里山から自治を考える 16「自治の必要性と単位」
大阪市内における自治単位としての地域振興町会
大阪市では、地域活動協議会という、地域振興町会(大阪市内では町内会ではなく地域振興町会と呼ぶ)と、老人会や子ども会を合体させたような組織が、現在の自治の単位となっています。
元々は、戦前の隣組組織なのですが、戦後、GHQは戦争の基礎単位となっていた隣組を禁止します。しかし実際には、地域を何らかの形で動かしていかねばならないということで、GHQでも手が出せない、赤十字奉仕団の地域支部という形式で、大阪の地域振興町会が復活をみることとなりました。戦後は、そうやって団結しなければならないほど、地域コミュニティを必要としていた時期だったのかもしれません。
地域活動協議会が、未だ赤い羽根募金をやっているのは、そういう背景もあります。
地域振興町会から地域活動協議会へ
以前の地域振興町会には、当時、使途不明のままでよい地域支援金として約100万円、全振興会が300ほどあるので、3億円くらいが毎年支払われていました。これは慣習化されていた制度で、区役所の地域活動動員とかに協力している費用と、盆踊り等に使っている費用をセットにして配布していたんです。これによって、大阪市内の町ごとの盆踊りの費用は、それなりに賄われていたわけです。その一方で、自民党への集票組織として、ほぼほぼ、この地域振興町会が機能していた地域があり、それに目をつけたのが、当時市長だった橋下徹氏です。
そこで、会計業務を導入し、どんぶり勘定でやれないことにしました。また、地域への支援金は、地域活動協議会を結成した地域にのみ支援することとしたんです。
最終的には、地域振興協議会の中に、地域振興町会が存在する状態となりました。
地域活動協議会は大阪市の自治を担えるのか
30-40%の加入率程度であろうと思われる、大阪市内の地域活動協議会。
里山太郎さんのような、ベットタウンのある持ち家ばかりの自治会では、9割以上が加入していますよね。大阪市内は、賃貸住宅が多く、また外国人居住者も多く、郊外の里山環境とはちょっと状況が異なります。
逆に「いくのパーク」ができた生野区なんかは、地域コミュニティがしっかり根を張っているように感じます。これからの大阪市の自治の単位として、地域活動協議会がどうあるべきなのかに興味を持っています。
そもそも大阪市民は自治を求めているのか
今週の里山太郎さんのプロットは、「そもそも自治は求められているのか」でした。戦後すぐの頃とは異なり、地域単位としての地域活動協議会が、その自治の担い手として、その存在が求められているのか。いやそもそも自治は必要なのか、という厳しい指摘でした。
絶対に必要なのは、「地域防災」という視点ですが、防災意識が希薄な現状において、重要かもしれません。しかし、必要性を感じられていない、というのが実際の市民意識であり、そういった希薄な状況認識からスタートしないと、この自治論自体が砂上の楼閣になりかねないという指摘をいただきました。
大阪市内で暮らしていく上で、目の届く、力が合わせられる、1人ではできないことを協力してやりたいこと自体が共有できる範囲が、自治の単位になるのかもしれません。
ただ、自治の単位をそこまでミニマムに絞ってしまうと、今のような、住民不在の行政を勝手に進められてしまい、それを止めることもできないというのもまた事実です。そのあたりを悶々としつつ、考え、行動していかねばならないと改めて思う次第です。