介護について⑤〜父を説得に行く
前回の記事では、特養に入居中の父が、施設から出してくれと懇願し、施設のスタッフの方を困惑させているという事を書きました。
今日は、その様子を見に母と施設へ訪問。父と面会し、長男として、今戻ることは難しい旨をハッキリ宣告して来ました。非常に気が重かったのですが。
透明のアクリルボードが載った面会机で待つこと数分。スタッフの方の押す車いすに乗って表れた父。半年ぶりに見るその姿は前回にも増して一層の「老い」を感じさせるものでした。施設に入る前は若作りが好きだったためか黒く染めていた髪も細く真っ白。また施設の食事が健康的なのでしょうか、恰幅の良かったころから比べると、ほんとに、針金とまでは言いませんが痩せてしまっていました。
それでも開口一番。父は「今歩く訓練をしていて、だいぶ良くなった。家に帰れる準備をしている。」と切り出しました。
すかさず母が応戦。「戻ってきてもらっても、私も体が悪いところばかりで、とてもお父さんの面倒は見られない。ずっとここにいて欲しい。」と。
現役の会社員のころから、外面は良かったので、同席していただいたスタッフの前では「いや、なにもすぐにとは言わない。自分でリハビリをしっかりやって自信が戻ってからだ」と事前に聞いていた主張からはずいぶんとトーンダウン。
(良かった、主張が少し控えめになって来ていると内心安堵しました。)
ところが母は「ずっとここにいてください。私もあと10歳若かったら、いくらでも面倒見てやるけど、もう体がいうことをきかない。」と切り返すと、父は
「そんな夢も希望もないことを言われたら、リハビリに励めない」云々と応戦。
(ああ、やはり父を初めとする「昭和のお父さん」たちは自分の事しか考えていないのだな。母の健康状態をいたわることもなく、自分の希望ばかり)と少し憤りを感じた私は、
「お父さん、お母さんはもう相当体が弱くて、お父さんが帰ってきて、またわがままを言い出したら、お母さんがほんとに参っちゃうよ」と宣告。
それでもたじろがない、父。「将来的に帰りたいと言っているんだ。」と。
まあこのまま、応酬していても泥仕合になるので、着地点を見つけ「そうだね。いつか元気になったらね。それまで頑張ってよ。」と面会時間制限ギリギリのところで幕引きを図りました。
施設の方が隣で面会の様子を心配そうに見守っていただいたのも功を奏したようです。
ああ、それにしてもこうやって自分の主張ばかりする人を丁寧になだめたり、見守ったり、
介助したりと、介護施設のスタッフの皆様には本当に感謝しかありません。彼らの強い責任感と愛情に頭が下がります。
自分の建てた城に戻りたいという父の気持ちも分からないこともないですが、、、。まあしばらくは時間が稼げたようです。
実家の居間に戻り、ひとまず安堵しました。
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