ツアーガイドの思い出 第十一話

「ではとりあえず、カンパーイ!!」

クリスタルパレスにて無事昼食となった我々。
社長は予想通りビールを注文、ぼくはガイドのこともあるのでゴールデンサイダーで乾杯。それぞれ、食べたい料理を好きなだけ食べた。

デザート類にはチュロスやリトルグリーンまんもあるのでお子さんも喜んでくれたが、最もテンションが上がっていたのは予想外にもサラダであった。お子さんはサラダが大好きだそうで、しかも好きなドレッシングは青じそとのことだったので驚いた。
また、食事中に「ベイマックスのミッションクールダウン」を実施しており、とてもいい位置で眺めることができた。
美味しいお食事に舌鼓を打ちながらお話をし、タイミングを見て「失礼します」とスマホアプリを確認、パスを取得していった。

そこからはもうとんとん拍子だった。
お店の退出時間のすぐ後の時刻でホーンテッドマンション。
娘が以前、ミューパレの皆さんとのオフ会に参加した際に教えてもらった様々な知識を総動員してご家族へ解説をしていた。

「ここには木製のポールがあります!触ってみてください!」
「左後ろに見えるのが地下へ続く階段です!」

バスガイドみたいでなんだか面白かった。

その後は奥様のご希望のスプラッシュマウンテン。
人数の兼ね合いで社長が最前列で一人ビショ濡れMAX。
「こんなに濡れるなんて聞いてないよぉー!」と、さながらダチョウ倶楽部のようなリアクションで面白かった。
乗り終えたお子さんがビビりまくっていたのでフォトにいらっしゃったキャストさんからファーストライドシールをいただいた。バインダーにはるー!、と持ち直してくれた。よかった。

その後アストロブラスター、モンスターズインクへ搭乗し、少し時間が余ったので美女と野獣へ。野獣が倒れる例のシーンではご家族皆さん、「えー!?なんでー!?」と驚いておられた。隠れミッキーの場所もご案内して差し上げた。
待ち時間、パス未取得のモンスターズインクにて約40分待ったのみ。夏休みの土曜日とは全く思えない混雑状況であった。

アトラクションにたくさん乗り終えた後はお楽しみ、夕食のレインボールアウ。社長はここでもビールを注文し「このために生きてるッ!」というなんとも幸せそうな表情を浮かべておられた。
お子さんのお誕生日シールに各キャラクターが反応してくださり、お祝いのお名前読み上げもとても嬉しそうだった。

残るはエレクトリカルパレードのみ。天候も全く問題なく、実施は確実である。少し早かったがDPA入口までご案内し、我々親子は先にホテルへ戻る運びとなった。流石にご家族3人だけのお時間があって然るべしだ。家族旅行なのだから。
ぼくは近くの飲食店、フードワゴンの場所を一通りご説明し、それではまた明日、ということとなった。明朝は4時30分にホテルロビー集合である。
明日は、明日こそ、絶対に負けられない戦いがあるのだ。

「本日、順調にことが運んで本当に良かったです!また明日、よろしくお願いします!」(敬語使うのやめるのとか全然できていない)

「こんなにスムーズだったのびっくりしたよ!また明日もよろしく!頑張って起きるよ!!」

社長、気合十分である。ぼくたちも寝坊は許されない。
初日はこれにて解散となった。

帰りのバス車内、いい塩梅に疲れて寝ている娘を横に、ぼくは明日のシミューレーションを何度も行っていた。

とにかく明日は朝並ぶ順番が全てを決めてしまう。ただ、そこを今心配しても仕方がない。分からないものを不安がっていても仕方がない。
とにかく、どんな状況になったとしても、ベストな動きができるように考えて、対策しておくことだ。

何事も、徹底的な準備が必要だ。準備無くして成功はない。「なんとかする」対策を幾重にも張り巡らせ、「なんとかなる」の心持ちを作る。
「余裕」とは、徹底した準備から裏打ちされたものだ。
「大丈夫」というのは、不安を隠す言葉ではなく、経験と分析を重ね予想を立て、自分なりの方策を打ち立てた自分を、自信づけ、𠮟咤激励する言葉だ。

「大丈夫。」

その日は21時前にベッドに入り、あっという間に眠りについた。







この時、まだ自分は知る術もなかった。
圧倒的に致命的な過ちを明朝に起こすことを。



ーつづくー

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