見出し画像

12th "Battle Creek Brawl"(2012)

 "Battle Creek Brawl" (neji-130)  2012

all juke/footwork/ghettotech style / remix, collaboration and cover "Battle" compilation by Satanicpornocultshop 2012. includes tracks by Plapla Pinky (Paris / Brussels), 2080 (Lyon), D.J.Fulltono (Osaka), Harpoon Forever (New Jersey), Ynfynyt Scroll (Dallas), bebedelbanco (Osaka), Poncho+Casino Tart (Toronto), Jackknifer DeeJay TORA (Osaka). plus "Satanicpornocultshop Battle Five Postcard Set (pdf) by NIMURA daisuke!!!!!!

"Juke、Footwork、Ghettotech style" による、リミックス・コラボレーション・カバーを集めた「しばき合い」コンピレーションアルバム。
bandcampオンリーでのnejiからのリリースですが、内容の充実度からもフルアルバムと見てよいと思います。

2015年あたりでページが見れなくなり、実質の廃盤。
ちなみに12USDで販売されていました。
2012年当時は1ドル80円前後…


その内容になぞらえてか、タイトルはジャッキー・チェンの映画から採られたと思われる。


ブリコラージュヒップホップを謳っているサタポの作風とジューク/フットワークとの親和性もありますが、複雑なリズムにこだわった背景にはRP Booの作風の影響があったと言われています。

RP Booのトラックは、例えば、ダンスミュージックにはリズムのよりどころとなるフックがありますが、それが展開で2拍目から1拍目にがらっと入れ替わったりします。すると「今日は踊りまくるど!」みたいな気合は足元をすくわれ、行き場を失った胸騒ぎの腰つきはあわてて次の拠り所を捜さなければならない、八尾周辺ではそのようなビートの拠り所をはぐらかす行為を「ガッツの梯子を外す」と呼んでいますが、このような高等な仕掛けがいたるところに満載で、聴き込むほどに発見の連続です。



各曲を解説します。

1. into battle...

 
Art Of Noise ネタです。バタバタしたトラックから唐突に始まり、着の身着のまま闘技場に放りこまれます。




2. (don't have to be) human (Frosen Pine vocal mix)


おそらくオリジナル楽曲。「人間である必要はない」そうです。



3. borrrn sleppy 


アンダワの有名な曲のカバー。

原曲のトランシーなムードを異化する、度重なる刻みのギアチェンジ。足をグネらすサタポフットワーキンの真骨頂。




4. Poncho+Casino Tart - bad_job (Frosen Pine vocal mix)

  

KOOL SWITCH WORKSからリリースされたコンピに収録されていた、変名参加の曲のボーカルバージョン。サタポのアナグラムになってたらしい知らんけど。





5. battle creek brawl (jukin' for jamaica) 


トムブラウンのカバー…なんですが

それのテイトウワ版をジュークに落としこんだ作品。PUNPEEとのコラボの際にバックトラックとして使われました。





6. borrrn sleppy (Fulltono original taste remix) 


ボンスリのDJフルトノによるリミックス。よりリズムの骨組みだけに削ぎ落とされた内容。




7. 2080 - my_megadrive (remix by Satanicpornocultshop) 


2080へ提供したリミックス曲。


80'sポップス、またはVGMをサタポ流にズタズタにした傑作。前のめりな4つ打ちビートで始まり、元曲にもあるエディット部分をさらに細切れにしながらギリでグルーヴを維持、職人芸ですわ。


8. die 4 uuu 


16分シーケンスの上を飛び回る鋭いシンセに後半のゲットーハウスマナーに則ったシャウト連打、思わず目頭が熱くなりますね。このアルバムのピークにあたる部分。


9. Ynfynyt Scroll - let me see it (remix by Satanicpornocultshop)

 

ダラスを拠点に活動するこのDJ/プロデューサーは、ボールルーム、90年代初期のヴォーグ・ハウス、トライバル・ベースの感染的で攻撃的なエネルギーからインスピレーションを得て、リズム+ファッション+グラマラスな紳士淑女+強引で紛らわしいセクシュアリティをめぐる言葉のぶつかり合いが厳格なドラマティック・クラブ・アンセムの見事なコレクションを作り上げ

インフィニット・スクロールへ提供したリミックス。これも前のめりで攻めたバトルトラック。フットワークトラックの量産体制に入った時期の、キレキレの勢いが伝わります。

10. plunderphonic (remix by Harpoon Forever)

 

nejiからリリースしたインディロックバンドによるリミックス。

 https://rateyourmusic.com/release/ep/harpoon-forever/maya-angelou-ep/

日本では馴染みの薄いプランダーフォニック (plunderphonic) というジャンルがあって、世界的にはサタポはそれに分類されることが多いんですが、彼らもそう認識しているらしい。

 

We also had the opportunity to collaborate with our favorite Japanese hip-hop plunderphonic-ers Satanicpornocultshop, Orionza, and Hotentot Apron who provided us with krazy remix/dub versions of our tracks “Maya Angelou” and “Summer Vacation.”

というかヌヌヌン一派をプランダーフォニックの集団と見ているのか、リミックスというよりそれに対するオマージュといった内容の曲。
不思議なテイストながらこのアルバムのインタールード的な役割を果たしてますね。


11. Plapla Pinky - heather (remix by Satanicpornocultshop) 


SONOREからデビューした Plapla Pinky へ提供したリミックス。マキシム ドゥヌークとラファエル エナールのフランス人デュオで、パリ、ブリュッセル、ブカレストを拠点に活動。



元曲はアナログシンセソロに近い曲なんですが、それにジュークのビートを合わせてジャーマンプログレのような呪術的グルーヴを生成。



12. do0o3 (remix by Jackknifer DeeJay TORA) 


ジャックナイファー虎、古くはneji-56で登場するughの変名の一つですが、急に思い出したのかジュークやる名義として謎の復活。neji-137、138でもリリースあり。


これは戦国武将コンピ収録「マムシの道三」のリエデットの再録。もう道三て聞こえる箇所ほぼなくなってる。

https://nunulaxnulan.bandcamp.com/album/neji-133



13. heaven (for bebedelbanco) 


サタポ・オロリンズの面子によるクラストコアバンド、ベベデルバンコに捧げられた?トラック。

ガバキックでフットワークを表現…というかポリリズムなブレイクコア寄りの曲。初期サタポはブレイクコア~ノイズ寄りの立ち位置の時期もあるので「こういう芸風もあるさけな」的な?泉州的な?余裕も感じさせる。



14. incredibele tits

エキゾなサンプルによる、締め的なトラック。キックとタムと細スネアのナンクロ的 無造作配置曲。


15. battle creek brawl, reprise (footworkin' for jamaica) 

5曲目のリプリーズという事だが、こっちのほうが音数が多くて楽曲寄りです。先のバージョンのほうがリズムのみでDUBっぽい。



ジャケットに関していつものughによるコラージュではなく、二村大輔によるサタポのイラストをフィーチャーしている。

別バージョン絵もPDFで同梱されていました。


各種提供曲や被リミックスを集めたコンピレーションながら、ジュークスタイルにおいて脂が乗りまくってた時期を切り取った作品集なので問答無用な統一感がある。サタポ屈指の重要作品と言えます。