黒川元検事長と賭け麻雀をやった産経記者が懲戒処分。幹部は減俸も記者の実名報道なし。

 フジテレビ系列のFNNが「実名報道を考える 第一回「被害者が泣く民主主義なら、そんな民主主義はいらないと遺族は思っている」」を配信した。

この特集のよくないところは司会は誰でどんな人間が参集したかさっぱりわからないところだ。何度読んでもこの討論会(?)の全体像が見えてこない。

「フジ産経グループは実名報道を考えてます」感。まさにやってる感の持ち出しが顕著。何が主題で何が討論されたのか読者には全く見えてこない。

被害者は実名報道を嫌がっている。それはなぜか。メディアの苛烈な取材攻勢(メディアスクラム)があるからだ。それに対して、例えば京アニ事件などを例に持ち出し、葬儀が済んで実名報道をからなどの「改善策」が議論されたようだが、どんなインターバルを置こうと実名報道されたくない気持ちを蹂躙してる事には変わりあるまい。

問題は被害者のコメントを取れば「取材」になるとしたワイドショー化した報道姿勢だろう。なぜ京アニ事件が起きたのか。

被害者に取材してもわかるまい。秋葉原連続殺人事件のような、あの犯人が生まれた社会的背景、彼が秋葉原を憎んだ心理過程、彼が派遣で働いていた労働環境、人間として正しく尊厳が守られた人生だったのか、奥深く分け入る記録確認、検証作業こそが類似の犯罪発生を防ぐ情報提供になる。

被害者の遺族が悲しみにくれる後ろ姿を追いかけ、コメントを求める姿勢は「取材してる」気持ちにはなるがそれはなんの「報道の材料」になるのか。

定年後も検事長の椅子に居座っていた黒川検事長が辞任するきっかけとなった記者との賭け麻雀事件。これは産経新聞社の記者二名と朝日新聞の関係者一名で同じメンツで定期的に行われていた。

賭博罪であるが、検事長の黒川氏は訓戒で退職金をもらい、産経新聞社は社内調査の末に16日付けで出勤停止4ヶ月の懲戒処分を公表した。

管理職の二名は減俸処分。

笑ってしまうのは上記リンクの報道に懲戒を受けた記者の実名がない事だ。

同じFNNの特集「メディアスクラム防止のための申し合わせを公表…京アニ放火殺人事件や川崎児童殺傷事件など受け」では「一般社団法人日本新聞協会編集委員会」の声明としてこのような記述がある。

「事件や事故が起きた際、だれの身の上に何が起き、それに対して社会は、国はどう対応したのかを記録することは、報道の重要な役割です」

これをFNNが掲載しているのであれば、これに習って文春が完売となった世紀のスクープ、『黒川検事総長が記者三名と賭け麻雀』事件の当事者である賭け麻雀をした産経経済新聞社東京本社社会部記者の大竹直樹氏と河合龍一氏を実名で報道すべきであろう。記者らは市民団体から刑事告発も受けていて、受理されれば賭博罪の被疑者である。

事件事故には当事者が嫌がっていても実名を公表するが自社の社員が事件に関わっていたら可哀想だから匿名報道では筋が通らない。

それとも社の命令で御接待役をしていたのだから、泥を被らせる訳には行かないと言ったところが本音か。

身内の庇い合いを世に示しているうちは長々とした実名報道の討論会も「お金になるから数(視聴率が取れるから)実名出します、ごめんなさい」で終わるんだと、世間に思われるだけだ。




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