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[HipHop][L.A.暴動] N.W.A & EAZY-E キングス・オブ・コンプトン

少し前に映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」について書いた。


80年代のL.A. の伝説的なギャングスタ・ヒップホップ・グループ N.W.A についての映画だ。この映画はメンバーの中で特に成功したドクター・ドレとアイス・キューブの視点の映画だった。なので、どうしてもドレーやキューブに良いような内容になっている。彼らがそれぞれ脱退したときに対立したのがグループのリーダーのイージーE(故人)だった。本作はイージーE視点でのN.W.A. の物語となっている。だからイージーE寄りの内容だ。また、「ストレイト・アウタ・コンプトン」が映画だったのに対しドキュメンタリーとなっている。

イージーEはN.W.A.をはじめる前は薬物の売人だったし、歌詞は女性蔑視やモラルという意味では最悪だし、ドクター・ドレーやアイス・キューブと対立したのも金銭トラブルなので金に汚いという印象もあった、しかも女性好きでエイズで亡くなっている。世の中の印象としてはワルい人間だったのではないだろうか?

本作を含め、何本かN.W.A関連の動画や読み物を読んでいると、既存のルールを書き換え、マーケティング能力や対人能力に長けたビジネスマンの姿が浮かんでくる。問題だったのは彼のような頭のキレる人間が「成功するには薬物の売人になるしかない」と、思ってしまった環境だったのではないか?と思った。もちろん真面目に犯罪行為に身を染めず、がんばって成功した人物もいるはずなので、間違った考え方だったとも思う。
なんにせよ、音楽をきちんとビジネスにしたのはイージーEだったようだ。映画の方で悪人扱いされた白人マネージャーのジェリーも、本作ではイージーEの方からアプローチをして知り合いに紹介料を払って会ったとしている。
ビジネスセンスに非常に長けてたようだ。
また偉ぶったところがなく、業界で成功したイージーEに自分から声をかけるのは躊躇してしまうような新人や昔の知り合いにも気さくに自分から声をかけるような人間だったらしい。

映画の方で不可解に思ったのは、ドクター・ドレーが去った後にイージーEが落ちぶれた描写があったことだ。本作では落ちぶれていない様子も描かれている。
イージーEのレーベルからはイージーE自身のアルバムもヒットしていたし、なんといっても「ボーン・サグズン・ハーモニー」も大ヒットしている。「ボーン・サグズン・ハーモニー」は名前の通り、ラップにメロディやハモりがあるグループだった。ラップに歌モノが入るのは好まれないことが多い。ここ数年でドレイク(彼はボーン・サグズン・ハーモニーのファンだったらしい)などのヒットで受け入れらるようになったが、当時は風当たりも強かったのではないかと思う。イージーEの感性は時代を先どっていたようだ。
また、ドクター・ドレーとの一部の契約は続いていて、デス・ロウ関連の仕事での収入の一部がイージーEに入っていたそうだ。
そんな訳で、イージーEは映画のように落ちぶれてはいなかったようだ。実際には少年院に慰問に行きテレビなどを送ったり、人種にかかわらずクリスマスプレゼントを寄付したり社会貢献活動にも熱心だったらしい。

このドキュメンタリーはN.W.Aをうたっているのにも関わらずN.W.A.の曲が使われていなかったり、再現ドラマの俳優の出来が酷かったり、クオリティに問題はあるけど、なかなか面白かった。

映画ではいないことになっていたN.W.Aの初期メンバーのアラビアン・プリンスや、コンプトンの伝説的レコード店のスティーブ・ヤノが登場するのも良い。また、イージーEからドクター・ドレーを引き抜き、暴力で契約破棄させたシュグ・ナイトも登場する。これには驚いた。どのツラ下げて、、、というところだ。

元売人ということで、シュグ・ナイトのようなギャングに思われがちなイージーEだが、実際には革新的なビジネスマンだったということが分かる作品だった。

N.W.Aと言えばL.A.暴動のきっかけの一つだったのだけど、本作ではそのあたりの描写は少ない。自分たちの歌詞は街の真実。という主張のみだ。

本作は2020/7/18現在 AmazonPrimeで見ることができる



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