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BtoBの未来への悩み エコテクノ2021を眺めて

西日本総合展示場で開催された環境産業の見本市「エコテクノ」に行ってきた。私にとっては取材するネタ探しの場で、ここでコネクションを作ってあとから取材に行くということが過去に何度もあった。今はスポーツ以外の媒体に携わる機会が減ったため、出展企業を一通り見て回るくらいではあるが、毎年のようにトレンドが変わるので興味深い。

コロナ禍。変わるエコテクノ

今年はコロナ禍での開催。従来であれば素材や製品を触れて「こんなものもできるんですか!?」と驚いたり、人だかりの中での公開講演を聞いて頷いたりと、見本市らしい楽しさがあったが、さすがに今は控え目。販促物やパンフレットで両手が埋まってしまうということもない。

ブース設計さえ大きく変わった。かつては女性MCがマイクを使って説明したり、大がかりな体験装置を置いたりしていた大企業もあったが、今年は営業担当者が紙のパンフレットを配るだけというところが増えた。

出展企業や出展品目としては、電気自動車ロボット代替エネルギーなどが増え、エコ素材や低消費電力をうたう製品の出展は減ったように感じる。行政のブースも明らかに小さくなっていた。

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(※重い資料が多い見本市では、お目当てのブースがあったとしても、まずは会場をぐるりと巡り、一番頑丈そうな袋があるブースはどこかを見定めるというのがおすすめ。エコテクノの場合は今年はJR貨物だった。逆に言えば、袋で人を釣れるかもしれない!?)

接点を失うBtoB企業

いくつかのブースで言葉を交わしながら見ていたが、思わずはっとした瞬間があった。ある製造業のブースで担当者が漏らした言葉だった。

「工場見学を受け入れていましたが、今は全員で来ていただくことができない。何人かでばらばらにということはありますが」

話をしてくれたのはBtoB(企業間取引)がビジネスの中心で、普段の日常生活では見聞きすることがない企業だった。コロナ禍でも営業面のダメージは少なそうだったが、担当者の目つきは真剣。それもそのはずで、彼らにとって工場見学は、自分たちを知ってもらう貴重な機会だったのだ。

多くの企業はイメージ向上や将来的な人材確保を目指して、多彩な広報活動を行っている。広報活動といえば広告が一般的だが、清掃活動に励んだり、地元の祭に参加したりするのも、社会貢献活動の一環であると同時に、自分たちを知ってもらう機会になる。上述の企業のように、小学生から高校生くらいまでの社会見学や大学生のインターンを積極的に受け入れたり、自ら学校に出向いたりしているところもある。

しかし、この1年で環境は激変し、消費者や子どもたちとの接点は大きく減った。熱心な企業ほどコロナ禍のダメージが大きいようで、「学校向けにオンラインでも工場見学ができます」というPRに、逆にいたたまれない気持ちを抱いた。

BtoBの企業がどうやって自分たちの存在を知らしめ、将来にわたって優秀な人材を確保したり、ビジネスで選ばれる企業になっていくか。今は深刻な状況にある。

可能性:プロスポーツクラブは何かできないか

もしかしたら、プロスポーツクラブは彼らの露出機会を手助けできるのではないか。看板広告の掲出、スタジアム外周でのブース設置などを通じて、一般消費者に存在を知らしめることもできるかもしれない。

ただ、例えば看板広告にしても、試合で何人に認知されるかを数値化する必要もある。試合に来ている人は看板を目撃するだろう。しかし、映像配信の中で1試合当たり何分間の露出があり、何人がそれを見ているかを数字で示せれば、企業の担当者にとっては判断材料になって安心だ。往々にして成績が良いほど地上波テレビ放送で映像が流れる可能性が高まるので、そういう情報も付け加えたい。

クラブと企業の最適なマッチングを促すには、来場者の様々なデータも重要。子どもに知ってもらいたい企業ならば年齢層はキーポイントになる。企業によっては女性の比率や高齢者の割合なども気にするだろう。

もちろんプロスポーツクラブでの露出が「社会見学/工場見学」や「インターン」を完全に代替するようなものにはならないが、マッチングさえ上手くいけば、企業の名を人々の記憶に残せる場になり得る。コロナ禍の代替手段として検討する価値はあると思う。

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企業が自分たちをどう知ってもらうか。いくら立派なウェブサイトがあったとしても待ち構えているだけでは見てもらえない。積極的に広報活動を行ってきた企業にとって、今は受け入れがたいコロナ禍ではあるが、いずれまた売り手市場になることを考えれば、意味のある新しいアクションを起こしていかなければ生き残れない。

5年後、10年後を見据えればこその不安が、何とも言えない空気感となって今年の会場を漂っていた。手を携えて重苦しい事態を乗り越え、また未来が開けると信じたい。

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