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[HipHop] ZORN ブレずに変化しつづける韻の詩人

毎月一人ずつ書いている日本のHIP HOPシリーズ。

今回は ZORN (ゾーン)。ヒップホップに限らず、韻(いん)を使うスタイルの日本語の詩を完成させるのは、この人だと確信しています。

ZORNは1989年生まれで2020年は31歳になる年。10代からキャリアを積んでいる。長いキャリアの中、人間性はブレずに音楽や詩をどんどん変化させていく、これからもどんどん進化していくだろう。

経歴 

三鷹で生まれ、神奈川の海老名を経て小学生のころに新小岩へ。そのときは両親の夫婦仲も悪く(現在は良好とのこと)、また新小岩というのは治安の悪い街だったため、同じく家庭不和の友達たちとB-BOYと不良の境目の思春期を過ごし犯罪行為に手を染めるようになる。10代後半で大人たちの出場するMCバトルにて頭角を表し知られた存在になるも、3回目の逮捕により少年院で過ごすことになる。
そのとき初めて反省をし、まっとうに生きることにした。アーティストとしての活動と共に、父親の家業のコーキング業の職人として平日は早朝から働いている。アーティストとして大成したので家業はいつやめてもいい状態だが、あえて普通の人と同じ生活も続けている。

19歳で少年院を出た後にすぐに自主制作のアルバム「心象スケッチ」を作成する。自らショップにおいてもらうなど手売りでの販売だったが1000枚を売り切った(現在は廃版になっており、配信もないため高値で取引されている)。少年院の中でも歌詞を書いていたが筆記を許されていなかったため、頭の中で歌詞を頭に書いて覚えるという方法で書いた。これは恐ろしく難しいことだ。このエピソードは都築響一の名著「ヒップホップの詩人たち」におさめられており、それを読んだ「いとうせいこう」が驚きの声をあげている。文章家でもあるいとうせいこうにも信じがたい方法のようだ。

「少年院で筆記を許されず、頭の中でだけ長い詩を“書く”エピソードなどは想像を超える。」いとうせいこう 

ファーストアルバムを出した後は、そもそも「名前を売る手段」と割り切っていたMCバトルをやめ、アルバム制作に打ち込んでいく(「N.E.X.T」「ロンリー理論」「DARK SIDE」。そして、2014年にヒップホップ界の大物「般若」から誘われ、般若の昭和レコードに所属する。その時にアーティスト名をそれまでの「ZONE THE DARKNESS」から現在の「ZORN」に変えている。

昭和レコードの初期の頃は、あえてテクニック(押韻、早口)を控え、ヒップホップ好き以外の一般の人がきいても伝わりやすいことを意識したようだ。あえて例えるなら速弾きのギタリストがあえて遅いメロディーで聴かせることにチャレンジする感じだろうか?一般の人が聞いてもわかるようにとは言っても、媚を売るのではなく、あくまで本来ZORNの持っている感性を伝えることに注力している。

結婚をして子供たちを養う立場、そして前記の通りアーティスト以外も職人として働く、違法物はもちろん酒も飲まない、そんな日常を歌詞に込めるようになる。そして代表曲「My Life」が誕生する。

この曲のMVでは、職人として働く姿、家で子供たちと過ごす姿、そしてステージに立つ姿をそのまま見せている。
ヒップホップアーティストとしては、
「ラップだけで食えないのか?」
「スターじゃなく普通の人と変わらないじゃないか?」
そんな反応を予想してもおかしくないところだったろうが、ZORNは等身大の自分を包み隠さずに表現し多くの人たちの共感を得た。

この曲のテーマは自分のヒップホップは日常と共にあるということ。そこを「洗濯物を干すのもヒップホップ」というZORNにしかいえないパンチライン(ヒップホップ用語 その曲の思わず覚えてしまう強烈な印象の歌詞)で表現し、それが最大限に引き立つような構成になっている。それでいてカッコつけるためだけの言葉や、なにか気持ちをごまかす言葉は一つもない。ただただまっすぐな言葉たち(それでいて韻をしっかり踏んでいる)に圧倒される。

この曲は数年前まではYouTubeで100万回再生くらいだったのだけど(それでも凄い)、2020年8月の段階で800万回以上の再生回数となっている。年内に1000万回再生されるかもしれない。これは凄いことだ。

繰り返しの生活 目をこすり開ける玄関
朝から晩 ただ働く
月から土まで また変わらず
いつも汚れた作業着 一服するタバコと缶コーヒー 
思い通りにいかぬ日常に ふてくされに似た憤り
また言い聞かす これはまだ序章
高く飛び上がる為にある助走
昼休憩は嫁の弁当 俺より朝早くありがとう
冬は寒い 夏は暑い それでも夕焼けが素晴らしい
地味で泥臭い毎日 実家で野菜貰う帰り道

大体こんなもんさMy Life 昨日も今日もまあ変わりない
なんにもいいことなんて無い でも言葉に出来ない感謝に愛
信じたいものを信じたい 守りたいものを守りたい
題名なんて付いてない日 握る小さな手とMIC

繰り返しの生活 くたくたで開ける玄関
娘たちの声おかえり あったかいご飯またおかわり
テレビを消して話をしよう 学校のこと保育園のこと
誰が好きとか何が嫌とか 将来は何になりたいとか
誕生日に手紙をくれたな 下手な似顔絵もくれたな
どうもありがとう 本当ありがとう
別に悪くない 今日も明日も
お前らの為と思わねぇ そうじゃねぇ お前らのおかげ
なんつーか 生きる意味を痛感 心が揺さぶられる瞬間

大体こんなもんさMy Life 昨日も今日もまあ変わりない
なんにもいいことなんて無い でも言葉に出来ない感謝に愛
信じたいものを信じたい 守りたいものを守りたい
題名なんて付いてない日 握る小さな手とMIC

繰り返しの生活 カッコつけ開ける玄関
いつもと同じウェイ でも行き先はステージの上
金ピカのチェーンなんて持ってない 高級車にだって乗ってない
でもここに誇り持ってたい 少年のよう夢を追ってたい
踏んだり蹴ったり散々な目 諦めることは簡単だぜ
ガンガン前 人生一回 生きていたいただ精一杯
60wの栄光さ 全然金無くても成功者
一本道を行こう 洗濯物干すのもHiphop

大体こんなもんさMy Life 昨日も今日もまあ変わりない
なんにもいいことなんて無い でも言葉に出来ない感謝に愛
歌いたいことを歌いたい 伝えたいことを伝えたい
題名なんて付いてない日 握る小さな手とMIC

笑おう ほんのひとときを 咲かそう 日々に彩りを
鳴らそう 好きな音楽を 上がろう 上がろう
今週日曜 どこに行こう その日のため 6日を生きよう
誰かの幸を願えたら きっとそれ以上は無えんだな

歌詞: ZORN


昭和レコード後期には自分自身でプロデュースするようになり、自分自身が一緒にやりたいアーテイストとコラボするようになっていった。特に般若の路線とは違うAKLOとの共演やツアーは驚いた。AKLOとの共演はZORNの新たな路線の兆しだったように思える。

そして2019年ZORNは昭和レコードを脱退する。般若や昭和レコード関係者と不和になったというわけではなく30歳を迎えて自分の力で進んでいきたくなったこと。また、地元の友達と何かしたいということが理由のようだ。

昭和レコード脱退後の最初の曲はZORNの決意表明の曲となった。そこで般若や昭和レコードのSHINGO★西成への感謝。般若と同じく武道館を目指すこと、そして今も変わらずコーティング職人として働いていることをラップした。

俺は平成生まれ昭和育ち
ラッパー達の歌詞が教科書だし
これなきゃ気の抜けたコーラと同じ
15年かけた頑丈な土台
この人生は選択の連続
ペンはトレンドより生活と連動
夢や目標はデカく持って行こう
まずは武道館って書く予定表
振り返る気ない 塗り替える未来
突き立てる誓い 踏み出せる今
誰の成功も参考にならねぇ
今日も作業着に缶コーヒー片手
岐路に立ち 尻込みしない
ブレない まるでSHINGO★西成
ガンジャ コケインより感謝と尊敬
俺が狂ったのは般若のせい

歌詞: ZORN

昭和レコードで等身大の自分を表現していたときは、多くを語っていなかった地元新小岩のやんちゃな友達のことを歌詞にすることが多くなった。その結果、一般の人たちからの共感は得にくくなっているのかもしれない。ZORN自身は相変わらず、職人仕事をして、お酒も飲まず、奥さんや子供を大切にし、親孝行もしている。それと同じくらい地元の仲間たちも大切だということを歌詞にしている。それもZORNにとってのリアルな生活なのだから。

また、共演者もさまざまなキャリアの大物が増えてきた。前記のAKLOや昔から共演していたNORIKOはもちろん、オジロザウルスのMACCHO、ANARCHY、AK-69など幅広いラッパーと共演している。
また驚いたのは2019年末にHIP HOP界の孤高のアーティストTHA BLU HERBと2マンライブを行ったことだ。どこかのイベントに参加するのではなく、THA BLU HERBが誰かと一緒にライブをすることは聞いたことがなかった(知らないだけかもしれませんが)。このライブは観たかった。

少年院で頭の中で歌詞を書き溜めて自主制作でファーストアルバムをつくった少年が10年経ち、家族や多くの仲間を得て、HIP HOP界を代表するアーティストとなったのだ。
この調子ならば目標としている武道館も近いだろう。そのライブはおそらく日本のここ数十年のHIP HOPの歴史が詰まった豪華メンバーが集まることだろう。

特徴 心を揺さぶる言葉

ZORNの歌詞は心を揺さぶるものが多い。自分の持つ本当の感情や言葉を見つけることに長けている。
これはインタビューや対談で何度もでてくる少年院時代の経験が大きいように感じる。
少年院での親たちも招いた詩の発表会、そこでZORNはテクニックではない言葉の力を知る。本気だということが伝えるための大切な何かを。

「少年院で詩の発表会というのがあって、そこでかなり目の当たりしたんですよ。言葉の力を。ほんとクズみたいな連中で、どいつもこいつも詩なんかもちろん書けないんですけど、すごい伝わってくるんです。その発表会って親も見に来るから、親の前で、自分の反省したこととか親に対する気持ちを詩にしてるやつとかいて、ぼろぼろに泣いちゃってやばいんですね。へったくそな言葉なんですけど…でも詩のうまさとか関係ないって思って。本気だっていうことが伝わってくるんで。
僕はそのとき1番手で、ふざけんなとか思ったんですが(笑)、舞台に上がらされた瞬間に親と目があって、もう親が泣いていたんで、自分もぐっときちゃったんですけど…。ほんとうにやばかったですね。不良しかいないじゃないですか。そういう連中が続々と、気持ちを詩にして親に向けて発表するっていう。
僕はそれをラッパーとして聞いていたんっていうか、それは興味深くて、すごい経験でしたね。(少年院の)中ではお互いの話ができないんで、個人どうし、何をやってきた人なのか、年齢とか、地元もわからないし、敬語で話さないといけないしっていうなかで、そいつの中身が見えるっていうか、テクニックがないぶん、余計隠せないものがあるっていうか、半端じゃないんです。」
ヒップホップの詩人たち 都築響一 より引用

そんな経験があるからだろうか、ZORNの言葉にはカッコつけたり、ごまかしたりする言葉がない。
ちなみにこの時の発表会か分からないけど、少年院で文章での最優秀賞を取ったとのこと(R指定(同世代のラッパー)のラジオ番組にて)

AK-69という成功したセレブな雰囲気のラッパーの客演「If I Die feat. ZORN」という「もじ自分が死んだら」という内容の曲で、AK-69が「もし俺が先に死んでもお前は進め!」というような持ち味のカッコいい歌詞を書くのに対し

残すクラシック 家族に印税生活
あの世から養う人生計画
歌詞: ZORN

と、実に現実味あふれる歌詞を書く。あまりにも現実的では?と思わなくもないけど、テーマに対し真剣に向き合ってでた言葉なんだろうと思う。


また、少年院では本をかなり読んだので、話の構成というものを考えるようになったそうだ。特に星新一の伏線の張り方を研究したとのこと。前記の「My Life」の通り、一番言いたいことを最後に持ってきて、それが活きる構成にする。

「My Life」と並び人気の高い「Letter」という曲もそうだ。「My Life」に出てくる2人の娘は奥さんの連れ子であること、彼女たちを深く愛しているという曲。
「お前らが生まれた日は知らない でも過ごした時間は血よりも濃い」
という最後の言葉が活きるように、
「出会ったとき」、「今現在」、「思春期・成人を迎える未来」の構成で娘たちへの愛をつづる。


初めて会った日
おれがまだパパじゃなかった日
お前らは3歳と1歳
もう覚えてないかもしんない
懐かなかったのが懐かしい
でもまぁそれもそのはずだし
いぶかしげな目でおれも見る
ママの後ろ隠れ袖引っ
友達からそれが始まり
今思えばあれが旅立ち
おもちゃのキッチンでおままごと
日曜日にはいろんなとこ
葛藤し 時に苦悩しつつ
縮まる距離 少しづつ
そして2年 あの日を忘れない
初めてパパと呼ばれた日

公園で自転車の練習
風呂に入り 一緒に眠る
髪を撫で 寝顔にキスする
幸せと気づく そんな一瞬
毎日を満たす 日々の実感
決して金じゃ買えない時間
印鑑だけじゃない責任感
この背中におんぶして知った
泥だらけの靴 脱ぎっぱの服
ちょっとしたことですぐに愚図る
入学式を写真に写す
心が潤む 時を摘む
お前らの成長はおれらの成長
育ててるようで育てられるよ
無限大なその可能性
プリンセスのドレスからランドセル

※Hook
流れる時間そっと噛みしめて
小さな体をぎゅっと抱きしめる
忘れないこの日々
感謝や愛 その意味
流れる時間そっと噛みしめて
小さな体をぎゅっと抱きしめる
忘れないこの日々
初めて似てると言われた日

自転車の補助輪は 外れてく徐々にな
健やかであれ それが望みさ
大人までおれの奢りだ
後どのくらい 風呂に入れる
後どのくらい 隣で寝れる
後どのくらい 髪に触れる
後どのくらい 手を繋げる

本当のパパじゃないじゃん
つって家飛び出す夜もあるのかもな
でもおれら絶対に諦めない
夜中玄関に鍵かけない
友達みたく話そうぜ
たまに本音で言い争うって
洗濯物 別でもまぁオッケー
金ヅルでいい 買い物誘え
見つかるかな 夢や生き方
別に立派じゃなくていいから
どこへでもいけ お前らの人生
もしおれが反対しても押し切れ
きっと恋をし やがて愛を知る
でもひとつだけ忘れないでほしい
いつかドレス着る日が来たって
どんな男もお前らには似合わねぇ

Dear my Daughter
手紙書く いくつになったか知らないが
Dear my Daughter
おれなりのラップ
Beatsにrhymeで願いを託す

※Hook

初めて会った日
もう無理だって思った日
夜泣きされた日
オムツ変えた日
七五三の日
卒園の日
泣いた日
笑った日
他所と違う家族になった日
お前らが生まれた日は知らない
でも過ごした時間は血よりも濃い

歌詞:  ZORN

特徴 韻の技術

ZORNは才能あふれるラッパーだが、特に同じラッパーたちから尊敬を集めているのが圧倒的な韻の技術だ。
韻とは文末の母音を合わせる技術で、英語だとHIP HOPに限らずPOPやROCKソングでも当たり前に使われるし、
漢詩でも使われる。

日本語は普通の文章を作ると動詞(です、ます、だ)、や接続詞(し、が、は、)が文末にくるので、韻との相性が悪かったため五七五などの調が重要視されてきた。そのため黎明期(80年代)の日本語のラップでは韻が重要視されることがあまりなかった。
90年代になり新しい世代のラッパーたちがそれまで「おもしろいことを言う人たち」というラッパーのイメージを覆す時に重視したのが「韻」になる。Kダブシャインなどが倒置法などを駆使して3~4文字くらいの日本語で文節末で韻を踏む方法を一般的し、面白さを排除したハードな歌詞で一世を風靡した。

今何時? 現在時刻 この目で見とく生き地獄
自業自得で見失う空間
とまどう習慣 とまどう集団
本質見抜く頭脳活用
常に生かすよう 地球に役立つよう

曲:見回そう アーティスト: キングギドラ 歌詞: Kダブシャイン

文末できっちり韻を踏んでいる

時刻 iou 地獄 iou 自得 iou
う空間 uuuan う習慣 uuuan う集団 uuuan
活用 auou かすよう auou だつよう auou

ZORNはそこを進化させ、7文字以上の韻を踏み続ける。韻を重視すると韻を踏むためだけの意味のない言葉が入ってしまうのだけどそれもない。

2020年発表のRepの途中では 7文字の韻をこれでもかと踏み続けてる

黄色い総武線 iioioue
ビートにボールペン iioioue
一生一直線 iioioue な
B-Boyの夢 iioioue
新小岩 iioi 駅から
シンフォニーのステージ iioioue
娘をリムジンの シートに乗っける iioioue

歌詞: ZORN 
※ 韻の説明のためアルファベットを付け足ししている

しかも最後には滝川クリステル9文字でやんちゃな韻を踏んでいる。ZORNの韻の技術が詰まった一曲だ。


また、一曲の中で大量に韻を踏み続けるというチャレンジもしている。
この「かんおけ」という曲では、100か所くらい踏んでいるらしい(細かすぎて僕にはよく分からない)。
しかも日本語も意味がしっかりしている。そしてテーマも重厚だ。

子供の頃見たものが
心の底今も残る
ばあちゃんが俺の手を引いてる
古びたメモリーレーン

誰の人生も着火済みのロウソク
過去は霞み 遠退く
ぼんやりとその記憶
思い出し向かう老人ホームロビー奥
認知症のばあちゃん 孫の顔も蜃気楼の中
なにももう覚えてない末期症状
おまけにパーキンソン病で
足と両手が震え続け
封じようがない 不治の病
橋が崩れてく後ろから 雄基と名前を言っても
忘却の彼方にある焼却炉の中
弱るその体 小さく感じた姿に胸が痛くなる
暗い一室 孤独を窺い知る
侘しい82才の手に重なる9才と7才の手
その光景もいつかはメモリーレーン
歩こうって言って今度は俺が手を引いてく

生まれた時がスタートで 死ぬまで落ちる砂時計
だけどガラスは曇ってて 残りの砂は見えない
喪服を着てお通夜に 死者に弔い
生者にお悔やみ
親戚の伯母さんは余命宣告され去年天国
後世へと路線変更 御霊前と線香
手向けの花 遺影はかつてのまま
生きてるような死に化粧
まるでイミテーション
見ただけなのに氷に手を触れたみたい
お経と木魚 南無妙法蓮華経
皆 何を思って瞑想 安らかにと冥福を祈る
礼服の人と永久の沈黙
セレモニーホールの火葬場
遺族の顔には 物静かな喪失感
余りに計り知れない
悲しみを残し墓石へはいる
森羅万象 輪廻転生
死んだ後 誰も知らない所
今日は別れた恋人たちも
生まれ変わってもう一度会うらしい
生きるも死ぬも一緒同義語
生も死もきっとご近所 一本の糸
人の一生 リリックノートが俺の遺書

死ぬ前にどう生きてく
死ぬ前にこう生きて
死ぬ前に放棄したら
死ぬ前にもう死んでる
死ぬ前に人を愛す
死ぬ前に家族にキス
死ぬ前に何か残す
死ぬ前にありがとうを言う

明かりが灯る
一度きりの人生 1秒1秒死へ
日常に忍び音(ね) 霧も切り通して
未知の道を行け 生きろ嬉々として
日々の意味を知れ 木々の幹の威厳
ミリの塵の人間
明日のことなんてsiriも知りもしねぇ
でもまだ未来は俺等の手の中
今動いた嫁のお腹

歌詞: ZORN

特徴 多彩なリズムアプローチ

ラップは言葉の内容、韻も大切だが、リズムへの乗せ方(フロウ)も大切だ。

ZORNはフロウも見事で、常に新しいアプローチをしている。
代表的な曲を過去から振り返ってみたいと思う。

初期の作品 最初からめちゃくちゃ上手い。


初期の作品、ZORNにしては珍しいPUNPEEプロデュース。佐々木のぞみが凄く好きだったみたい。
90`sな感じのビートでかっこいいと思うんだけど評価が割れる曲。ZORNもPUNPEEも若い。

これも初期作品。ロンリー理論収録作品。


ZONE THE DARKNESS時代の名曲 「奮エテ眠レ」
「賭けるものが無いんです人生でいいですか?」という強烈なパンチラインが光る。

昭和レコード加入少し前の DARK SIDEから。早口だけどちゃんと聞き取れるところが驚異的。

昭和レコード初期 般若の奥さんSAYとの共演 般若のプロデュースで自分の感情を素直に表現できるようになったのかもしれない

昭和レコード時代 自身でのプロデュースが増えてゆく
ケンドリック・ラマー風なアプローチも試している。
「みたらし団子 iaaiano 買って 下町散歩 iaaiano」7文字韻も凄い

昭和レコードの3人での曲 


昭和レコード時代のRAU DEF(同世代のラッパー 10代のころにMCバトルで対決したことがある)への客演 短い曲の中で多彩なフロウを見せる

昭和レコード時代のNORIKIYOへの客演。この二人の曲も良いものが多い。

ヒップホップでないビートでも見事なラップ。

AKLOとの一曲。現在の人気を決定づけた曲。

地元についての曲 昭和レコード脱退後の方向性を見据えた一曲

若手のKvi Babaとの共演。最近のワイルドな雰囲気とは違うラップ。

ANARCHYとの一曲。ANARCHY怖い。

フリースタイル 

MCバトルに出場しなくなってからフリースタイルを披露する場面は多くないが、10代のころから現在までフリースタイルが上手いラッパーとして尊敬されている。MCバトルで7文字以上の韻が使われるようなったのは晋平太(R指定の少し前の世代のラッパーUMC2連覇)だと思っていたが、その晋平太が長い韻の踏み方をZORNに教わったと言っていたので驚いた。同世代のR指定も10代で大人が出場するMCバトルで勝ち続けるZORNに衝撃を受けたと語っている。

20歳のときのMCバトル(UNDER 20 MC BATTLE。RAU DEF戦。今聞いてもレベルが高い。

同じ大会 vs 黄猿 


同じ大会 順調に勝ち進んでいたが 決勝で敗退 勝ったKOPERU(R指定とグループを組んでいた人) も見事だけど、力みすぎた感じ。

昭和レコード時代 珍しいサイファの様子。
途中でビートが遅くなるのだけど、すぐに対応。

2020年のフリースタイル AKLOの「かます」の客演のMVメイキング。思春期に入った娘さんたちも相変わらず仲が良く、一緒に「鬼滅の刃」にはまっているそう(3:00くらい)(AK-69のMVでディオールのTシャツをかっこよく着こなすAK-69の横で、鬼滅隊の「滅」Tシャツを着てました)。
最近は強面風のMVが多かったですが、普通に話しているZORNは相変わらず優しそうな口調です。

これからますます活躍するであろうZORNの紹介でした。

本文の中で引用させてもらった都築響一さんの「ヒップホップの詩人たち」。ヒップホップファンのみならず、日本の地方・郊外文化を体感するのにとても良い。都築さんのベストワークの一つだと思う。必読。

<追記2020/08/19>
2020/8/18発表の新作はまさかKREVA。あらゆるタイプの有名HIP HOP アーティストたちがZORNと共演している。
KICK THE CAN CREWというより、BY PHAR THE DOPESTが初めて気に入った日本のヒップホップだったので、この共演は嬉しい。知らなったけど、KREVAも地元は東京の下町らしいです。

また、なかなかライブができない時期ですが、R指定のCreepy Nutsとの2メンライブが行われた模様。そのときのMCで娘たちとは仲はいいけど、娘たちはKing & Princeに夢中とのこと、、、、。

<追記2020/10/28>
2021/1/24  武道館ワンマンライブ決定!!!
まさに有言実行!!すごい!

さらにニューアルバム「新小岩」発売。
昭和レコード脱退後の曲がまとまっています。
さらに Tha Blue Harb の ILL-BOSSTINO(BOSS THE MC) とのコラボ曲MVも発表(アルバム収録)。

ここしばらくは韻や早口のテクニックが目立っていたけど、本作は聴きやすさやメッセージ性がメイン。代表作の一つになりそうだ。

<追記 2021/1/27>
どうしても行けなかった武道館。とても残念だった。とても良いライブだったらしい。

噂のおまけはオジロザウルスの名曲 AREA AREAのzorn版のようです。
「エリアからエリア」の部分を
「セリアからサイゼリア」とするのは熱いですね。

娘の彼氏の条件が「俺より韻を踏める」というのもなかなか、、、。愛情が深いんだな。

<追記終わり>

アルバム




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