見出し画像

たのしいおうちさがし

こんな時世にこんなことを言うのも何なんだが…半年後に、私が長年続けている趣味ごとに関する発表会がある予定だ。こんな時世だから「やっぱり開催は止めよう」になる可能性は多分にあるのだが、そうならなかった時のため、私は2021年の年明けから毎週末…その稽古に勤しんでいる。
なお、この日程が決まったのは、コロナがまだ対岸の火事だった去年の今頃(2月)のことで…そのとき、私はなんとな~くノホホンと思っていた。

「発表会の前は名前も住所も変えておきたいなぁ」

その趣味ごとは…いや、正解には私の所属しているサークルは…めちゃくちゃ、稽古に時間を取る。本番近くになると、土日祝日まるっと1日稽古…なんてザラにあるし、平日も週末の稽古に向けた準備に追われ、身も心も捧げ尽くすことを求められる。そして、そんな日々を送っていればかなりの確率でメンタルが弱る。(毎回、その時期には今回限りでやめるって言おう…と思う。で、喉元過ぎて…の繰り返し。)
つまり…今までのように彼に会う時間や余裕を生み出すのが…かなり難しくなるのは自明の理なのだ。
だったら。
だったら、その前にもう、一緒になっておこうよ、と。今の中距離恋愛に終止符打って、籍入れて、居を一つにしておこうよ、と。思ったのよ。
稽古が修羅場でも、帰れば君がいる…そんな暮らしが私はしたい!
顔を合わせることを不要不急と言われない関係になろうよ!
と、いうわけで、私は彼にその話をした。

「2021年の1月から6月までの間はこれこれの理由により、今までみたいに会えなくなると思う」と。

…この報告というか提案の肝は、その後に続く「なので、その前に結婚とかしておきませんか?」なのだが…白状すれは、そこは明確に言語化できなかった。そこについては、ふんわり…ぼんやりと…「だから、年内に色々カタついてるとありがたいなっ!」みたいなことを言ったのみ。
チキンですみません、だって、それって要するにプロポーズってことになるじゃん? それは…やっぱり、するよりは…されたいじゃん?! 指輪パカして欲しいとまでは言わないけどさぁ!!!
(少女漫画脳なんです)

結果、彼は、分かったのか分からなかったのか分からない感じのトーンで「わかった」「まあ、どうにかなるよ」と答えたわけだが、それから1年を経た今現在、私は未だに親から受け継いだ姓を名乗っており、土曜日の稽古後に彼の家に行き、日曜日の夕方に自宅に帰る…という暮らしをしている。これまでは稽古場確保係という立場を利用して、週一回稽古を、彼が出勤の土曜日のみに設定するという荒業でごり押してきたのだが、来月からは稽古が週2回になるので、下手したら月1(稽古が休みの日)でしか会えなくなる。
生殺与奪の権利を他人に委ねると、こうなるのだ。
富岡義勇は正しかった。

と、ここまでの文章を読み返してみると「彼氏にのらくらと結婚話をはぐらかされている崖っぷち女」の嘆きにしか読めないのだが…そこは、互いの名誉(?)のために、キッパリ否定しておきたい。彼にだって、その〝つもり〟は、ある。私と結婚したいと…思ってくれてはいる…この辺、言い募れば募るほど、怪しい気配が漂ってしまうのだが…はず。
ただ、その時期に関しては…「引っ越しやら役所の手続きやら諸々…まとめて終わらせるには長期休みがある時でないと無理だ! そして、自分の職場は私用で有給を簡単に取れない。直近の長期休みとなると2021年5月のゴールデンウィークだが、その時期はあなたが本番前で稽古が休めない…と、なると…我々が一緒になれるのは…最速で2021年の8月(盆休みの時期)」と云うところから一向に譲る気配を見せず、去年のお盆に初めて会わせた私両親の前でもキッパリそう言ったので…これは、もう、覆らないだろうと思ってる。

最初にその考えを聞いたとき(両親との対面前に事前打ち合わせを行った)は、脳内で膝から崩れ落ちた。
『あと1年?!』『あの地獄の稽古期間と並行しながら…あと1年…この状況だと…?』と、ぐるぐる考えながら…「おお…そうか」とだけ言った。
この上でまだ「自分から詰め寄って結婚してもらう」が嫌だった。一人で何もかも調べて段どって、実行して、彼が身ひとつで引っ越してくれば全て終了、のお膳立てをしてやる! とくくる腹もなかった。
背景的なものを調整する…にしても、彼が転職をする予定や可能性は微塵もないし、私も今更サークルを抜けることは出来ない。

ならばもう彼スケジュールを受け入れるしかないではないか…。

そうして、半ば(私的には)投げやりに、“結婚まであと一年”生活が始まったのだった。
とは言っても、稽古が始まる去年の年末までは特に変わらず。互いの誕生日を外食して祝ったりした。彼の仕事がない週末には会いに行き、年末年始を一緒に過ごし(家族以外の人と年明けを迎えたのは生まれて初めてです!)、彼のお兄さんのお家に招待されて姪っ子さんに挨拶させてもらったりした。そう、外堀的なものはなんかビミョーに固まってる感はあり…だからこそ、さほど絶望しないで済んだというかなんというか。
そして、迎えた年明け。
私が土曜日の夕方にご飯を作って彼の部屋で出迎えることはなくなり、テイクアウトのゴミが増え、彼の家の冷蔵庫に賞味期限切れのものが鎮座するようになって一か月。
何か思うところがあったのか、元より思っていたことなのか…彼が言ったのだ。
『ちょっと、来週あたり物件巡りをしてみない? 動かないと何も始まらない気がする』
「わーい、行こう行こう♪」と、答えながらも「とはいえ、いざその日になったら『やっぱりまだ先のことだしね』ってなるかもしれないから、そんなに期待しないでおこう」と裏で考えていた卑屈な私であったが…果たして、その翌週、私たちは本当に自転車にまたがり、彼が目星をつけた物件の外観を3軒ほど見て回ったのだった。
(さすがに「実際の入居は早くても8月なんですけど~」で内件は出来ない…)

その帰り道に、生活費の分担の話とか、買い換えたい家電のとか、日常ルーティンをどうやってまわすべきか、なんてことも話したりして、そのイベント自体はとっても楽しかったし、できればそのまま「もう、決めちゃおっか」みたいな、なし崩しを狙いたかったところだが…残念なことに、ちょっと高くなってもいいからキレイめなところに住みたい私と、広さがあるリーズナブルなところを狙いたい彼、その他諸々…折り合いをつけるのにもう少し時間がかかりそうな気配がするので…結局は、彼の想定通りに動くしかないのかもしれない…。
だって、来月からは発表会終わるまでは、ほとんど何もできなくなるからね…!
それまで、私の精神がどうぞ持ちますように。

おままごとみたいな第一歩だけれど、私の中では割と大きな出来事なので、記録してみました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?