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看護師国家試験  疾病の成り立ちと基本的な病変 6

内部環境調節機能の障害

1.下垂体機能低下症

下垂体ホルモンの分泌が病的に低下した状態で、通常は6種類の前葉ホルモン成長ホルモン(GH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチン(PRL)を中心に、複数のホルモンに分泌低下がみられるものを指す。
前葉ホルモンのうちの1種類のみの分泌が低下したものは、低下したホルモン名をつけて「~ 単独欠損症」という。
下垂体前葉ホルモンの分泌は、それぞれ対応する視床下部ホルモンの調節下にあるため、本症はその原因の存在部位によって、下垂体自体に異常がある場合(狭義の下垂体性)と視床下部に異常をきたした場合(視床下部性)とに分けられる。
バソプレシン(抗利尿ホルモン)の分泌低下は通常、尿崩症と呼ばれ、先天性、遺伝性のもののほか、トルコ鞍周辺の原発性腫瘍、シーハン症候群などによるものがある。

2.甲状腺機能亢進症

バセドウ病は80%が女性で、自己免疫異常によってTSH受容体に対する自己抗体が産生され、この抗体がTSH受容体に結合して受容体の活性化を引き起こすため、甲状腺組織でのホルモン合成分泌過剰が持続する。
バセドウ病の症状としては、古典的には、甲状腺腫、頻脈、眼球突出の三症状(メルセブルクの三徴)が有名であるが、眼球突出は比較的少なく、眼瞼の浮腫、上眼瞼後退を訴える症例が比較的多く、発汗過多、手指振戦、心悸亢進、体重減少、易疲労性などの頻度が高い。
血液検査では、甲状腺ホルモン(T3、T4)の増加、TSHの低下、TSH受容体抗体TRAb、TSAb、TBⅡなど)の陽性が認められるが、受容体抗体の陽性率は90-95%である。
内服薬としてプロピルチオウラシル(PTU)、チアマゾール(MMI)を用い、甲状腺中毒症状が強いときには、β 遮断薬や安静、補液などの補助療法を要する。

3.甲状腺機能低下症

血液中の甲状腺ホルモン量が少なく、全身の新陳代謝が低下した状態をいう。
原因としては、甲状腺のホルモン産生分泌障害、下垂体または視床下部障害によるTSH分泌低下による中枢性甲状腺機能低下症などがある。
慢性甲状腺炎は橋本病ともよばれ、サイログロプリンや甲状腺特異的ペルオキシダーゼに対する甲状腺自己抗体陽性などの甲状腺に対する免疫異常が認められる。
慢性甲状腺炎は無症候に経過するが、進行すると新陳代謝低下症状が現れ、易疲労感、全身浮腫、体重増加、洞性徐脈、眉毛の外半分の稀薄化、便秘、耐寒能の低下などが出現する。

4.副甲状腺機能亢進症

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