8/30 HappyTrainTour2023 大阪公演 意味を継承するライブ

※セトリのネタバレ嫌いな人は読まない方がよいです。


9thの期別曲『シーラカンス』を初めて聴いたとき、「この曲は4期生が歌ってこそ意味を持つ楽曲だ」と思った。


シーラカンスという楽曲は、端的に言えば初恋の感情の想起。恋に落ちるときの稲妻が走るような衝撃、心の奥底に眠っていた青い感情をシーラカンスと喩えている。歌詞の中に登場する「エモい瞬間」っていう表現も巧みで、「エモい」という曖昧な表現によって、その感情の言語化し得なさを言語化しているようにも感じられる。

思えば日向坂の楽曲って、恋の歌が多いのは言うまでもないのだけれど、そういえば「初恋」を歌った楽曲って『キュン』『ドレミソラシド』以降あまりなかったのではないか。少なくとも、主題に「恋に落ちる瞬間」を据えた楽曲は上の2つくらいなのではないかと思う。

実際、無駄に歳月を重ねた僕みたいなオタクにとって、「初恋の感情」あるいは「推し始めた頃の感情」みたいなものは縁遠いものになりつつあって。推すという活動のマンネリズムに苛まれていた最中に加入してきたのが4期ちゃん達だった。

彼女達は、もっと言えば宮地すみれさんは、僕が忘れかけていたあの頃の感情を思い出させてくれた存在だった。

そんな彼女達自身が歌う『シーラカンス』。
楽曲の持つ意味と歌い手自身の状態が一致したときの力強さ。
その楽曲が持つ意味をパフォーマンスとして代弁しているのがステージに立つ彼女達なわけで。代弁者自身がまさしくそのメッセージを体現しているのだから、そりゃ心に響くよねっていう。
間違いなく彼女達にしか歌えない楽曲だし、彼女達が歌うからこそ特別な意味の付随する楽曲なのだと思った。


で、今回のライブでその初披露を拝めて、僕はボロボロ大粒の涙を流していたのだけれど、それだけでは終わらせてくれなかった。


同じく初披露の『見たことない魔物』に続けて披露された、4期生だけでの『期待していない自分』


『期待していない自分』は、ひらがなけやき初の単独アルバム『走り出す瞬間』の表題曲としてその年のツアーを牽引した楽曲。
このアルバムはけやき坂にとって、楽曲が増えたことで自分達の楽曲だけでライブを敢行できるようになる、グループとしての大きな転換点でもあった。
楽曲の持つメッセージ性についても、「けやき坂」というグループが背負うバックボーンと見事にマッチしていて、それが楽曲の価値を高く押し上げていたように思う。

それゆえに、日向坂(けやき坂)にとって、『期待していない自分』という楽曲は特別な意味を持っている。
持っているのだけれど、きっと今の日向坂がオリジナルメンバーで『期待していない自分』を披露したとしても、当時と同じような意味は伴わないと思う。当然ながら日向坂は当時に比べてグループとして大きな成長遂げたわけで、楽曲の代弁者・語り手としての力強さは既に失われている。あくまで懐古という形式でしか、同じような意味を見出だすことはできない。

そこで、4期ちゃん達。
特別な意味を持つこの楽曲を、4期ちゃん達だけで披露、ここに深い意味を感じるわけで。

セルフドキュメンタリーでは語られていたけど、日向坂4期生は櫻坂3期や乃木坂5期と比較されることが多くて、劣等感に苛まれることもあったという。

「自らのアイデンティティに悩み苦しむ」
まさしく、代弁者としての性格・力強さを有した彼女達に、『期待していない自分』を継承する。
彼女達の葛藤と、それでも前へ進んでいく力強さが相まって、『期待していない自分』という楽曲の持つ意味が最大限に引き出されていたように思う。


そのあとの藤嶌果歩さんのMCも印象的で。
「私たちも期待されていないんじゃないかなって思うこともあって…」
思わずソンナコトナイヨーって叫んじゃった。


とにかく、今回のツアーは伝説になる予感!

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