ウエノアンコ
"ひみつきち"を舞台にした3つの短編小説とギター組曲のコラボ作品です。
こんにちは。ウエノアンコです。 普段は「アンコのギターライフハック!」というブログでギターライフを楽しむアイディアをお届けしています。 最近ソロギターの演奏を再開したのをきっかけに、以前作ったギター組曲「秘密基地」の演奏動画を撮ることにしました。 この曲は、実は仲間と一緒に音楽や物語、写真をコラボさせよう!といった企画の中で生まれたものです。 動画を公開するのであれば、せっかくだしこの企画で仲間が制作した物語や写真も一緒に…と思いnoteにまとめることにしました。 こ
その夏は僕にとって特別な夏になった その場所は僕にとって特別な場所になった その夏、その場所で、僕は特別な女の子に出会ったからだ ジワジワとうるさい蝉の声 僕は駅前の道を小走りに、いつもの場所へと向かっていた 太陽から降りかかる光と、アスファルトから照り返してくる熱で 全身から汗が噴き出してくる Tシャツがピッタリと体に貼りついていた 特にリュックを背負っている背中は、何か大きな獣をおんぶしているような感じがした 獣は家の棚から引っ張り出してきたポテトチップ
「ああ!どうして?こんな結末のために私はあなたと出会ったの?」 「それとも、いつか、わかる時がくるというの?」 「……これでよかったのだと!?」 勢いよく空に向かって問いかけるが、返事はない もとから独白なのだから当たり前なのだが それにしてもここには、その独白を聴く観客の姿もなかった 悲劇のヒロインは騎士の国の王女 自分をおいて戦場に旅立った恋人への想いが叫びとなる、迫真のシーン …なのだが 王女の衣服は生地が薄くペラペラになった灰色のスーツだ 膝丈のスカートの裾
しと、しと、しと 路地裏のひみつきちに 二人の男女が座り込んでいる 男は白シャツに灰色ストライプのスーツ 上着を右手にひっかけて空を見上げている 女は紺色の襟のセーラー服 赤いスカーフを指でいじっている どこからきたのか、 いよいよ本降りになってきた雨に足止めされているのだろう 「止まないな」 ぽつりと、男が呟く 「腰が痛くなってきちまったよ」 「おじさんなのね」 セーラー服の少女が淡白に答える 「そりゃ女子高生に比べたらな」 「女子高生を女子高生って呼