見出し画像

導かれる♡

 神魂神社に行った。グループセッションで知り合った仲間に勧められた神魂神社に惹かれたのだ。そこには、荘厳な美しき杉並木。神社へ導く参道に杉の巨木は立ち、参道は苔むしている。そして、何の石だろう?石段の石の一つ一つが大きい。魅力的な石に興味が湧く♡.......

 落ちついた時が流れ、次元の違いすら感じる。御祭神は「いざなみのみこと」で国宝に指定され、現存する大社造の社殿で最も古いものと言われてるそうだ。そこで、私は一人、柴犬の源ちゃんと一緒に杉の木に話しかけてみた。まっすぐ天を貫き、太く根がはり、根元にはきれいな苔がむしている杉の木だった。時の流れを感じるとともに生命力を肌で感じた。

 さわやかな気持ちで、さあ今度はどこに行こうかと思っていたら、源ちゃんが急に活発に動き出し、里山のほうへ下っていく。見るとそこは、「出雲かんべの里」という工芸館、かんべ茶屋、しぜんの森や民話館のある場所だった。歩を進ませながら、気になって神社のほうを振り返ってみると誰もいなかった神魂神社に5台の車が停めてあり、参拝している人がいる。「いつの間に?」なんだか不思議な気分で、源ちゃんと散歩を続けた。源ちゃんの好きな方向に進んでいったが、人影はいない。かんべの里の周辺をけっこう歩いたから、そろそろ帰ろうと思っていると最初に行った民話館の周りを源ちゃんが気にいって入っていった。民話館は、物静かで今日はやっていないのだろうと思っていた。私は帰りたいのだが、源ちゃんはなかなかそこから帰ろうとしない。民話館の周りを10分くらい源ちゃんとうろうろしていた頃だった。民話館の中から女性が2人やってきた。源ちゃんに声をかけてもらい、源ちゃんも喜んでいると

女性:「お話聞かれますか?」私:「でも、柴犬がいるので難しいかも。」女性:「柴犬に待ってもらったら聞けますよう。」私:「それもそうだな。少しくらいなら大丈夫かな?」というやりとりから、私は、お話を聴くことにした。

 そして、小泉八雲「耳なし芳一」の立体映像や語り部の方から昔話を聞いた。「かんべ」というのは、「神戸」と書き、兵庫県の神戸と同じだそうだ。「かんべ」とは、神様にお供え物を用意する地域だったそうだ。なるほど、松江市に、「焼き肉 神戸屋」など「神戸」と名の付く店が多いのはそういう理由だろうか?と少し頷けた。語り部の方のお話は2つあり、優しい声からあたたかいエネルギーと癒しを感じた。一つ目は、出雲に伝わる民話、西田という地域に語り継がれてきた民話。二つ目は、出雲に神様が集まり、縁談を話し合うという民話。(出雲の神在月に神々が集まるといわれている)

山深い場所にいた一匹の猿が、海に行ってみようと山を下っていく。風がふ~ふ~と吹き、波がどっどとなり、猿は、海はなんてきれいなんだろう~とつぶやく。すると、何やら、ほお~と声がする.......その声は蟹の声だった。(西田に伝わる民話)

  語り部の方の声が心地よくて、心が穏やかな気持ちになる。子どもたちに聴かせてあげたいなあと思った。人の温かみのある声。話に引き付けられ、楽しい時間だった。民話館を後にするとき、あの穏やかな声をきいたせいか私は、こんな思いを巡らせていた。この辺は、八雲という地域だなあ、20代の頃同じ職場の人が、八雲で仲間と劇団をするために退職されたよなあ、そうそう、一回だけ観に来たことあったなあ、民話館の方に劇団のことを聞きそびれちゃったなあ、そう思っていると、中から再び女性が、出てこられたので劇団のことを尋ねてみた。すると「『しいの実シアター』のことですかねえ。コロナ対策で大変だけど活動されてますよう。」と教えてくださった。

 私は、興味を持ち、ちょっと「しいの実シアター」とやらに行ってみようと軽い気持ちで車を走らせた。しかし、その人の名も思い出せない。どのくらい車でかかるかなあと思ってナビをみてみると、10分だという。車のナビゲーションは素晴らしく、迷うことなく到着した。坂を上っていくと、人影はない。「あ~ここかあ、すてきなところがあるなあ。」と思いながら坂を上った。場所がわかったので、帰ろうと思い、Uターンしようと思ったが、道幅が狭くなかなかUターンする場所がない。そこで、民家の駐車場が見えたので少しお借りしようと車の頭を突っ込んだ頃、頭にあの人の名前を思い出した。車をバックしようと切り替え、ふと左の民家の表札が目に飛び込んできた。思い出したあの人の名前だった。もしかして、あの人のお家かもしれないなあと思って再びバックをすると下から車がやって来た。私は、少し慌てたが、見るとその車はその民家の方のようだった。お詫びと理由を話そうと車を降りようとすると、その人も来られて話をした。とても自然だった。私が、ここに来たわけと自己紹介し、そして、相手の名前を尋ねた。


 その人は、私の思い出の人だった。その人は、私のことはすっかり忘れているようだったが、「ご縁を感じるのでぜひ、「あしぶえ」のパンフレットを持って帰ってください。」と言い、「今年の11月に森の演劇祭をするんです、ぜひ来てください。」と手渡ししてくれた。

 その晩、今日の出会いに感謝していると、暖かい語り部さんの声を思い出していた。そして、私が、一匹の猿の背中越しに山から海を眺めている情景をふと描いていた。

 ふ~ふ~と風が吹き、波がどっどとなり、     ほお~っと声がする。

 風の強いこの地域に住み、山深さも感じながら生きているからこそ、人はそこに伝わる民話を実感できるんだと感じた。そして、今日会った劇団の人の生き方に心のどこかで憧れていたあの頃を思い出していた。そして、いつの間にか眠っていた。


 読んできださってありがとう♡           つきまる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?