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タッチ決済とiD/QuickPay/ApplePayあたりの解説書

こんにちは。フィンテック界隈の外資系サラリーマン鮭です。自己紹介系の記事も後日アップさせていただければと思いますが、子供の夏休み最終日は一緒の時間を過ごそうと会社の休みを取ったのですが、(オリックス対楽天の首位攻防!試合が雨で中止になるなど)一人の時間が出来たので、「業界の人でもわからないよね?」ましてや「この業界に知見がない人にはほぼ呪文のような世界になってきていない」と最近感じている「タッチ決済とiD/QuickPay/ApplePayの違い」について少し解説版noteを書いておきたいと思います。この辺りが分かると各カード会社が行っているキャンペーンなども「あれこれ対象になっているよね?」とか「なんでポイント付与されないんだろう?」というような不安がなくなるかもしれません。少し長い文書になるかもしれませんが、わかりやすい文章で残しておきたいと思いますのでお付き合いください。

基本クレジットカードやプリペイドカードが必要

このnoteで解説するのは、国内におけるiD決済、QuickPay決済、ApplePay決済、GooglePay決済、タッチ決済(Contactless決済)と呼ばれているものです。ApplePay決済やGooglePay決済などは非対面決済(オンライン上での決済)もあるのですが、この解説書では対面決済(実際のお店での決済)にフォーカスして解説します。

基本的な決済の仕組みとしては、クレジットカード(クレカ)や(メルペイプリペイドカードやVisa Line Payプリペイドカード)などのプリペイドカード(プリぺ)に紐づけて決済するというものなので、これらの決済を利用するには、紐づけるクレカやプリぺを用意する必要があります。なお、ここでいうクレカやプリぺは、VisaやMastercard、JCBなどの国際ブランドと呼ばれているマークがついているのが原則です。(日本だとSuicaという例外があるのであるのですがあとで少し触れます)

クレカをスキャンしたり暗証番号を入力したりしない

クレカやプリぺをお店で使う際(お店視点でお店でカードの利用を受け入れる)には、お店のPOS(レジ)やカード読取端末で何パターンかの作業をしないといけません。昔は、カードのエンボス部分(カード番号が浮き出た構造になっている部分)を複写式の用紙に押し付けてカードのコピーみたいなものを取る方法もあったのですが、現時点では以下の3パターンでほぼ説明できると思います。

1. カードの磁気部分(裏面の縦長の黒い部分)を読み取って、サインをもらう。

2. カードのIC部分(ICチップ部分が見えるカードと見えないカードがあります)を読み取って、暗証番号を別途入力する。(日本国内では概ねこの方法が主流かとおもいます)

3. カードを端末にタッチさせる。(Suicaのような使い方)

なお、1と2では、サインを省略したり、暗証番号の入力を省略したりすることが出来ますが、3では(1万円以上などの高額購入を除いて)原則サインなどを求められることはありません。

端末にカードをタッチ(Contactless)させるとは?

国内においてiD決済、QuickPay決済、(これまでの)ApplePay決済、(これまでの)GooglePay決済とは、上記の3のカードを端末にタッチさせる方式の派生型です。派生型といっているのは、カードを端末にタッチさせて読み取るNFC(Near Field Communication)と呼ばれる技術が日本独自の技術であるからです。

NFC技術には、Felica(フェリカ)と呼ばれる日本のソニーが開発した仕様と、国際的にAppleやGoogleなどの携帯端末メーカーやVisaやMastercardなどのカードブランドが採用しているTypeA/Bと呼ばれるものがあります。(ちょっと難しくなってきましたかね^^。。少し意識的にわかりやすく書きますね)ここでは日本のフェリカという仕様は世界的にはあまり普及していないということを覚えておいてください。(普及していない=技術的に劣っているということではありません)

なぜ日本はFelica(フェリカ仕様)なのか?

では、なぜ日本は国際標準ではない技術を採用しているのでしょうか?この辺りの詳細な考察は専門家に譲りますが、個人的にはSuica(スイカ)PASMO(パスモ)の普及が大きく関係しているかと思います。よく考えてみると、日本では、最近の「タッチ決済」というようなフィンテックの文脈のずっと以前2001年ころ?からJR東日本がSuicaサービスを開始し、すでにタッチして電車に乗る、コンビニで買い物するというのが当たり前のように普及してきたのです。そしてこのSuicaサービスで採用されたNFC技術がFelicaだったのです。Felica技術が搭載されたカードをよみとるには、Felica技術に対応した読取端末が必要で、日本の多くのコンビニを含む小売店では、タッチ決済=Felica対応をするという構図の中で普及してきたのです。

Apple(ApplePay)は例外的に日本導入iPhoneにFelica対応を行った

このようにFelica技術に対応した端末(カード読取端末)が日本全国、津々浦々に普及している日本において、Contactless決済であるApplePayを普及させるためにAppleは2016年に発売されたiPhone7において例外的な仕様変更を行いました。それは、日本で発売されるiPhoneにおいては、Felica技術とTypeA/B技術の両方に対応するということでした。iPhoneでJRの定期券対応やSuicaに対応した決済ができるというのはそのためです。つまり、日本においてはiPhoneをFelica技術に対応した端末にしない限り、ApplePayの展開が難しいと判断したのだと思います。全世界共通の仕様で端末を製造しているAppleにしては例外的な判断だと思います。

iD決済やQuickPay決済はFelica技術を用いたタッチ決済

さて、少しお話しを戻します。そもそも、iD決済やQuickPay決済とは何でしょうか?新しい決済手段といえばその通りなのですが、前述したとおりこれらは原則クレカやプリぺに紐づいた(Felica技術を採用した)決済手段なのです。Suica決済でピッとサインもしないで買い物する経験をするとめちゃくちゃ便利ですよね?これと同じ買い物体験を日本のカード会社やNTTドコモなどが中心になって作り出した主に少額決済に対応した決済手段なのです。つまり、

Suica(Felica技術)=コンビニなどでピッと買い物と同じ体験

クレカやプリぺ=Felica技術に置き換えたiDやQuickPay=コンビニなどでピッと買い物体験

といった感じです。(iDやQuickPayなどはApplePayでも採用されているToken化(トークン化)という不正対策技術が別途採用されているのですが、この辺りの解説は割愛します)

ApplePayやGooglePayとはいったい何?

ApplePay決済やGooglePay決済について、改めておさらいしておきましょう。いろいろなケースはあるのですが、対面決済(お店での決済)という文脈に関していうと、(クレカなどの)カードの代わりに携帯端末をかざす(タッチすることで)使える決済と言い換えることが出来ると思います。つまり、カードを持ち歩いたり、財布を持ち歩くことはなくても、携帯電話端末は持ち歩いているよね、、であれば携帯電話端末の中にカードの機能を取り込んでしまおうという考え方です。

カード機能を取り込んでしまうのはいいのですが、ここで前項の問題が発生します。カード側はFelica機能を搭載しているのですが、iPhoneなどの携帯端末側がFelica機能に対応していなければそのまま取り込むことはできないということになるのです。これらの理由でAppleはFelica対応を行ったのだろうと推測できます。さらに言うと、ここで重要なのは、以下の点です。

ApplePay決済やGooglePay決済はFelica機能を(クレカなどの)カードから移行させた決済手段として始まった

こんな状況でTypeA/Bの普及が始まって(しまった)。。。

ここまでの内容を簡単に少しまとめると、 iD決済・QuickPay決済=Felica決済(=Suica決済)=これまでのApplePay決済、GooglePay決済という形でまとめてることが出来ます。日本ではこのような構図でタッチ決済(Contactless決済)が普及してきたのです。

ちょっと話がずれますが、スイカをタッチする、お店の端末にタッチするというように「タッチする」という言葉が日本では浸透しているので、タッチ決済という呼び名になっていますが、英語でいうとContactless(コンタクトレス)決済、つまり非接触決済という呼び方が一般的です。非接触なので、タッチ(接触)ではない(スイカカードを端末や駅の改札にかざしたことがある方は経験あるかもしれませんが、技術的には数ミリの空間があっても、接触していなくても決済されます)のですが、日本ではタッチ決済という呼び名で普及しているので頭の片隅にでもおいておいてください。

先ほど、iD決済・QuickPay決済=Felica決済(=Suica決済)=これまでのApplePay決済、GooglePay決済という形がこれまで構図と書きましたが、ここにTypeA/Bのタッチ決済の導入が新しく日本において始まったので物事がややこしくなってきました。

これまではクレジットカードの券面には、ブランドロゴ(Visa、Mastercard、JCBなど)、 Felica対応のロゴ(iD, QuickPayなど)が記載されていました。(これ以外にもANAやJALなどの提携先のロゴや楽天やソフトバンクのようなカード会社のロゴ、Tポイントのような提携先ポイントのロゴもがついているのが一般的です)。Type A/Bのタッチ決済に対応するカードはこれらのロゴに加えて、以下のようなロゴマークが記載されています。

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これが日本のタッチ決済をややこしくしているのです。

タッチ決済をしたい=カードをタッチする(かざす)ではない

これまでは、タッチ決済をしたい(カードをかざして支払いたい)という場合、スイカやiDやQuickPayのロゴの入ったカードを端末にかざすだけで大丈夫でした。しかし、Type A/Bのタッチ決済ができるようになってからこのかざすだけに加えて、端末側で「どっちのタッチ決済か(NFC技術をよみとるのか)」というワンステップが基本必要になったのです。これはカードを使う人もカードを取り扱うお店(もっと言えば、お店の従業員の方)を混乱させています。

例えば、スイカなら「スイカで」といえばそれで終わりなのですが、iDとType A/Bのタッチ決済の両方が搭載されたカードだと、「タッチ決済で」といっても「iDの支払いとして受ければいいのか」, Type A/Bのタッチ決済の支払いとして受ければいいのか」がお店側ではわからないのです。解決策として、コンビニなどではレジの画面で利用者の使いたい支払い手段に触れてもらうということや「iDなどを電子マネー扱い」、「Type A/Bのタッチ決済をクレジット扱い」としたりしていますが、この辺りをアルバイト従業員に理解してもらうのはとてもハードルが高いと感じています。また、「タッチ決済」という言葉自体も一般的な表現で、「タッチ決済=クレカの(Type A/B)での決済」と紐づいて理解できている人は、まさにこの業界にいる人以外いないのではないでしょうか?

ApplePayでも両方使えるようになった

Type A/Bのタッチ決済は先述の通り既存のiPhone7以降のApplePayでもそのまま利用することが出来ます。使えるようになったというより、これまでその機能は使われてこなかったという表現の方が正しいです。このnoteで何度か触れてきましたが、これまでは、ApplePayのタッチ決済というのは、Felica(iD/QuickPay)だけで使われてきました。これは主にTypeA/Bのタッチ決済に対応した読取端末を持つお店がいなかったからです。ただ、昨今、主にVisaなどが旗振り役になって、小売店への端末導入が進んでいます。大手コンビニ(セブンイレブン、ファミマ、ローソン)、大手小売り(イオン、イトーヨーカ堂)、大手外食(マクドナルドや吉野家)などが対応し始めたことで、使えるお店は広がってきているのですが、実際に使われているかどうかはとても微妙な感じかと思います。(新しくこのType A/Bのタッチ決済で払わなくても、すでにiD決済やそもそもカードの暗証番号で決済する方法がかなり浸透していますので。。)

ApplePayタッチ決済キャンペーン(ただし、iD決済は対象外です…)

最近はカード会社などで、こんなキャンペーンが行われていました。マクドナルド(コンビニ)でApplePayに登録したタッチ決済を行うと20%還元。(ただし、iD決済として処理された場合は対象外)これは非常にわかりにくいです。まずType A/Bに対応したクレジットカードをApplePayに登録します。多くのクレカはすでにiD(Felica)対応を行っているので実際にはApplePayのWalletにはこんな感じで表示されるはずです。

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この状態でiPhoneをかざしてApplePayを使おうとすると、お店側は混乱します。ApplePayで支払おうとしているのだから(これまでならiD決済として流せばいいんだよな)、でもなんかタッチ決済っていう新しい決済手段もマニュアルに書いてあったな、、、もうここまでくると呪文のような状況です。利用者側もApplePayで支払えばいいと思っていればさらにそれが、iD経由かTypeA/B経由の決済なんて普通は考えたりしません。冷静に「iD決済ではなくタッチ決済でお願いします」とか「Visaクレカのタッチ決済でお願いします。多分クレカ扱いですすめてもらえれば通ると思います」とかなんてふつうの利用者はお店の人に伝えたりできないですよね。。(逆にいうとここまで説明できればちゃんとクレカ会社のキャンペーンにのることが出来る感じになります。ここまでしたいかは別ですが、、)おなじ状況はApplePayだけでなく、カードをタッチ(かざす)して支払う際も起きます。iDで働いたいのか、Visaのタッチ決済で払いたいのか、お店の人は聞かないとわからないのです。カードを見せるだけでは、普通にクレカで支払いと思われて、「ここに挿入してください」なんて言われるかもしれません。

まとめ

まとめると、日本においては、Felica仕様のタッチ決済とTypeA/B仕様のタッチ決済が現在共存している状況です。将来的にはどちらかに統一されるとわかりやすくなると思うのですが、スイカの普及背景やJRなどの鉄道各社がすでにFelica仕様を採用している現状ではそんなに簡単なものではない気がします。消費者視点では、現状はType A/Bのタッチ決済を積極的に使うメリットはほぼ無いと考えています。あるとすれば、上記のようなキャンペーンの実施期間中だけ使うとかだけかなぁ、と。一方、お店視点では、外国人観光客などが持っているカードやiPhoneなどはもちろんFelica仕様のカードには対応していないわけですから、Type A/B仕様の端末の導入を促進してきたのは一理はあるわけです。(Visaもオリンピックの大スポンサーでしたから、このタイミングで「一応」Type A/Bのタッチ決済が目に付くようになったのも偶然ではないと思います)日本ではすでに、少額決済ならスイカで簡単にかえ、PayPayなどのQR決済の普及率も高く、さらに既存のApplePayでもiD決済(実質タッチ決済)が搭載されている状況をみると、新しいタッチ決済の普及にはまだまだ時間がかかりそうです。

このnoteではフィンテック業界の解説や動向などを定期的に投稿していければと思います。ご興味のあるトピックなどがあればぜひご連絡ください。

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