【六枚落ちマニュアル】第2部第3章第10節 棒銀定跡 ステップ4-1

◆本節では、棒銀定跡ステップ4-1を解説します。

いよいよ、棒銀定跡もステップ4を残すのみとなりました。このステップ4は上手が工夫をして、下手にこれまで通りの攻めを指せない形に組みます。

ステップ4基本図上手が△2三金と上がった局面です。ただし、いきなりこの局面だと何がどうなったのか分からない方も多いと思います。そこで少し前の7図から解説しましょう。

7図は初手から7手目の局面で、今△3二金と上がって2筋の攻めに備えたところです。この六枚落ちの棒銀は、2筋ではなく1筋を攻めるので、攻めの銀を2五に配置する必要があります。そのためここで▲2四歩(8図)と飛車先の歩交換を目指します。

上手は△同歩(9図)と取ります。

下手はもちろん▲同飛(10図)と取ります。

ここで上手が△2三歩と穏やかに打てば、ステップ1~3の展開になります。このステップ4では、上手は△2三金(ステップ4基本図)と上がります。

この△2三金は、第1章のスズメ刺しで少し解説した「てごわい△2三金型」を作ろうという手です。下手は飛車を取られたくないので▲2八飛(114図)と引きます。

上手は△2三金と上がりましたが、このままでは下手に▲2四歩と打たれる弱点があります。よって△2四歩(115図)が大事な一手です。

これで上手はてごわい形である△2三金型を作ることができました。この形は1筋の守備力が非常に高く、第1章のスズメ刺しでは「この形を作らせてはいけない」と説明した形(第1章の参考1図)です。

この参考1図は第1章スズメ刺しで解説した図です

スズメ刺しは1筋を破る作戦ですから、この△2三金型を作られると攻めるのが困難になります。しかし、棒銀は1筋だけを攻める戦法ではないので、正しく攻めれば△2三金型を攻略することができます。
115図に戻ります。

この△2三金型は1筋の守りが堅いのが長所です。その一方でこの△2三金自体が目標になりやすいと言えます。そこで下手はまず▲3八銀(116図)と上がります。

この▲3八銀は棒銀の形を作るための第一歩です。上手は△3四歩(117図)と突きます。

この△3四歩は次に△3三銀と上がる準備の手です。
下手は▲2七銀(118図)と上がります。

下手の銀が前進しました。上手は△3二玉(119図)と寄ります。

この△3二玉は、玉みずから2筋を守ろうという手です。玉の守備力はとても強い反面、攻撃目標にもなりやすいので一長一短ではあります。
下手は▲3六銀(120図)と上がります。

あれ? 棒銀なら▲2六銀と上がるのでは? と思った方は鋭いです。もちろん棒銀は▲2六銀型が基本なのですが、この場合は▲3六銀の方が良いのです。
ではなぜ通常の棒銀は▲2六銀なのか、説明しましょう。

参考75図は、平手の場合の棒銀の一例です。▲2六銀型のメリットは、次に▲1五銀と▲3五銀、二つの銀の進路があることです。よって、参考75図で後手が△3四歩(参考76図)と突いても…

先手は▲1五銀(参考77図)と出ることができます。

これが▲2六銀型のメリットです。
そして、今説明したことは「▲2五歩がいる」ことが前提です。飛車先の歩交換をしている場合は▲3六銀型(参考78図)でも次に▲2五銀の攻めを狙うことができます。

参考78図の先手の攻めの形は「引き飛車棒銀」と呼びます。この▲3六銀の形は銀の進路が「2五」「3五」「4五」の3つありますので、とても使いやすいのです。また、▲2六銀の形に比べて飛車の利きが2三に直通していることも大きなメリットです。
以上、今回▲3六銀型にする理由を解説しました。
120図に戻ります。

120図、上手は△3三銀(121図)と上がります。

この△3三銀は2四の守りを強化した手です。これで下手は簡単に2筋を破ることができなくなりました。
ここで本手順は▲1六歩と1筋を狙う手ですが、先に▲2五歩(参考79図)ではなぜうまくいかないのかを解説します。

上手は自然に△同歩(参考80図)と取ります。

下手はもちろん▲同銀(参考81図)と取ります。

上手は△2四歩(参考82図)と打ちます。

この時、2四のマスは「攻め駒2枚対守り駒2枚」です。よって下手はこれ以上攻めることができず▲3六銀と退却することになります。これでは攻めが成功とは言えません。
ちなみに、この攻め駒2枚対守り駒2枚のパターン、どこかで見たことがあると思った方は鋭いです。そう、「第1節 棒銀の基本」で解説したE図です。

このE図も、下手の飛車+銀の攻めが、金+銀の守りに阻まれています。では121図に戻ります。

以上、すぐに▲2五歩の攻めではうまくいかないことが分かりました。そこで、ステップ1~3でもそうしたように、1筋を攻める形を作ります。まずは▲1六歩(122図)と突きます。

この▲1六歩は1筋を攻める準備です。上手は△7四歩(123図)と突きます。

この△7四歩は△7三銀と上がる手を可能にした手です。下手は▲1五歩(124図)と伸ばします。

このように一つ前進させた歩をさらに前進させる時に「歩を伸ばす」とも言います

これで下手は1筋を攻める準備ができました。上手は△7三銀(125図)と上がります。

この△7三銀は次に△6四銀や△8四銀と出る狙いです。

ステップ4-1は以上です。
次回「棒銀定跡 ステップ4-2」では、下手が上手陣をどう攻めるのか解説します。


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