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看護師国家試験 疾病の成り立ちと基本的な病変 2

医療による健康被害

1.薬害

医薬品の有害性に関する情報が有効に活用されず社会的に引き起こされる人為的な健康被害を薬害という。
サリドマイドによる奇形の発生、キノホルムによるスモン(SMON)の発症、血友病患者への非加熱血液製剤投与によるHIV感染(薬害エイズ)や汚染された硬膜移植に伴うクロイツフェルト・ヤコブ病、血液凝固製剤の投与によるC型肝炎(薬害肝炎)などがある。

2.輸血後肝炎

血液または血液製剤の投与によって発症するウイルス性肝炎で、主にB型肝炎とC型肝炎がある。
B型肝炎は献血制度、供血血液の検査法が確立した1973(昭和48)年以降激減し、C型肝炎も1999(平成11)年に献血血液中のウイルスそのものを検出する核酸増幅検査(NAT)が導入され予防可能となった。
B型肝炎は輸血後1か月以内に全身倦怠感、黄疸で発症するが、劇症化しなければ安静、肝庇護により発症後1か月のうちに治癒する。
C型の輸血後肝炎はB型ほど急性期の症状は強くはないが、遷延化して慢性肝炎から肝硬変へと進展する例が多く、ウイルス血症が持続すればインターフェロン療法の適応になる。

3.クロイツフェルトヤコブ病

プリオン病の代表的な疾患で、多くは中年に発症し、進行性の認知障害、精神障害、構音障害、ミオクローヌスなどの不随意運動などをきたしたのち、通常1年以内に死亡する予後不良の疾患である。
脳内にある正常なプリオンが病原因子により異常プリオンに変化して発症するが、感染から発症までの潜伏期は20-30年と非常に長く、いわゆる遅発性ウイルス感染症と呼ばれる。
感染経路の不明な特発性のもののほか、脳の手術で硬膜の移植を受けた人に多発しており、欧米およびわが国でも狂牛病からヒトヘの感染が大きな問題となった。

神経機能の障害

4.脳血管障害(脳卒中)

脳卒中は、すべての脳血管障害を指す一般名で、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、一過性脳虚血発作などが含まれ、わが国における死亡原因のうち3位を占める。
脳出血は脳血管が破綻することで脳実質内(好発部位は被殻、視床、橋、小脳)に血腫を生じた状態を指し、高血圧性脳出血が70%を占める。
くも膜下出血は、脳血管の破綻によりくも膜と軟膜との間のくも膜下腔へ出血するもので、原因の多くは脳動脈瘤破裂である。
脳梗塞は、不可逆的な虚血性脳血管障害のことで、アテローム血栓性脳梗塞や、心臓内で形成された血栓が脳動脈を閉塞する心原性脳塞栓、穿通枝動脈の血流障害により脳深部に生じるラクナ梗塞などがある。

5.脳血管障害(脳卒中)の治療

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