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BBCのドキュメンタリー番組とジャニーズの調査報告書について 考えてみた。

故・ジャーニー喜多川氏の長年に渡るジャニーズ事務所に所属していた少年への性加害について、ジャニーズ事務所の社長・藤島ジェリー氏(57歳]がその性加害を認め、2023年5月14日に謝罪動画を公開、9月5日に社長を辞任、7日、新社長の東山紀之 氏(56歳)と共に会見を開き謝罪した。(以下、ジャニー喜多川氏をジャーニー氏と表記します)

ジャニーズ事務所の社長が交代し、新旧の社長が揃った謝罪会見が開かれた発端はジャニー氏がアイドルを目指す少年達を食い物にして、芸能界やマスコミを支配してきた実態を取材した「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」が2023年3月18日に放映された。

この番組は大きな反響を呼び、BBCの取材に応じた元ジャニーズJr.達が海外特派員クラブで記者会見し、性加害の内容が当事者の口から語られ、ジャニー氏の歪んだ性癖が公の場で世界に向けて発信された。カウアン・オカモト氏の記者会見


世界に配信されたBBC「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」


BBC記者モービン・アザー氏は日本のJ-POPアイドル文化を一代で築き上げたジャニー氏がジャニーズ事務所に所属する少年達に性加害をしていながらそれが隠蔽され、未だに偉人のように扱われていることに対して、「頭がついていかない」と混乱を隠さない。

繁華街にある非合法のアイドルショプに行きJ-POPアイドルの姿を追う彼は、ジャニーズタレント達が若くヒゲもなく、髪型も決まっていて無垢な姿を装う少年たちの写真を見て、彼ら一人一人の個性は消され、イメージだけが大切にされる商品のようだと語る。

取材を深めようと、報道で使えるジャーニー氏やアイドル達の動画や写真を探すが、どこに行って素材がない。メディアがジャーニー氏の写真を公開して不興を感じるような使い方をしたらとんでもない事になるからだ。それを恐れる芸能関係者はジャニーズ事務所から許可あるデータ以外はすぐに削除する。日本でもっとも有名な芸能事務所社長の顔写真がどんなに探しても見つからない、誰に聞いても首を振る。

アザー氏「少年への性加害の話なのに・・・」


テレビ局と売れっ子をマネジメントするジャニーズ事務所の強固な連携によりジャニーズのライバル達は排除される。少年たちが売れたければジャニーズ事務所に入ってジャニー氏の性加害を我慢するしかない。
性被害の見返りが芸能界での有名になる事?違法行為なのに?

元ジャニーズ達への取材に関して、ジャーニー氏にされた自身の体験が性犯罪だったと言う認識がない事に対して、「加害者を尊敬している」と驚き、「狂ってる...」とジャーニー氏への怒りを露わにする。
取材を重ねるうちに未だジャーニー氏の支配下にいる少年達への強い洗脳・グルーミング、コントロールを知り戦慄する。そして少年愛に関する犯罪を「触れなくても良い問題」とする町の人々に強い違和感を感じてうなだれる。

「人間性が欠如している ただひたすらみっともない」

ジャニーズ事務所本社に直接取材を試みるも、けんもほろろにあしらわれ、追い出されるように取材が終わる。アザー氏はジャニーズ事務所の取材拒否に対して「性加害の話なのに何故そんな無責任で良いのか?」と人間の顔を持たない事務所の姿勢を非難する。

ジャニー氏の性加害について「向き合うつもりがない」「警察・芸能記者・音楽プロデューサー、みんな私達の取材を断った」「子供は守らなければならない。これについて誰も責任を取らない。これが日本の恥だ」と日本社会を激しく批判して番組が終わる。

ジャニーズ事務所は外圧により鉄壁の扉を開いた

この番組がジャニーズ帝国の屋台骨に響いたのか普段、視聴者や消費者に姿を見せないジャニーズ事務所の継承者・ジュリー藤島が記者会見を開き頭を下げた。そして被害者に補償することを述べるも、ジャニーズの名前は残すと言うところで非難が殺到し、ジャニーズタレントをCMに使う企業が次々と契約を解除し始めた。経済同友会 新浪剛史代表幹事・記者会見 アサヒ社長「ジャニーズ起用継続すれば人権侵害に寛容ということに」

8月29日にジャニーズ事務所の被害調査報告書が一般公開された。そこにはジャーニー氏が所属タレントの少年達に行った性加害の実態、ジャニーズ帝国に君臨したジャニー氏の姉、メリー喜多川氏の隠蔽と放置がジャニー氏の性癖を増長させ被害が拡大して行った事や性犯罪をなんとも思わない姉弟の異常な関係までもが赤裸々に記されている。BBCが丹念に被害者への取材を繰り返して作り上げたアザー氏の番組がジャニーズ帝国の性犯罪を隠してきた鉄のような重たい扉を開いたのだ。


証拠がなくとも補償を拒むことはしない

9月13日、ジャニーズ事務所は「故ジャーニー喜多川による性加害問題に関する被害補償及び再発防止策について」を公表し、被害者補償窓口を設置する声明を出した。裁判官経験のある3人の弁護士が被害者への保証対応に当たると言う。近々、受付のWebフォームが開く。(その時はまたアドレスを追加します)

注目すべき点は
・被害申告をされた方の所属時期や被害の時期を理由として補償を拒むことはいたしません。

被害者が事務所に在籍したかどうかの資料を根拠に補償交渉を進めるとするも、

・これらの資料がなくても被害者救済委員会の審査・査定の対象となり、これらの資料がないことを理由に補償を拒むことはありません。

とあり、エビデンス重視の被害者補償をしない姿勢を鮮明にした事だ。
これは被害者が小学生や中学生の幼児・児童が多く、その証拠の保全に努められる能力のない子供達を性的搾取の対象にした特異な事件だからだろう。当然の処置である。日本の犯罪史上例を見ない児童虐待事件なのだから、”超法規措置”が必要なのだ。


「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は被害者の総意を取れていない。事務所と被害者の直でやるべき。外野が補償についてとやかく言うべきではない。

ジャニーズ性加害問題当事者の会(ジャーニー氏によって性加害された当事者の集まり)に対して、ネットで批判が相次いでいる。様々な憶測を呼んでいるが、この集まりについて、筆者はよく調べていないので言及は控えるが、少なくとも、ジャーニー氏による性加害者たちの意見を全て担って立ち上がったようでは無さそうである。つまり、潜在するジャーニー氏の被害者の総意が取れていないのだ。そして彼らの要求は日々、先鋭化している。しかし、事務所が立ち上げた被害者窓口プラットフォームが開設されたいま、この当事者の会も一旦今までのシュプレヒコールを下げて被害の申告をしたらどうだろうか。ジャーニー氏の性加害による被害者は全て平等に扱われるべきだ。

小児性愛被害者を救済する難しさ

9月7日の記者会見で東山氏とジュリー氏は弁護士を伴い頭を下げた。
そして新社長がはっきりと「超法規措置」と言葉にしたのであるから、相当の事情を察して、外野が「証拠を出せ」「裁判しろ」などと口出しするものではない。

あとはジャニーズ事務所と被害者の元少年たちで保障の話し合いをするべきだ。人道や人権の知見に長けた元裁判官達で調査・審査をして事務所にさえ、被害者の情報提供は必要最低限にする、その意味を汲み取る事は難しいが、子供の頃に受けた性的虐待者を救済する最善の策とは何か。

ジャーニー氏が子供に性加害をしている芸能事務所と知りならが社会全体がそれを黙認して来たことなどから誰もが親身になって被害者救済を考えていかなくてはいけない問題だ。

この被害者相談窓口が性善説で成り立っている!と怒りの声が多いが、今は家族を持ち、性被害を妻にだけは知られたくない、子供には絶対耳に入れたくないと苦しんでいる元ジュニア達も多くいるだろう。その人達も残らず救えるようにするには、もうこれしかない。性善説で被害申告を受け入れるしかないのだ。


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