【六枚落ちマニュアル】第2部第2章第12節 9筋攻め定跡 ステップ4-1

◆本節では9筋攻め定跡 ステップ4-1を解説します。(現時点でステップ4が全何回になるか未定です。おそらく4-4か4-5までかなと思います)

 9筋攻めもいよいよステップ4です。
上記ステップ4基本図は、これまでの定跡で△7四歩と突く手に代えて△5二金と上がった局面です。このステップ4では、上手があえて△8四歩とただで取られるマスに歩を突く特殊な作戦を解説します。
まずはその局面まで進めましょう。下手は▲9五歩(111図)と突きます。

この▲9五歩で、下手は次の▲9四歩からの攻めを狙います。
そしてここです。ここで△8四歩(112図)と突くのが上手の作戦です。

この△8四歩という手自体は、下手の角の利きを止め、9筋を攻めにくくする手です。しかし…よく見るとただです。▲同角と取れるのです! でも、上手が突いたのだから何か罠があるような…。
結論から言えば、この△8四歩は▲同角と取るのが正解です。その理由を知るために、まずは「取らなかったらどうなるか」を解説します。
まず、112図で▲9四歩(参考85図)と突いてみます。

上手は△同歩(参考86図)と取ります。

下手は▲同香(参考87図)と取ります。

 この局面は△8四歩と突いた手の効果が現れています。9三のマスは角の利きがなく、攻めの駒と守りの駒が1対1ですから上手は△9三歩(参考88図)と受けることができます。

この△9三歩を▲同香成と取っても△同銀で下手の攻めが失敗です。
112図に戻ります。

この△8四歩に対して、▲9四歩の攻めは失敗しました。次に▲9七香(参考89図)と攻めの形を作る手を考えます。

この▲9七香は次に▲9八飛とスズメ刺しの形を作る準備です。上手は△8三金(参考90図)と上がります。

下手は予定通り▲9八飛(参考91図)と回ります。

下手はスズメ刺しの形を完成させました。しかし、上手の△8三金型も良い形です。この局面、どこかで見たことがありませんか? …そうです、参考91図はステップ1で解説した参考11図とほぼ同じ局面なのです!

上の図は9筋攻め定跡 ステップ1で解説した参考11図です。この局面で▲9四歩と突く攻めは、上手の金と銀にはばまれて失敗でした。今回の参考91図も同様に失敗します。
 よって、△8四歩に対して▲9七香から▲9八飛と攻めの形を作る順はうまくいきません。再び112図に戻ります。

あらためて、この△8四歩の意味を整理します。
1)角の利きを止めることで、すぐに▲9四歩から攻められても上手は受けることができる
2)下手が飛車と香で攻める形を作れば、上手は△8四歩と突いた手を生かして△8三金型に構えることができる
 
つまり、この△8四歩は「下手に▲同角と取られなければ」△8三金型を可能にする、とても価値が高い手なのです。
それなら、下手はどんな罠があろうが▲同角(113図)と取りましょう!

上手は歩を取られました。しかしここで△8三金(114図)と角取りにする手があります。

この△8三金は、△8四歩と捨てたからこそ可能な手です。
そして、下手はもちろん角を逃げます。この場合、もとの位置である6六に引いても良いのですが、▲5七角(115図)が盤面を広く見た好手です。

下手は角取りから逃げつつ、なんと1三のマスを狙っています。次に▲1三角成と労せずして馬を作れたら下手成功なので、上手は△2二銀(116図)と受けます。

さて。
落ち着いて局面を見ると、あの「△8三金型」を上手に作られてしまいました。△8四歩は、「歩をただで取られるが、多少強引でも△8三金型を作る」が真の目的でした。
△8三金型に対して9筋を攻めにくいことは、これまで繰り返し解説しました。でも…よく見ると、上手陣は8筋に歩がありません。ここに目をつけ、攻める筋を9筋から8筋に切り替えます。下手は▲8六歩(117図)と突きます。

こうして、相手の指し方に応じて攻める筋を切り替えるという考え方、駒落ちに限らず平手でも役立ちます。 上手は△6二金(118図)と寄ります。

上手はこの金も守りに使い、金銀3枚で下手の攻めに備えます。
下手は▲8五歩(119図)と伸ばします。

下手は着々と8筋攻めの準備をします。上手は△7二金(120図)と寄ります。

見てください、この上手の守りの形を。密集していていかにも堅そうですね。しかし、どんな囲いにも弱点はありますのでご安心ください。
下手は▲7七桂(121図)と跳ねます。

この▲7七桂は、攻めに使う意味ともう一つ、上手からの△7四金→△6五金という攻めを防ぐ意味があります。
上手は△5四歩(122図)と突きます。

この△5四歩は、今すぐではありませんがのちに△5五歩と5筋を攻める準備です。
下手は▲8八飛(123図)と回ります。

これで下手の攻めの構えが完成です。このあたり、▲8五歩、▲7七桂、▲8八飛の順番は少し違っても大丈夫です。
上手は△6五歩(124図)と突きます。

この△6五歩は、のちに△6六歩で6筋を攻める準備と、6四のマスを空けてのちに金を移動できるようにした意味があります。
下手は▲8四歩(125図)と攻撃開始です。

上手は△7四金(126図)と逃げるしかありません。

以上、ステップ4-1でした。
次回「9筋攻め定跡 ステップ4-2」では、ここからどのように攻めるのかを考えます。


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