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ビタミンD欠乏と呼吸器疾患の関連について

こんにちは、上西内科副院長の中畑征史です。
今回は、ビタミンD欠乏と呼吸器疾患の関連についてです。

ビタミンDは、当院でも欠乏症の方がある一定数いらっしゃいます。
骨や筋肉、そして免疫機能などに働いているとされており、骨粗鬆症や感染症の合併の多いCOPDとの関連を調べました。

Kokturk N et al. Clin Respir J. 2018 Feb;12(2):382-397.

呼吸器内科向けの総説になります。
まずビタミンDの合成に関してですが、紫外線の照射により皮膚でプレビタミンD3として合成され、それからビタミンD3に変換されます。
日焼け止めやメラニンの増加、衣服での過度の防護はビタミンD3産生を低下させてしまいます。
また、経口で摂取されるビタミンD3もありますが、こちらはサプリメントやニシンやサバなどの魚から得られます。
それらが肝臓に運ばれて25―ヒドロキシビタミンD(25{OH}D)になります。体内のビタミンDの状況は25{OH}Dを測定して評価しています。

天然の栄養源は限られるため、直射日光を浴びない方はビタミンD欠乏症のリスクが高くなります。適切なビタミンD3産生を行うためには、週2回、15分程度直射日光に浴びる必要があります。(日焼け止めなしで!)
他には喫煙や高齢者、運動不足やステロイド剤の使用なども指摘されており、こちらはCOPDの危険因子でもあります。

ビタミンDの作用として呼吸器系に関して重要なのは、自己免疫疾患、COP Dや喘息に関与するT細胞への影響とされています。
また、抗菌ペプチドの産生にも影響を与えています。
800人の健康な男性を対象にしたフィンランドの研究では、25{OH}D濃度が40nmol/l未満の人で有意に欠勤日数が多くなったと報告されています。
肺機能に関しても、ビタミンDレベルとFEV1.0およびFVCと相関があることが示されています。

筋肉の維持に関しても重要とされています。
高齢者での研究では、足の筋肉や骨格の機能を高めるためには40~99nmol/lのビタミンDが必要と報告されています。
その他にも関節リウマチや乾癬、1型糖尿病の発症リスクにも関与するという報告もあります。

COPDとビタミンDとの関連ですが、まずは骨粗鬆症の併発です。
元々COPDは骨粗鬆症の発症リスクが高いとされていますが、これは炎症による骨吸収の亢進だけでなく、ビタミンD欠乏も関与していると考えられています。
COPD患者は高齢者が多く、身体活動性が低く家に閉じこもりがちで筋肉量も少ないことからビタミンD産生が低下する可能性が高いです。
また、ビタミンD欠乏により抗菌ポリペプチドの産生低下から、ブドウ球菌や抗酸菌、緑膿菌その他様々なウィルスへの免疫が低下するとされています。
COPDは感染による急性増悪を繰り返しながら病状が悪化することから、感染制御は非常に重要と考えられます。

ただし、この論文の中で示されている様々な研究に関しては、いずれにしろビタミンDを補充することで予後を改善する明らかなデータはありませんでした。
細かいところでは改善を認めていますが、大規模研究ではないことから今後ビタミンD補充が予後を改善したという論文が出てくるかに注目していきたいと思います。

愛知県小牧市
糖尿病・甲状腺 上西内科
副院長 中畑征史
https://uenishi-naika.com/

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