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「COPD」と「糖尿病」についてのまとめ

こんにちは、上西内科副院長の中畑征史です。
今回はCOPDと糖尿病についてまとめていきます。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主に喫煙を原因として気道の気流制限をもたらす疾患ですが、現在は全身炎症性疾患であるという認識も重要視されています。
COPD患者では安定期においても、呼吸筋酸素量が増大しています。
それにより安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure:REE)が増大することで代謝亢進が認められ、これが栄養障害の主要因になると言われています。
REEの増大は主として、閉塞性換気障害や肺過膨張などによる呼吸筋酸素消費量の増大によります。それに対して十分なエネルギーが補充されないと、筋タンパクから異化をおこして骨格筋はさらに低下し、それに伴いますます呼吸筋の萎縮からREEはさらに低下する悪循環となります。
さらに全身炎症に伴い、免疫力の低下や骨塩量の低下なども招くとされています。

また当院は糖尿病専門クリニックであり、COPDと糖尿病の合併例では栄養状態の改善と高血糖を防ぐ両方の目的をうまく遂行していく必要があり、呼吸商という関連から、良質な脂質の摂取などを勧めております。
糖尿病治療の代表的な薬剤でもあるメトホルミンとCOPDとの関連についての論文をご紹介します。

(フルテキストはまだ会員のみに公開)
通称「ブルージャーナル」です。
メトホルミンの効果を、動物実験と人体への投与の両方から検討した論文です。
加齢性疾患に利益があるとされているメトホルミンが肺にどう影響するかをみた試験です。
臨床的な研究内容としては、COPDgeneStudyという遺伝子研究のためにフォローしていた患者さんを、メトホルミン投与での経過を追跡したものとなっております。
COPDGene studyの登録者でフォロー可能で対象となる患者1,687人を追跡調査しています
メトホルミンを使っていない人が1,572人、メトホルミン使用者が115人とグループの人数に差がありました。
比較方法としてはCT画像を使用して投与後5年で比較して、メトホルミン使用者では肺気腫の進行の程度は有意に低かったとされています。
ただし一般的に気腫の程度と肺機能は完全には相関しないとは言われており、予後の改善まで認めるかはこの論文だけでは判断が困難であるとは考えます。
参考としてマウスの実験結果も記載していますが、タバコに暴露してCOPDモデルマウスを作り、そのマウスにメトホルミンを投与しての反応をみています。
全身の炎症性疾患と最初にお話しましたが、メトホルミンの投与により、肺だでけなく腎臓や筋肉の改善もみられたとのことで、全身への抗炎症効果があるのではと期待される報告です。
 
糖尿病もCOPDも非常に患者数が多い疾患であり、合併も多いと思われるので、今後も栄養状態も薬剤もバランスよく処方を考慮していきたいと考えております。

愛知県小牧市
糖尿病・甲状腺 上西内科
副院長 中畑征史
https://uenishi-naika.com/

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