大人のための文章教室 第27回

ライター・編集者
松本 正行

身内を敬うのはNGとは知っているが…


(例文)社長のお噂は、部長よりかねがねうかがっています。

 敬語は本当に難しい。
 たとえば、例文のような表現はごくごく普通に使われています。実際、どこがおかしいの? と思った人は多いことでしょう。しかし、「身内を立ててはいけない」という原則からすれば明らかに間違いなのです。どこがどうおかしいのでしょうか。

(修正)社長のお噂はかねがねうかがっています。

 違いは「部長より」があるかないかで、例文だと「部長より」があることで、話し手が部長に対してへりくだった形になってしまいます。そのつもりはなくても誤解を招きかねません。一方、修正文は「部長より」がないため、きちんと社長に敬意を表せています。あえて部長を入れるのなら、「部長を通して、社長のお噂はうかがっています」くらいにすべきでした。
 「お隣の窓口で手続きをお願いします」も市役所などでよく聞きそうですが、これも「お隣の」ではなく単に「隣の」にすべき。丁寧に言おうという姿勢は買いですが、裏目に出ることもあるので注意したいものですね。

筆者紹介:上町台地上にある高津高校出身。新聞社・出版社勤務を経て、現在、WEBや雑誌等で活躍中。NPO法人「まち・すまいづくり」会員。


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