見出し画像

布に呼ばれて

「旅」は自分が本当に好きなところに行って、好きな物を見てきたい。

こどもの頃は、もちろん両親達の好きなところについていき、両親達の好きな物を見た。
綺麗な景色。土地の名物料理。それから博物館的な歴史を感じられる場所。
修学旅行というのも、そういう要素の組み立てだった。

その出来上がった人任せの「旅」から踏み出した時、何を選ぶのか。それがその人の個性だと思う。
そもそも、旅において自分の我儘が許される事の方が稀だろう。

18の頃。名古屋の叔母の家に泊めてもらって一人旅の真似事をした。電車を乗り継いで吉野の桜を見に行き、瀬戸で食器を眺め、有松では反物ではない絞りの生地をいくつか買い求めた。

22の頃。母と二人で行った岩手では、宮沢賢治記念館に行き、昼にはせんべい汁を食べ、夜には冷麺を食べ、南部古代型染を気に入り自分へのお土産にした。

結婚式の前に両親と京都に行ったときには一緒におばんざい屋さんで和食を食べたり私の希望で西陣織の生地を見に行き買い求めた。

慌ただしい子育ても一段落した頃。家族の用事で一緒に行った静岡では別行動をして芹澤けい介美術館に行き素敵なデザインの風呂敷を入手し、城下町の生地屋さんでは遠州綿紬を物色。


どうやら私は旅先での我儘が許されると布を買う習性があるようだ。

もしかしたら、お寺に嫁いで来たのも一般家庭ではとても触れることのできない法衣や御袈裟に呼ばれてしまったのかもしれない。

家業の都合でなかなか旅行に出られなくなってきた近年だけれど、もし次に自分で行き先を決められる旅ができるなら、次はどんな布で織りなす思い出が、どんな風に染められるだろう。工程の見学ができたら素敵だな。体験型もいいな。

そしていつかは、欲しい布地に呼ばれて旅に出たい。


#わたしの旅行記

もし、サポートなんてスペシャルな事があったらどうしよう! 写経用紙買って写経して、あなたに幸せがあるように書いて、そして手を合わせようかしら☺