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OLA革命-自分度の広げ方 14「建築におけるコモンを考える」

 簡単に「コモン(common)」といっても、人それぞれで、共通した定義がないと話がズレていってしまいます。完全に統一させる必要はないのですが、建築家伴年晶氏が考える「コモン」と、建築家大矢和男氏が考える「コモン」について、お話いただきました。

伴氏の「建築におけるコモン」とは

 コモンと簡単にいうけれども、戸建住宅にはコモンはありません。コモンとは共同生活する上で、お金をかけなくてよくて(毎回課金されるところではないという意味)、かつ生活に必要な空間です。
 街における公園、道路も大きな意味ではコモンです。共同住宅では共用部(エントランス、庭、階段、廊下等)がコモンになります。(プライベート ー コモン"中間領域" ー パブリックという、3つに分ける考え方もあります)

大矢氏が捉えているコモンとは

 西宮甲子園口で生まれ育ってきて、いわゆる都会人で、共同体というよりは個人主義的に生きてきました。協調性は持っているが、集団行動は苦手。そんな都会人の代表としては、様々な活動範囲があり、その仲間との場、ネットワーク自体が「コモン」と捉えています。
 ですから、仲間たちと一緒に使う空間だとかがコモンスペースなのであって、コーポラティブハウスという住居を共有している方々のコモン、つまり建物とか、地域を共有することでのコモンって、あまりイメージできないんですよね。
 そういうことから、集合住宅とかはあまり設計しないのですが、NPO法人 野火という、太鼓・民舞のグループの「太鼓ホール」を設計しました。これは、この太鼓グループのコモンだからです。
 太鼓は、110デシベルという音圧があり、なかなか集まって練習できる場所がない。そこで、グループのメンバーが集まって、共用部分に「太鼓ホール」を、その上に20戸程度のコーポラティブハウスを計画することになったんです。

微分すると同じコモンを捉えている

 前回の話で出てきた「微分する」=抽象的に本質を捉え直すと、コーポラティブハウスのコモンも、仲間とのネットワークのコモンも同じ本質を持っています。
 コモン自体は、参加したい人が参加できるしくみであり、「すべての人が関わらねばならない」というコモンは、コモンではありません。関わりたいと思った人々の、共通のテーマを持ち合わせている空間がコモンであり、最も美しくて個性的でありつつ、集団的なものです。

豊かなコモンが積分されていくこと

 都市は、そういった様々な層(レイヤー)が、多層構成しているのがその特徴であり、コモンの多層性が都市の魅力であると思います。コーポラティハウスという、集合住宅にコモンを見出している伴氏、多層性のあるネットワークの中にコモンを見出している大矢氏。そういうコモンを考えて空間化する建築家が、都市の文化の重層性を積み上げているのではないか=積分されている、と改めて感じ入りました。

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