【六枚落ちマニュアル】第2部第2章第14節 9筋攻め定跡 ステップ4-3

◆本節では、9筋攻め定跡 ステップ4-3を解説します。

前回のステップ4-2では、126図で下手がどのように攻めるのか、以下の4つの指し手について解説しました。
・▲7五歩
・▲8五桂
・▲8三歩成
・▲9七香
そしてこのステップ4-3では、本マニュアルがベストと考える▲9四歩(127図)を解説します。

この▲9四歩は突き捨ての歩です。上手は△同歩(128図)と取ります。

ここで▲同香は△9三歩と打たれてしまいます

ここで下手は▲同香と取るのではなく、▲9三歩(129図)と打つのが好手です。

この▲9三歩は垂れ歩です。上手が何も受けなければ次に▲9二歩成を狙います。本手順ではこの▲9二歩成を受けずに△8五歩と指しますが、この▲9三歩を△同銀(参考125図)と取ったらどうなるか。

下手は垂れ歩を取られましたが、8三のマスの守りが1枚減りました。そもそも、△8二銀がいる状態では、8三のマスが「攻め駒2枚対守り駒2枚」で互角でした。それが、上手の銀が動くことで「攻め駒2枚対守り駒1枚」に変わったのです! よって▲8三歩成(参考126図)が成立します。

上手は△同金(参考127図)と取るしかありません。

下手はもちろん▲同飛成(参考128図)と取ります。

金を取って飛車を成りこみ、下手優勢です。
よって、上手は▲9三歩の垂れ歩を△同銀と取りたくないのです。
では▲9三歩と垂らした129図に戻ります。

つまりこの▲9三歩は、以下の二つの狙いがあります。
・上手が取らなければ▲9二歩成でと金を作る
・上手が△同銀と取れば▲8三歩成でと金を作る

上手はどちらでもと金を作られてしまうので、せめて飛車の利きを止める△8五歩(130図)を本手順とします。

この△8五歩は▲同桂と取る手も自然です。しかしステップ4-2で解説したように、この桂を8五に跳ねると6五のマスが弱くなり、△6六歩▲同角「△6五金」という上手の攻めが生じてしまいます。
よって下手は▲9二歩成(131図)と攻めます。

上手は銀を取られたくないので△7一銀(132図)と逃げます。

下手はここで▲8一と、で銀を追撃する手もあるのですが、2枚目のと金作りを狙う▲9三と(132図)の方が良いです。

これで次の▲8三歩成を狙います。
上手は受けがないので△5五歩(134図)と攻めます。

この△5五歩は突き捨ての歩です。下手はこの歩を取らずに攻める手もあります。しかし次の上手の手番で△5六歩と取りこまれて、この歩が将来「と金」になる展開もあるので、▲同歩(135図)が良いでしょう。

上手はこの▲5五歩をすぐに取り返すことができず、△6二銀(136図)と上がります。

この△6二銀は、取られそうだった銀を逃げつつ、のちに攻めに使おうという手です。下手は予定通り▲8三歩成(137図)と攻めます。

上手は金を取られたくないので△6三金(138図)と逃げます。

下手は▲7二と(139図)と追撃します。

銀は横のマスから狙いやすいです。なお、金に対して横から攻めると、1枚だけの攻めでは取られてしまいます。ここが金と銀の違いです。
上手は銀を取られたくないので△5三銀(140図)と逃げます。

この△5三銀で、次に△4四銀や△6四銀など、攻めに使うことも可能になりました。下手は、今度はもう一つのと金を▲8三と(141図)と寄ります。

これで2枚のと金が働いてきました。しかも次に▲9三角成という狙いもできました。上手は△4四銀(142図)と上がります。

上手はこうして次の△5五銀を狙います。少し前に歩を突き捨てた手が、ここで役立っています。
下手はと金2枚で攻めたいのですが、7三のマスは「2対2」です。そこで▲8四と(143図)とこちらから攻めます。

この8四のマスは「攻め駒2対守り駒1」です。よって上手は取らずに△6四金寄(144図)と逃げます。

これで上手の7四にいた金が6四に移動しました。すると、先ほど「2対2」だった7三のマスが「2対1」になりました! そこで▲7三と引(145図)と攻めることができます。

上手は金を取られたくないので△5三金と逃げる…かと思いきや、ここで手筋の△6六歩(146図)と突いてきました。

この△6六歩は次に△6七歩成を狙っています。…が、先に下手が▲7三と、で金取りにしたところなので、ちょっとビックリします。
ここで「▲6三と」で金を取る手も指したいし、確実に「▲同角あるいは▲同歩」でと金を作られないようにした方がよいかもしれません。このような局面で迷う方は多いと思います。
ここは以下の3つの手を順番に解説します。
1)▲6三と
2)▲同歩
3)▲同角(本手順)
まずは1)▲6三と(参考129図)から。 

この▲6三と、は金を1枚取れるので価値が高い手です。そして次に▲6四と、でももう1枚金を取る手を狙っています。
上手は△6七歩成(参考130図)と歩を成ります。

この△6七歩成も、非常に価値が高い手です。
下手玉の近くにと金を作り、さらに角と桂の両取りです。参考130図は正確に指せば下手が勝てますが、こうした展開は上手ペースになりやすくおススメしません。たとえ攻めの価値が高い手を指せたとしても、特に「4七」「5七」「6七」のマスにと金を作られる展開は避けた方が良いでしょう。
次に△6六歩に対して2)▲同歩(参考131図)を考えます。

これも確実な手です。ただしこれだと角を使いにくくなるので、やはり▲同角の方が良いです。
というわけで本手順の3)▲同角(147図)を解説します。

この▲同角は、のちに角を9三に成る手を狙っています。上手はここで△5三金(148図)と逃げます。

以上、ステップ4-3でした。
次回「9筋攻め ステップ4-4」で、ステップ4が完結します。


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