ノリ方

引っ張り出して来た羽毛布団が思ってた以上にあったかく、意外と薄着で寝る今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

記念すべき2日目の日記である。今日は「ノリ方」について書こうと思う。


私は東北生まれ東北育ちなのだが、今は関東の大学に通っており、一人暮らしをしている。というのも、高校生の頃にパンクバンドにあこがれていた私は「こんな田舎じゃバンドなんかできない!」と思い、大学進学をいい理由に、バンドをやる気満々で関東の大学を志望し、入学した(親はそんなん知らない)。その結果、今は大学の軽音サークルの代表を務めてはいるものの、コロナや大学生の自由時間の多さで気持ちが流れていき、バンドをする意欲など全くなくなってしまった。

私の大学の軽音サークルは、すでにあるバンドの曲をコピーして演奏するのが主な活動内容である。バンドを組んでオリジナルの楽曲を製作したいと思っていた私だが、この活動スタイルゆえに、サークルの部員にはあまりそういった考えを持っている者はいなかった。しかし、そんな環境でも、先輩方の中にはバンドを組んでオリジナルの楽曲を制作している方も何人かは存在していた。中でも、前代表を務めた先輩は同期とバンドを組み、2年ほど活動をしている。メンバーもサークル内の同期であることから、私もそのバンドメンバーとは交流があり、この10月のアタマに2枚目となるCDを発売するという。私はこの「レコ発イベント」として開催されるそのバンド初の自主企画ライブに招待された(とはいえまだまだインディーズですから3000円ほど払って入場しましたよ☆)。今日は長々書いてきたが、このレコ発イベントに行ってきたよ!っていう話だ。

私は仲の良い同期を誘い、2人でライブハウスへと向かった。ライブハウスへ着くと、喫煙所に見知った顔が3つ。今日わたしを招待してくれた前代表、そのバンドメンバーであるドラムのKさん、そしてもう卒業して社会人となっている先輩Oさんである。このように、今は社会人となって疎遠になってしまった先輩というのにこのような場ではよく出会うのである。私は人間関係は器用にこなす方であるのだが、その器用さゆえに器用貧乏になることを知っている。だからいつでも理由をつけて逃げられるようにその先輩たちとはあまり仲良くない同期を誘った(マジいつも助かってるわありがとう)。すぐに挨拶を済ませ、3100円を支払って入場した。今日のイベントは6バンドが出演する。もちろん先輩のバンドの自主企画イベントのため、先輩たちのバンドはトリである。私たちは1バンド目の演奏が終わったところに入場したにも関わらず、40人近くの客が入っていた。見知った顔がその2割ほどで、私はその全員に軽く挨拶を済ませ、ツレの元へ逃げる。10分くらい経つと、2バンド目の演奏が始まった。私たちはステージから一番離れた右後ろの壁際で演奏を聴いていた。出番のバンドは、AメロBメロサビ、ドラムはエイトビートでベースもルート音を弾いて、ギターはバッキングとリードギター、といったいかにもJロックといった感じである。もちろん先輩のバンド以外知らないため(先輩のバンドも正直そんなに聴いてないけど☆☆)、全然ノれずにいた。すると、左斜め前のカップルか夫婦かわからないくらいの2人組の女性の方が身体でリズムを取り始めた。

これは私の個人的な意見でしかないのだが、基本的にドラムがはっきり聞こえてくるようなバンドサウンドにはみんなハトが歩くのを真似るように首でリズムをとると思う。しかし、その2人組の女性のノリ方は膝を曲げてダンスでリズムを取るかのような、頭を上に「ニョキっ、ニョキっ」といった感じのノリ方だった。私はそこですごい違和感を覚えた。

まずそもそもこのイベントの客は基本的にトリのバンドを見に来ているはずだ。恐らく1バンド持ち時間は30分程度。このペースでそのノリ方をしていては立ちっぱなしのライブハウスという環境では大事なトリのバンドの演奏前に、すでに身体がしんどくなるはずである。絶対に疲れて腹が減って正直「次で最後だ!やった!」とトリの番で思ってしまうはずだ。なのにそこにいる女性は膝ノリをしている。マジで意味が分からない。私も好きなバンドのときには首では物足りず、膝までいってしまうときもある。だが、正直今演奏しているバンドはそのレベルではなくないか??????と思ってしまった。

これはよくない。感性は人それぞれ。私はこのバンドに膝でノることはしない。それでいいのだ。でも、どうして?とは思ってしまった。

そんなことを思っていると、その女性の彼氏か旦那かわからない男(いやでも友達かもしれないか!)が、さっきまでうなずく程度でしかノっていなかったのに、その女性に触発されたのか、膝ノリを始めた。

「おいおい、オメェもかよ!めっちゃ膝でノんじゃん!!!」

そう思いながらもバンドの演奏は続き、私は首ノリでそのバンドをやり過ごした。

その後、転換(演奏で使用した機材をステージから運び出したり、次の演者が機材をセッティングすること)と換気を挟み、3バンド目の演奏が始まった。この3バンド目が、非常にかっこよかった。恐らくOasisに影響を受けたであろう歪んだギターサウンドとヴォーカルの立ち振る舞い。ヴォーカルは楽器を持たずにピンで歌っている。ギター2人の厚いサウンドとベースのどっしり感、ドラムのUKロックを感じさせるミドルテンポ。また、ヴォーカルは緑のアディダスのジャージにジーパン、コンバースみたいなスニーカーで坊主、ついでにネイティブであろう発音の英詩、ほんで多分トガってる。ビジュアルからサウンドまでめちゃイケである。彼らの楽曲は全く聴いたことがなかった。しかし、何度も先輩のバンドと対バン(同じイベントで一緒にライブすること)しているのを私は知っていたから、気になってはいた。1曲目から心を掴まれた私は強めの首ノリをしていた。その後MCを挟んでの4曲目である。自分も弾いたことのあるようなジャストで好きなギターリフが鳴り響く。私はもう全身でその音楽にのめりこんでいた。最高のギターにイケてる歌声とビジュアル、立ち振る舞い、欲しいところに入れてくるバッキングの遊び、触れられないほど安心感のあるドラムとベース。サビで繰り返される「Looking to inside of me」(多分そう歌ってた)。「いいバンドを見つけてしまった、、、!」といい気持ちで彼らの演奏を聴いていると、ふと冷静に気づいたことがあった。

私は膝ノリをしていたのだ。

あれだけ膝ノリをしたら身体が持たんとかこのバンドに膝ノリの価値は無いとか言っていた私が今、膝ノリをしている。

「友達に書いた曲です」とヴォーカルがいって、スローテンポの曲が始まったところで私はさっきの夫婦かカップルかわからない2人組を探した。彼らは左の壁際に移動していた。

彼らは全く膝ノリをしていなかった。

彼らにとってこの演奏中のバンドは膝ノリには値しないのである。

「は??????」

「めっちゃイケてんじゃんか!!??」

そう思ったが、私はすぐにさっきの私を思い出し、納得した。


音楽は好きにノればいいんだようん笑




甘い物とがっつりした飯とイスが欲しくなりながらトリを見て、私は先輩全員にきちっと挨拶をして、座りたいからという理由で各駅停車に乗って仲の良い同期と家に帰った。



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