思い出したい、好きな人たちの声ほど、思い出せない。
なんと、あんなに口うるさかったお母さんの声も、思い出せない。
お父さんや、お兄ちゃんたちは、どんな声だったっけ…
そう、あの人たちは、私にさほど影響を与えようとしてこなかったんだ。
いや、お兄ちゃんたちは、ちょっとあったかな。
「妹に教えてあげたオレ、でかした」っていう声。一個もいらなかったかも。

お母さんの声は、聞き流す癖が身についていただけかもしれないが、スケベ心のある声ではなかったのはたしかだ。
私が子どものころはよく、「キンキンしゃべりなさんな」と注意された。
おかげで?自分の声がキンキンしはじめると、「あ、キンキンしてる!」って気づいて、しゅっと我に返る。
調律師がちょっとの音の歪みに気づいては、チューニングするみたいに。

お父さんは、おまえ、ってぜったい言わない男で、「おまえさんって人は…」と怒っても「さん」をつけてくれるから、ぜんぜんこわくなかった。
ちょっと物足りないくらい、しゃべりかけてこなかったお父さん。
あと何回、声を聴けるかな。


声を思い出せないくらいの、小さな声のほうに心を向けると、だいじなことが聴こえてくる。
たまにキンキンしちゃう私の声も、いい感じに静まって、子どもたちに忘れられるくらいだったらいいのにな。

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