過言ではありません。
本マニュアルでは、その目的を「守りの金銀をはがす」に絞って解説します。
(最初はさまざまな数の攻めを解説しようと思っていたのですが、それだと範囲が広すぎて分量が膨大になるので、上記の通り範囲を絞ります)

数の攻めで守りの金銀をはがすことができればベストです。
本マニュアルの第2章~第4章まで、守りの金銀をはがす方法を解説します。
しかし、実戦では金銀に逃げられてしまい、うまく金銀をはがせないこともあります。
第5章からは、そうした場合の指し方を解説します。
第6章ではさらに発展として、他の手筋との組み合わせを解説します。

3,数の攻めの基本の流れ


以下、数の攻めのやり方を順に説明します。

①攻め駒を2枚以上確保する

数の攻めは、相手の守り駒よりも多い数で攻めるのが基本ですから、
最低でも2枚の攻め駒が必要です。

4図は、攻め駒が「竜+と金」で、数の攻めの準備ができています。

5図は、攻め駒が「竜」のみなので、数の攻めが使えません。

②特に成駒は守りの駒の2マス隣まで近づける

次に、攻め駒をどのあたりに配置すればよいかを考えます。

まず、竜や馬などの大駒は、遠くからでもその利きで攻めることができます。

6図のように▲1二竜と離れていてもOKです。
(ただし竜などの大駒も、守りの駒に近い方が攻めやすいケースがあります。第5章で後述します)

次に小駒です。
と金などの成駒は、直接守りの駒の近くまで動かす必要があります。
ただし、準備をせずに守りの駒の隣のマスにいくと取られてしまいますので、まずは、2つ隣のマスまで移動させると良いでしょう。
(特に金の隣のマスに考えなしに動かしてしまうと、取られてしまう可能性が高いです)

4図は、守りの金の2つ隣のマスまでと金を近づけましたので、
数の攻めの準備ができています。

7図は、と金が守りの金から遠く、
まだ数の攻めの準備ができていません。

8図は7図に比べてと金を守りの金に近づけましたが、
まだ少し距離があります。
次に▲4三と、と近づければ、数の攻めの準備ができます。

③どの駒を狙うのか決める

守りの駒の中でも、狙いやすい駒と狙いにくい駒があります。
一般的には、守りの一番外側の駒が狙いやすいです。

9図の場合、まずは5二の金を攻めるのが良いでしょう。
いきなり真ん中の6二金を攻めるのは難しいです。
(その奥にいる玉をいきなり狙うのはさらに難しいでしょう)

4図の場合は、守りの金が2枚あり、どちらかを狙うと良いです。
そして、この2つの守りの金の利きを示した図が下の図です。

これを見ると、5三には2枚の利きがあるのに対して、
5二への利きは1枚だけです。
よって、5二のマスから攻めることのできる「6二金」を狙うのがよいでしょう。

④どのマスから狙うのか決める

ここでは、「6二金」を狙うことが決まりました。
この金を狙うには、4図の場合、5二か5三、どちらかにと金を動かすことになります。

5三は前述したとおり、守りの2枚の利きがありますので、
守りの駒の利きが1枚だけの「5二」から攻めると良いでしょう。

⑤数で勝っていることを確認する

確認すると、5二へ利いている駒の数は以下の通りです。

攻め駒 2枚(竜+と金)
守り駒 1枚(6二金)

よって、5二から攻めれば「2対1」です。

⑥実際に指す

それでは、実際に指してみましょう。

再掲4図以下、▲5二と(10図)と攻めます。

上手は△同金と取りますので、▲同竜(11図)と取り返します。

これで、と金で金をはがすことができたので大成功です。
以上、数の攻めの基本の流れを解説しました。
やや項目が多いのですが、慣れてくると、自然にできるようになります。


第1章はこれで完了です。
続く第2章では、駒の数による成否一覧を解説します。

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