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『それでも町は廻っている』はアニメも最高だった!

 「それ町」はマンガもアニメも両方面白い。登場人物たちの掛け合いが最高に面白い作品である。歩鳥と紺先輩のコンビにどれだけ笑わされたものか。そして、会話劇のテンポとセンスも抜群にいい。ボケとツッコミがスピーディに入れ替わりながらも、素早い会話劇が繰り広げられていくのが楽しすぎる。まるで、毎話「ザ・ドリフターズ」のコントを見ているかのように笑いをお届けてしてくれるのだ。シャフト演出が、この作品のテンポアップに貢献していたんじゃないかな。『化物語』の演出が好きな人ならば、きっと本作にもハマれるはずだ。「それ町」は、何気ない日常の中にある特別な瞬間を描くのがめちゃくちゃ上手であったなあ。

『それでも町は廻っている』(2010)

原作:石黒正数 / シリーズ構成:高山カツヒコ
副監督:龍倫直征 / 総監督:新房昭之
アニメーション制作:シャフト

【キャスト】
嵐山歩鳥(小見川千明)、辰野俊子(悠木碧)、針原春江(白石涼子)、紺双葉(矢澤りえか)、真田広章(入野自由)、磯端ウキ(櫻井孝宏)、森秋夏彦(杉田智和)、嵐山猛(田村睦心)、嵐山雪子(仙台エリ)、嵐山雪美(松来未祐)、嵐山歩(小野友樹)、亀井堂静(雪野五月)、ジョセフィーヌ(松来未祐)、西先生(戸松遥)、亀田先生(楠見尚己)、ナレーション(上田燿司)

【音楽】
OP「Down Town」作詞:伊藤銀次 / 作曲:山下達郎 / 編曲:服部隆之 / 歌:坂本真綾
→お洒落で口ずさみたくなるノリのいい曲だ。つい音楽に合わせて「それ町」の住人たちと一緒に足踏みしたくなってくる。
ED「メイズ参上!」作詞:サエキけんぞう / 作曲・編曲:バカボン鈴木
歌:メイズ(紺双葉、嵐山歩鳥、辰野俊子、針原春江)
→紺先輩の歌の虜になる。紺先輩の原作イメージを上手く体現してくれているところがかなり嬉しい。紺先輩最高!!!

「こんなのロックじゃねぇ〜」

物語の概要

 尾谷高校に通う嵐山歩鳥は、推理小説が大好きな女子高生である。彼女は、「メイド喫茶 シーサイド」でバイトをしている。これは嵐山歩鳥のありふれた日常の中にある特別なひとときを切り取った物語だ。

本作の魅力

 『それ町』は、一つのジャンルに縛ることが非常に困難な作品である。石黒正数のSF(少し不思議な)劇場であると言ってもいいだろう。これは、「日常×ミステリー×SF」など様々なジャンルを組み合わせた作品なのである。

 アニメ版も原作と同じように、物語の時系列がシャッフルされており、何度でも楽しめるように設計されていて非常に楽しい。1話1話のクオリティが高くて、鑑賞後の満足度もかなり高い作品であった。

 また、次回予告が主要登場人物による次回のタイトルにちなんだ会話劇を繰り広げて終わっていくのが面白いし、お気に入りだ。しかもそのシーンは次回予告にしか出てこないシーンなのである。次回予告のためだけのオリジナルアニメーションを作るなんて、めちゃくちゃ力を入れている作品じゃないか。原作のように細かいところまで遊び心を行き届かせた楽しい作品となっている。

 歩鳥役の小見川千明さんの声は、思っていたよりも高かった。原作を読んでいてイメージしていた歩鳥のイメージとは少し合わなかったので、一話目を見たときにはあまり乗れなかった。しかし、話数を重ねていくごとに低い声で話す歩鳥や怒っている彼女の演技に歩鳥っぽさを見出し、段々小見川さんの声にハマっていく自分がいた。歩鳥を演じるのは誰がやっても難しいだろう。精一杯自分なりの歩鳥を模索して見事に演じ切った小見川千明さんは素晴らしい声優さんであった。最初乗れなくてごめんなさい。

 歩鳥以外のキャスティングに関しても、見事にそれぞれのキャラにぴったりと当てはまっていたように感じる。特に、ウキ役の櫻井孝宏さんの熱演は、要チェックである。お婆ちゃんの役であるにも関わらず、変幻自在の華麗な演技をお披露目してくれている。この演技は、確実に視聴者の目と耳を喜ばしてくれるはず。ウキの喋りが、原作のイメージ通りすぎて笑ってしまったほどだ。櫻井さんの演技の幅はものすごく広いなあと驚いてしまった。

私の1番好きな話

 8話「全自動楽団」が1番好きな回である。前半の「全自動世界」はアニメだけのオリジナル回。上手く原作の「それ町」の世界観を引き継いでいたのが素晴らしかった。自動販売機のあるコインランドリーで雨宿りするというお話だ。うどんの自動販売機が斬新すぎて面白い。コインランドリーにあんなに食べ物の自動販売機があれば、良い時間潰しになるよなあと歩鳥たちを羨ましく思ったものだ。「都会のオアシス」と歩鳥がコインランドリーのことを名付けていたのが面白かったなあ。

 そして後半の「迷路楽団」は、歩鳥たちの学園祭を描いた回である。これは個人的に12話の中でも1番お気に入りの回だ。原作を超えたんじゃないか?と思っている。

 「そうは云っても世界は終わらない」。これが学園祭で歩鳥たちのバンド「メイズ」の歌った曲だ。紺先輩のロックな歌声とそのメロディラインに乗った独特な歌詞が見所である。紺先輩以外のメイズメンバーも歌っているところが意外だったなあ。
 この伝説の学園祭でのメイズの演奏の長尺バージョンを聴けるなんて本当に最高であった。独特な演奏の虜になってしまった。アニメだけのオリジナル楽曲が作られていたのが良かったよねえ。原作の歌詞のエッセンスを取り入りながら、メイズの演奏を表現し切ったシャフトの力はやっぱりすごいよ。

 シャフト制作アニメの音楽はどれも耳に残って面白い曲が多いなあという印象が強い。この8話はアニメの良さを最大限活かしきったおすすめの1話である。原作好きの人にもこの回だけは是非とも観てもらいたいものだ。この「メイズ」の演奏を映像化してくれただけでも、「それ町」のアニメ化は成功だったんじゃないかと思う。

おわりに

 最終回に「それでも町は廻っている」を配置させるとは、本当にシャフトさんはこの作品のことをよくわかってらっしゃる。12話しかない中でこの話以上に「それ町」の最終回を飾れる話はないであろう。原作では2巻に収録されている話なのだが、この原作の順番をシャッフルさせて、アニメなりのオリジナルも加えて映像化した意義はとても大きい。また、「それ町」を見ていると、無性に推理小説を読みたくなる衝動に駆られてしまう。久しぶりに東野圭吾の作品でも読んでみようかな。

最後に一言。

 「真田回とタケル回に外れなし!」

↓ちなみに私は「dアニメストア」で鑑賞しました↓


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