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最新版:国内ECにおける支払手段まとめ

こんにちは。ようた@英語&フィンテック(Fintech)コーチです。先日、「日本のBNPL(後払い)決済について」という記事を書いたのですが、今回の記事では、後払いを含めた日本国内のEC(通販)サイトにおける支払手段について、実際に大手ECサイトの支払い手段を管理していた立場から少しまとめておきたいと思います。

絶対的に多いのはクレジットカード

まずクレジットカードを忘れてはいけません。日本はキャッシュレスが進んでいないと言われていますがECではそんなことはありません。JCBが毎年「クレジットカードに関する総合調査」という調査結果を発表してくれているのですが、クレジットカード保有率は86%程度と国内においてもかなり高いです。さらにECにおいては、現金を手渡すという代替手段が基本取れないことから、カードの利用率さらに高くなることになります。日本においてキャッシュレスが普及していないというのはどちらかというとECに対して対面決済(街のお店での決済)のことかと理解しています。

クレジットカードの種類

使われるクレジットカードブランドの分布(金額ベース)としては概ね以下のような感じです。(この記事ではクレジットカードにVisaやMastercardなどのブランドマークがついているデビットカードやプリペイドカードを含めて表現しています。

Visa: 56%、JCB: 21%、Mastercard: 17%、Amex: 4%、その他2%

その他にはDiners、Discover、China Union Pay(銀聯)などが若干ありますがこれらは誤差の範囲かと思います。上記のシェアはあくまでもクレジットカード内でのシェアですのでご注意ください。(ECサイト全体におけるシェアではありません)よくビザとマスターが世界2強という感じで表現されていますが国内においてはJCBのシェアは引き続き高い状況が続いていますので、ECサイト側ではJCBを検討せざるを得ない状況かと思います。

コンビニ払いは減少傾向

クレジットカード払いに次いでこれまで多かった支払手段はコンビニ払いです。この支払手段は、日本にいるとイメージしやすいのですが、海外の方にはなかなかイメージしてもらうことができません。簡単な流れを説明すると、①消費者がECサイトで注文すると注文番号が発行される、②①で受け取った注文番号をコンビニのレジの人に伝えたりキオスク端末(LoppiやFamiポート)などで入力する、③レジで現金を払う、④③を確認してECサイトは商品を発送する、と言うものです。クレジットカードは実質後払い(Post Payment)であることに対し、コンビニ払いは前払い(Pre Payment)の支払手段になります。購入者はクレジットカードを持っていなくても利用することができるメリットがあるのですが、ECサイト側とすると注文は入ったけど入金が確認できない(消費者からすると注文したけど払わずにキャンセルしちゃう)というケースも発生しうる支払手段です。
コンビニ払いを好む消費者セグメントは概ね10代、20代の若年層(特に女性)が多いと言われています。これらのセグメントをターゲットとしたいアパレル系ECサイトやチケット系ECサイトにとっては魅力的な支払手段かもしれません。ただ、「コンビニで現金で払いたい(クレジットカードは使いたくない)」という消費者ニーズは、前回記事にしたBNPL(後払い)でも基本的には満たされるわけですから徐々に置き換わってきているかと思います。またプリペイドカードやデビットカードといった若年層でも持てる「カード」も普及してきていますのでやはりこの支払手段はよりニッチなセグメントニーズを満たすものになっていくのかと考えています。

携帯電話決済(キャリア決済)

国内のECサイトの支払手段としてなかなか見逃せないのが、ドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの大手携帯キャリアが提供しているキャリア決済、携帯電話決済と言われるものです。国内においては99%以上の携帯電話がポストペイド(後払い)型の携帯契約になっていますので、実質的にこの支払手段はクレジットカードの代替になっていると考えられます。契約者の年齢に応じて、数千円から10万円程度までの信用枠を携帯契約者に供与しています。消費者は最終的にこれらの利用分をクレジットカードもしくは銀行引き落としで支払います。もともと「携帯電話の利用料金」を後払いで支払っていた消費者にとっては、「ECサイトの利用料金」が含まれることに違和感はあまりありません。ECサイト側もクレジットカードよりも抵抗のない後払い支払手段を導入することができ、ドコモ、KDDI、ソフトバンクなどのキャンペーンに相乗りすることができるメリットがあります。一方で、これらの携帯電話会社は、それぞれ、d払い、au Pay、PayPayなどのQRコード決済を別びじねすとして展開していますので今後はこれらの支払手段とどのように棲み分けをしていくのかという点が注目です。

QRコード決済

d払い、au Pay、PayPayなどは現在の国内決済においてはほぼ対面の決済手段と見做せるかと思います。唯一、PayPayは非対面決済(ECにおける決済)にも投資を加速させているように見えますので将来的にはソフトバンクのキャリア決済との統合などの動きがあるかもしれませんが、ECサイトとの相性という意味では、まだまだ携帯電話決済(キャリア決済)の方が利便性が高い気がします。ちなみにこれらのQRコード決済も実は特徴があって、一概にQRコード決済とは?という括りはできませんのでこの辺りは別の記事でまとめたいと思います。

後払い(BNPL)

日本のBNPL(後払い)決済について」に支払手段自体の詳細はまとめていますのでご確認いただければと思います。名前の通り、後払いできることをメリットとしていますが、消費者にとっての最終的な支払手段は、コンビニか銀行引き落とし(銀行振り込み)になるかと思いますので、個人的にはこの支払手段は国内においては、「後払いのコンビニ払い」と言い換えることができるのではないかと考えています。海外においてBNPLは手数料なしで分割払いができる、後払いができるなどがメリットと考えられていますが、国内においてはクレジットカードも含めて翌月払いは基本手数料無料ですので、後払い(BNPL)がコンビニで後払いできるというメリットだけでどの程度普及できるかは未知数かと思います。(後払いしたいと言うニーズであれば、携帯決済でも十分満たせるわけですし、クレジットカードを使いたくないというニーズであればプリペイドもデビットもあるわけです)

銀行振込・銀行引き落とし

消費者視点で言うと銀行振込、銀行引き落としという支払い手段は実はよく使っています。クレジットカードも携帯決済(キャリア決済)も後払い(BNPL)もよく考えてみると最後は、自分の銀行口座から最終的には引き落とされているわけです。ではなぜECサイトでこれらの支払手段が使われないかと言うと、一言で言うと、「面倒」だからです。銀行振込してもらうのはいいのですが、誰のどの注文への入金かというのは突合が非常に面倒です。また、銀行引き落としは毎月決まった日の引き落としとなることが一般的ですので、「後払い」に適した決済手段となるのです。(ECサイトからすると払ってもらえないリスクがある)
銀行口座の普及率は国内においてはほぼ100%だと思いますので、銀行口座から直接支払うことができれば消費者からすればそれでいいような気もするのですが、リアルタイム性、ポイントなどのメリット、システム接続の簡便性、不正への対応などにおいて、クレジットカード等の支払い手段が上回っています。ただ、一部、Bank Payなどの動きがありますのでこのあたりは注目に値するかと思います。

代引き

Cash on Deliveryと言われるもので配達員に主に現金を支払うものです。これも後払いの一種だと思われるのですが、「現金で払いたい」、「品物を受け取ってから支払いたい」、「匿名で注文したい」という消費者ニーズを汲み取ったものです。ECサイト側からすると返品になるリスクや手数料が高いなどのデメリットが結構ある支払手段です。

まとめ

上記以外にも国内にはスイカなどの電子マネー、WebMoneyのようなゲームなどに特化した電子マネーなども存在します。ECサイトがどの支払い手段を導入すべきかというのは、大きく言うと、誰を(どのセグメントを)ターゲットにすべきか、決済手数料をどのように考えるか(ポイント還元などのインセンティブをどのように考えるのか)、との兼ね合い、バランスかと思います。一般的な物販ECサイト(アパレル以外)であれば以下のような金額ベースでの割合が一般的に考えられます。

クレジットカード: 80-90%
コンビニ(前払い)決済: 4-7%
携帯決済(キャリア決済): 4-8%
後払い(BNPL): 1-3%
代引き: 2-5%
銀行振込: 1-2%

各ECサイトはここから自社のニーズに合うように戦略を組みます。例えば楽天などであれば自社発行カードにできるだけ寄せたいわけですからクレジットカードなどの割合を高くする施策をとります。デジタルコンテンツなどではその場で配信する必要がありその場合はコンビニ決済などの前払い手段は親和性が少なくなります。自社の顧客にとって何が一番利便性が高い支払手段なのかなどの決済手段の選択は、マーケティング戦略との兼ね合いやコストの管理も含めて、ECにとって非常に重要な要素の一つです。

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