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遺言執行者はつらいよ その2 〜分割が難しい財産(金融資産など)

 同テーマの第1回目において、遺言執行の難しさ(事務面)について触れました。今回は更に具体的にどう言う場合が悩んでしまうのか、例をあげて説明いたします。

 遺言において「遺言者は、遺言者の有する金融資産を遺言者の長男、二男、三男に均等の割合で相続させる」と書いてあった場合。
お読みいただき、「ん⁉︎ 何の変哲も無い文章で普通に3等分すれば良いんじゃない!」と感じた方も多いでしょう。
そうその通り、例えば、甲銀行とゆうちょ銀行に口座があった場合は、その残高をいったん合算し、そして等分する形になりますね。

ところがところが。例えば遺言者が上場株式A社と純金積立を所有していたとします。
この場合、相続人である子供達が合意してA社株式と純金積立を、執行時の解約請求時点での時価にて処分し、その換金額を等分するのは、全く問題ありません。

しかし!相続人の誰かが「いやいや、換金はダメだ。今、株式相場や金相場が値下がりしていて換金はしたくない。それにA社には子供の俺たちも思い入れがある会社だから、換金せずにそれぞれ3分割して名義変更で受けたい。また金もそれぞれ3等分したい」と言い出したら、どうでしょうか?

理論的には、株式分割や金の現物の分割は可能かもしれませんが、実務的には、それを預かっている金融機関での対応は難しいでしょう。
問い合わせても、「株式や金を相続人の代表へお渡しします。(後は相続人間でやってください、、、)」と。
株式の名義変更となれば、遺言者の取引していた証券会社に子供たちの名義の証券口座を開設する必要もあります。

同種の味の食べ物ならば、等分しても問題は無い



時価が動く金融商品の分割は、執行においては、はて?と考えるケースも出てくるのです。

自筆証書遺言では、このようなケースを想定せずに書く事が多いでしょう。また公証役場で直接作成する場合も気付かないケースも出てくると思います。
そこは金融実務と執行に長けた、信託銀行等の金融機関が得意としています。
財産の種類の多い方は、一度ご相談する事をお勧めします。

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