【六枚落ちマニュアル】第2部第3章第11節棒銀定跡 ステップ4-2

◆本節では、棒銀定跡ステップ4-2を解説します。

125図は、下手の攻撃態勢が整った局面です。ここから2筋、そして1筋を破ります。
では攻撃を開始しましょう! まずは▲2五歩(126図)です。

この▲2五歩は「合わせの歩」です。攻め駒を前進させるための基本手筋です。そしてここが上手にとっての岐路です。以下の二つの選択肢があります。
1)素直に応じる△同歩
2)取らずに△4四歩(本手順)

このステップ4-2では、上手が素直に△同歩(参考83図)と取った場合の攻め方(上手陣を突破して飛車を成りこむまで)を解説します。

この△同歩は自然な対応です。ここで下手はすぐに▲同銀と取るのではなく▲1四歩(参考84図)が工夫の手です。

この▲1四歩は「突き捨ての歩」です。歩を損しますが、あとでこの手が生きます(理由は後述します)。次に▲1三歩成の狙いがあるので、上手は△同歩(参考85図)と取ります。

この突き捨ての歩を入れてから、下手は▲2五銀(参考86図)と前進します。

下手は銀を五段目に進出して好調です。そして下手は、上手が何も受けなければ▲2四歩と2筋を攻める手を狙っています。よって上手は△2四歩(参考87図)と受けます。

この局面で、先に▲1四歩と突き捨てた効果が出ます。▲1四銀(参考88図)と銀を進めることができるのです。

突き捨ての歩で事前に銀を1四に進めるようにしたのです。                  (△2四歩と打たれた時点で▲1四歩と突く手もあるのですが、この手順の方が自然です)

参考88図は、銀+香の数の攻めです。上手は1筋を守る駒が金1枚のみですから、数の攻めが成功します。
上手は△同金(参考89図)と取ります。

下手はもちろん▲同香(参考90図)と取ります。

これで、下手は金と銀の交換に成功し、1筋を破ることができました。参考90図で上手が何も受けなければ下手は▲1三香成として、次に▲2三金と攻めるなど好調です。
そこで、上手は△2三玉(参考91図)と玉自ら受けに回ります。

玉はとても守備力の高い駒なので、こうして自ら最前線で相手の攻めを受けることもあります。この△2三玉は▲1三香成を防ぎつつ、次に△1四玉と香を取る手を狙っています。
ここで下手に好手が出ます。▲1八飛(参考92図)です。

この▲1八飛は▲1四香を支えつつ、次に▲1三香成と数の攻めで攻める狙いです。スズメ刺しに似た攻めの形で、飛車と香で連携しています。
ちなみに、この▲1八飛に代えて▲1三金?(参考93図)はうまくいきません。

この▲1三金は、王手をかけつつ▲1四香を守っています。しかし△3二玉(参考94図)と逃げられた時に困ります。

こうして玉をかわされてみると、金が邪魔をして香が使いにくいですし、飛車も使えないままです。この▲1三金のような形を将棋用語で「攻めが重い(味方の駒が邪魔をして攻めにくい)」と言います。
では▲1八飛と寄った参考92図に戻ります。

あらためて、▲1八飛と寄った局面です。次に▲1三香成の狙いがありますので、上手は△2二銀打(参考95図)と受けます。

この△2二銀打で1三のマスは「攻め駒2枚対守り駒2枚」になりました。ということは…持ち駒の金を打つ▲1三金(参考96図)で破ることができます。

これで3対2です。あれ? さっきは▲1三金と打った手が重いと言ってたのに? と思った方は鋭いです。そう、先ほどの▲1三金は攻めの目標がなく、玉に逃げられて空振りでした。しかし今回は2二に上手の銀がいるので、必ずこの銀と交換することができます。
上手は△3二玉(参考97図)と逃げます。

下手は予定通り▲2二金(参考98図)と銀を取ります。

上手は△同玉(参考99図)と取ります。

この展開なら、攻めが重いということにはなりません。
なお、今のやり取りは「下手の金」と「上手の銀」の交換で、少し損だと思う方もいると思います。確かに金の方が銀よりも少し価値は高いのですが、この場合は上手の守りを1枚はがして弱くしたプラスが大きく、損な取引ではありません。
さて、参考99図は香を成るマスが3か所あります。ここでは▲1二香成(参考100図)が良いです。

この▲1二香成は、後ろにいる飛車を成るマスを確保する手です。上手は△3二玉(参考101図)と逃げます。

下手は待望の▲1三飛成(参考102図)です。

これで上手陣を突破して飛車を成りこむことができました。下手の攻めが成功です。
以上、下手が▲2五歩と合わせて攻めた手に対して上手が素直に△同歩と取った場合の攻め方を解説しました。下手が▲2五歩と合わせた126図に戻ります。

今回、下手は飛車+銀+香+歩で、1筋を突破することができました。
それを踏まえて、上手は126図で工夫します。▲2五歩を取らずに△4四歩(127図)と突きます。

こうして下手の銀を簡単に進ませず、かつ△4四歩で下手の角道を止めるのが上手の工夫です。
ステップ4-2は以上
です。次回「棒銀定跡 ステップ4-3」では、この△4四歩に対する下手の攻め方を解説します。


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