【六枚落ちマニュアル】第2部第1章第12節 スズメ刺し定跡 ステップ4-3

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◆本節では、スズメ刺し定跡ステップ4―3を解説します。今回は仕掛けの周辺を詳しく解説しました。

さて、「歩+香+飛」で攻めた時は、ここで△1三歩と打たれのちの△1一香で竜を捕獲されてしまいました。そこで本手順に入る前に、角を攻めに加えた現局面で△1三歩(参考83図)と打ったらどうなるかを先に解説します。

下手は▲同香成(参考84図)と取ります。

上手は△同銀(参考85図)と取ります。

ここが大事なところです。この銀を▲同飛成?と取ってしまうと例の△1一香で失敗です。よってここは▲同角成(参考86図)が正解です。

これで下手は銀香交換の駒得かつ角を上手陣に成りこんだので成功です。ただし、ここでも△1一香(参考87図)と打たれたらどうするのか、解説しましょう。

この△1一香は馬を捕獲しようという手です。
しかし馬を▲3五馬?などと逃げると△1八香成!で奥にいる飛車を取られてしまいます。
ここでは馬を取られることを怖がらずに▲1二歩(参考88図)が正解です。

現在、1二のマスで戦いが起こっています。攻め駒3枚、守り駒2枚なので下手が勝ちます。
また、放っておけば次の下手の手番で▲1一歩成と逆に下手が香を取りますので、上手は△同香(参考89図)と取ります。

ここは下手も勇気を出して▲同馬(参考90図)と取ります。

上手は△同金(参考91図)と取ります。

下手は▲同飛成(参考92図)と取ります。

これで、下手は1二のマスの戦いに勝つことができました。たくさんの駒を交換したので、ここで最終的な結果を整理してみましょう。
・下手 上手の金と銀を取る(香はもともと自分のもの)
・上手 下手の角を取る

よって下手から見て「角と金銀の交換」という結果になりました。
 
大駒(飛か角)1枚と小駒(金、銀、桂、香、歩)2枚を交換することを「二枚替え(にまいがえ)」と言い、小駒2枚を得た方が得になるケースが多いです。今回の「角と金銀の交換」は金と銀という価値の高い駒を得ていますから、二枚替えの中でもかなり得したケースと言ってよいでしょう。加えて「飛車を成ることに成功した」点も大きいです。
 
六枚落ちでは、できるだけ大駒を上手に取られない方が良いです。ただし、特に「角と金銀の交換」のケースはプラスが大きいので、恐れずに指してもらえたらと思います。
 
あらためて、参考92図です。

ここでこの変化の解説を終わりにしてもよいのですが、寄せのコツを知っていただくために、あと2手だけ解説します。上手は△4一玉(参考93図)と逃げます。

このような局面は、六枚落ちで現れやすいです。
ここでの下手のコツは「竜を固定して上手玉を二段目に逃がさずに寄せる」です。具体的には▲6一銀(参考94図)を推奨します。

こうして玉ではなく玉を守る金に狙いをつけるのもコツです。
ちなみに、指導対局でよく指されるのは▲6一銀に代えて▲2一竜(参考95図)です。

王手になるのでこう指したくなりますが、竜の二段目の利きがなくなったので△4二玉(参考96図)と逃げられてしまいます。

このあと△5三玉と逃げられるとさらに寄せにくくなるので、この▲2一竜の攻め方はお勧めしません。
 
130図に戻ります。

これまで、この130図で上手が△1三歩と打つ手に対する下手の攻め方を解説しました。では本手順の△5五歩(131図)を解説します。

この△5五歩は上手のよくある反撃です。下手はここで取る手と無視して攻める手、どちらもあります。本マニュアルでは▲同歩(132図)と取る手を本手順とします。

上手は△同銀(133図)と取ります。

この局面は下手にとっていろいろな攻め方があり、重要な分岐点です。以下の4つの攻め方があります。
1)▲1二香成
2)▲1三歩
3)▲1三香成
4)▲1二歩(本手順)

 
結論から言えば▲1二歩を推奨しますが、いろいろな局面を考えることも大事なので、▲1二香成(参考97図)から順に解説します。

これで数の攻めで1二のマスを破ることができます。しかし上手が△同金(参考98図)と取り…。

下手は▲同飛成(参考99図)と取ります。

飛車を成りこんで成功…と思いきや、なにか嫌な予感がしませんか? そう、ここでも△1一香(参考100図)があります。

竜を捕獲されてしまいました。下手失敗です。
なお、この失敗図はのちに現れますので、覚えておいてください。
 
133図に戻ります。

▲1二香成の攻めは失敗でした。次に2)▲1三歩(参考101図)の垂れ歩を考えます。

これは次に▲1二歩成を狙った攻めです。▲1二香成と攻めるよりも攻め駒の数が多いので強力です。
しかし上手は△1一歩(参考102図)と受ける手が好手です。

これで1二のマス「攻め駒3枚対守り駒2枚」です。それなら▲1二歩成(参考103図)で破ることができそうです。

上手は△同歩(参考104図)と取ります。

下手は▲同香成…あれ? これは見たことがあるパターンですね。この局面で▲同香成と取れば、△同金▲同竜に△1一香竜を捕獲された、先ほど解説した手順と同じになります!
よって、2)▲1三歩も成功しません。
 
再び133図に戻ります。

133図、次は3)▲1三香成(参考105図)を考えます。

上手は、まずは自然に△同銀(参考106図)と取ります。

下手は▲同角成(参考107図)と取ります。

これなら、下手の攻めが成功です。実際に私はこれまで、この手順を正しい手順として教室等で教えていました。
しかし。今回本マニュアルを書くにあたりあらためて考えたところ、なんと上手の受けの好手を発見してしまったのです。参考105図に戻ります。

下手が▲1三香成と攻めた局面です。ここで上手は素直に△同銀ではなく、△1二歩!(参考108図)と打つのが受けの好手です。

ここで下手は2つの手があります。まずは▲同成香(参考109図)と取ってみます。

ここで気づいた方は鋭いです。そう、この局面は上手が△同金と取り、▲同飛成に△1一香で竜を捕獲される例の手順に合流してしまうのです!
よって下手は▲1二同香成に代えて▲2二成香(参考110図)と銀を取ります。

上手は△同金(参考111図)と取ります。

下手は銀香交換の駒得を果たしました。参考111図は下手不利ではありませんが、上手の守りが堅く、下手の指し方が分かりにくいのです。
よって、今後は▲1三歩ではなく別の手を教えることにします。
 
133図に戻ります。

ここで1)▲1二香成、2)▲1三歩、3)▲1三香成の3つの攻め方は、いずれも成功しませんでした。
以上、4-3でした。
 
次回ステップ4―4では、133図で4)▲1二歩と垂らす攻め方を解説します。 


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