【六枚落ちマニュアル】第2部第2章第2節 9筋攻め定跡、基本図までの手順
◆本節では、9筋攻め定跡基本図までの手順を解説します。
それでは、9筋攻めの解説スタートです。
上手(うわて)はまず△4二玉(1図)と玉を上がります。
この△4二玉は居玉(いぎょく・初形図の位置にいる玉)を避けるとともに、3三などを守る手です。居玉はのちに危険になりやすく、特に平手では居玉のままではなく玉を動かして囲う方がよいです。
ちなみに、六枚落ちの下手(したて)は居玉でもよいです。それは、玉を囲うために必要な数手を攻めに使い、上手の攻めの形が整わないうちに戦いを始めた方が分かりやすいからです。
(このあたりの考え方は指導者によって異なります。六枚落ちであっても玉を囲った方が良いという考え方もあります。玉をしっかり囲いたい方は、のちに解説する「三間飛車」「四間飛車」「中飛車」「矢倉」などの作戦も良いでしょう)
解説に戻り、下手は▲7六歩(2図)と突きます。
この▲7六歩は、スズメ刺し定跡でも解説した通り、将棋全般において非常に価値が高い手です。この一手を指すだけでいきなり角を使いやすくなります。
上手は△8二銀(3図)と上がります。
この△8二銀は7三、8三、9三のマスを守る手です。
下手は▲6六角(4図)と上がります。
この▲6六角が9筋攻めのための重要な一手です。9三のマスに利かし、この角を軸にして9筋を攻めるのです。スズメ刺しは原則として角をすぐに使いませんが、9筋攻めでは角は欠かせない攻め駒です。
上手は△7二金(5図)と上がります。
この△7二金は銀と協力して下手の9筋攻めに備える手です。
下手は▲9六歩(6図)と突きます。
9筋を攻めるためには、まず歩を9五まで進めることが大事です。
上手は△6四歩(7図)と突きます。
この△6四歩は下手の角を狙う手です。
ここで9筋攻めにおける重要な手があります。それは▲5六歩(8図)です。
この▲5六歩は5七に角を動けるようにした手です。この▲5六歩の効果を確認するために、▲5六歩に代えて▲9五歩(参考1図)と突いたらどうなるかを解説します。
▲9五歩という手自体は、9筋を攻めるために必要な手です。ただし、ここで突くと上手は△6五歩(参考2図)と突く手があります。
この△6五歩には角を逃げれば大丈夫です。しかし、▲7七角と逃げれば、せっかく9三のマスを狙っていた角の利きがそれてしまいます。よって角の利きをそらさずに角を逃げるには▲7五角(参考3図)しかありません。
そこで上手はさらに△7四歩(参考4図)と角を追います。
下手は▲6四角や▲8六角と逃げることになり、9三への利きが保てなくなってしまいます。これでは9筋を攻めることができず、失敗です。
以上の理由により、▲9五歩と突く前に▲5六歩と角の逃げ場所を作る手が大事なのです。
8図に戻ります。
では、本手順に戻り▲5六歩と突いた局面です。
ここで本手順は△7四歩と突くのですが、▲5六歩と突いた意味を確認するために△6五歩(参考5図)と突いた局面を考えます。
ここで下手は▲5六歩と突いた手を生かして▲5七角(参考6図)が良い位置です。
これなら、9三への利きをそらさずに済みます。それだけではなく、次に▲1三角成と逆方向に成る手も狙うことができます。よってこのタイミングで上手が△6五歩と突くのはむしろ損なのです。
なお、この▲5七角に代えて▲4八角(参考7図)は良い手ではありません。
ここまで角を引いてしまうと、今度は飛車の利きが止まってしまいます。
では8図に戻ります。
上手は△6五歩と突かずに△7四歩(9図)と突きます。
この△7四歩は、次に△7三金と上がる手を可能にした手です。
なお、△7四歩に代えて△5二金(ステップ4基本図)と上がる手もあります。
この△5二金以下、▲9五歩に△8四歩!?とただで取れるマスに歩を突くのが上手の工夫です。この手順はステップ4で解説します。
9図に戻ります。
下手は▲9五歩(10図)と突きます。
この▲9五歩で、攻めの準備が整いました。次に▲9四歩を攻める手を狙います。
上手は△7三金(9筋攻め基本図)と上がります。
以上、9筋攻め基本図までの手順を解説しました。ステップ1から3まで、この図を起点として順に解説します。
次回は「9筋攻め定跡 ステップ1ー1」です。