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理系の女の生き方ガイド(宇野賀津子/坂東昌子)【書評#147】

 2人の女性研究者が女性研究者としてやっていくために、どのようなことをすればいいかを書いた指南書。生物系の実験学者と理論物理学者の2人が書いた本なので、一部の分野ではなく、理系全般の研究者に適応できる。

出版から四半世紀経っているので、どこまで現在に応用できるかはわからない。(逆に現在ではあまり参考にならない方が良い。それはすなわち、より女性が研究者になりやすい時代ということだから。)

日本では大学、研究所のポストはどんどん削られ、プロの研究者になるのはより難しくなっている。加えて、女性の場合、妊娠、出産などで研究を一旦休止しなければならないこともある。その間、自分のポストが確保し続けられるかはわからない。また、男性より女性の方が社会進出への壁が高いジェンダー的な問題もある。

そんな中、どのような考え、行動をすれば研究者として生活していけるかが著者2人の経験をもとに書かれている。色々幅広く書かれているが、特に印象に残っているのは「子どもは早いうちに産んだ方が良い」ということだ。

早く産んでおいた方が、安産になりやすい。逆に、高齢になればなるほど妊娠しづらくなり、不妊治療に時間がかかることがある。また、若い時の方が体力があり、育児と研究を両立する体力がある。そして、何より研究者として成熟してくる40代以上に子どもが手がかからなくなっているので、研究に集中できる。

ちなみに、この本の著者と同様女性研究者である三砂ちづるさんもこのような考えを持っている。(詳細は以下の本を参照)

 大学で物理学を専攻している私にとって、坂東昌子さんの話は面白かった。話の中に佐藤文隆、湯川秀樹、林忠四郎、早川幸夫など物理学界、天文学界で有名な研究者が多く出てきた。

 最後に理系の大学を出た女性たちの活躍がまとめられている。その中には、翻訳者の青木薫さんが博士課程を修了した後、翻訳者に転向した経緯が書かれている。(青木薫さんはサイモン・シン『フェルマーの最終定理』など多数の理学書を翻訳している。)

https://note.com/uekoo1998/n/nba6c28b5b64b

青木さんも物理学者の研究ポストを得ることの難しさから、翻訳の学校に通い始め、翻訳者になった。
青木さんが研究者として活躍する世界線も気になるが、現在、翻訳者としてさまざまな素晴らしい理学書を邦訳してくれるのはとてもありがたい。(しかも、それらの多くがベストセラーとなっている!)


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