【六枚落ちマニュアル】第2部第2章第10節 9筋攻め定跡 ステップ3-2

◆本節では、9筋攻め定跡 ステップ3-2を解説します。

ステップ3-1では、上手が馬を作る狙いの手とその受け方を詳しく解説しました。ステップ3-2は、このステップ3基本図から解説を再開します。
まず、上手は△3三玉(72図)と上がります。

ステップ2でも指されたこの△3三玉、玉を安全地帯に避難する価値の高い手です。ちなみに、この△3三玉に代えて△7五歩(参考68図)と指されたらどう指せばよいのか、覚えていますか?

ステップ2-1でも、少し条件が違う局面でこの△7五歩と突く手を解説しました。対して下手は▲同歩(参考69図)と取ると…

上手にすかさず△5四角(参考70図)と打たれてしまいます。

下手は△2七角成と△8七角成の両方を受けることができません。
参考70図は下手不利ではありませんが、「上手に馬を作らせない」というテーマにおいては失敗、ということになります。
上手が△7五歩と突いた参考68図に戻り、別の受けを考えます。

この△7五歩を▲同歩と取ると7六の歩が移動するので、△5四角と打った時に8七まで利きが通ってしまうのです。よってここで▲同歩と取らずに▲7八金(参考71図)と守りを固めるのが正解です。

下手が歩を取らなかったので、上手はもちろん△7六歩(参考72図)と歩を取ります。

下手は歩を損しましたが、馬を作られることを防ぐことができました。参考72図以下は、さらに▲3八金と守りを固めても良いですし、▲7四歩の垂れ歩で攻めても良いです。
では△3三玉と上がった72図に戻ります。

下手は引き続き陣形を整えます。ここでは▲3八金(73図)と上がります。

この▲3八金は、おもに2七のマスを守る手です。なお、この▲3八金に代えて▲3八銀(参考73図)と上がる手もあります。

2七のマスを守るという点では▲3八金と同じですので、この▲3八銀も良い手です。ただし、▲3八銀を上がる場合に一つ知っておきたい受けの手があります。それはここで△2八角(参考74図)と打たれた時の受け方です。

このような角打ちは、平手でもよく現れます。狙いはもちろん△1九角成です。ここで▲1八香と逃げても△1九角成で馬を作られてしまいます。
この場合、金を使って受ける▲1八金(参考75図)が正解です。

これで角を捕獲することができます。△1七角成、△1九角成、△3七角成、△3九角成、いずれも先手がその馬を取れることを確認してください。
では▲3八金と上がった73図に戻ります。

上手は△4二銀(74図)と上がります。

この△4二銀と上がった手で、玉や金に連結することができました。
下手はさらに▲7八金(75図)と備えます。

これで下手は2七、5七、8七などのマスを守り、上手に馬を作られない陣形を整えました。
この▲3八金+▲5八玉+▲7八金の陣形は「中住まい(なかずまい)」と言います。玉を5八、真ん中の筋に配置するのでこう呼ばれています。振り飛車党の方にはなじみがない形だと思いますが、居飛車党の方には、相がかりや横歩取りなどの戦型でよく出るので「指したことがある!」という方もいらっしゃると思います。玉を堅く守るよりも、「陣形全体のスキをなくす」という考え方の構えです。
 ちなみに、この▲7八金に代えて▲7八銀(参考76図)と上がる形もあります。

これも8七のマスを守るので良い手です。ただし、この銀を動かすと8八のマスにスキができます。よって△8八角(参考77図)と打たれた時の受け方を知っておく必要があります。

この△8八角は、次に△4四角成と馬を作る手を狙っています。これを防ぐには▲7七銀(参考78図)が良いでしょう。

これで角を捕獲することができます。あれ。△9九角成と成られてしまうのでは…と心配された方、ご安心ください。9九のマスは竜が利いていますので、△9九角成は▲同竜と取れます。ただし、下手の竜は他のマスに動くこともありますので、いつまでも9九のマスを守っているとは限りません。
よって△8八角と打たれる可能性をもとから作らない▲7八金を、本マニュアルでは推奨します。
では▲7八金と上がった75図に戻ります。

あらためて75図です。
上手は△4四歩(76図)と突きます。

この△4四歩は次に△4三銀と形を整えるための手です。下手は▲4八銀(77図)とさらに備えます。

この▲4八銀で5七の守りを強化できました。さらに玉を4九→3九と逃げるルートも作り、一石二鳥の手です。
上手は△4三銀(78図)と上がります。

この△4三銀で金と連結し、良い形になりました。さて、下手はこれまで良い陣形を整えましたので、そろそろ攻めましょう。▲7五歩(79図)と突きます。

▲7五歩と攻める前に、さらに▲6八銀と上がって備える手も良い手です

この▲7五歩は繰り返し出てくる「突き捨ての歩」です。上手は△同歩(80図)と取ります。

突き捨ての歩のあとは、もちろん垂れ歩です。下手は▲7四歩(81図)と指します。

この▲7四歩は▲7三歩成を狙っています。上手は受けがないので△5四歩(82図)と突きます。

この△5四歩は次に△5三銀と逃げる手を可能にした手です。
下手は予定通り▲7三歩成(83図)と成ります。

下手はと金と成香のコンビで上手の銀を狙います。上手はこのと金を△同銀と取っても▲同成香と取り返されてしまいますので、△5三銀(84図)と逃げます。

上手はなにげなく対応しているように見えて、実は金銀をうまく連結して、良い形を保つことを心がけています。
下手は▲7二成香(85図)と追撃します。

この竜+成香+と金の下手の攻めの形はとても良いです。まずは6二のマスへの攻めを狙っていますし、上手が金銀を逃げてもそのつど対応して攻めやすい形です。
上手は△4五歩(86図)と突きます。

この△4五歩は、△4四銀と指すためのスペースを空けると同時に、場合によっては△4六歩などで攻める狙いがあります。
下手は▲6二成香(87図)と攻めます。

下手は竜+成香+と金の3枚で協力して、上手の金を狙います。上手は△同銀や△同金と取っても「▲同と」と取り返されるので△4二金(88図)と逃げます。

下手はさらに▲6三と(89図)と追撃します。

今度は△5三銀を狙った攻めです。上手は△6二銀と成香を取っても▲同竜と取り返されてしまうので△4四銀右(90図)と逃げます。

「上手から見て」右側にある銀を動かしたので△4四銀「右」です。

上手は下手の攻めに対して金銀をかわして対応しています。下手は続けて▲5二成香(91図)と攻めます。

下手は自然な攻めを続けています。
上手は△3二金(92図)と逃げます。

ステップ3-2は以上です。上手に馬を作らせないような陣形を整えてから攻めるのが下手の工夫でした。
続く「9筋攻め定跡 ステップ3-3」でステップ3が完了します。 


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