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『アリー/スター誕生』 ひたすら面白い映画に会いたくて 〜50本目〜

   クリント・イーストウッドがかつて映画化を熱烈に希望した企画を、彼の監督作品『アメリカン・スナイパー』で主演を務めたブラッドリー・クーパーが初監督作品として引き継いだのが本作『A Star Is Born』である。

50本目 : 『アリー/スター誕生』(2018)

脚本 : ウェル・フェッターズ、ブラッドリー・クーパー /
監督 : ブラッドリー・クーパー

「I just wanted to take another look at you(もう一度君を見たかった)」

物語の概要&見所紹介

   世界中を魅了する歌手になることを夢見るアリー(レディ・ガガ)。そんな彼女が、ある国民的人気ミュージッシャンのジャクソン(ブラッドリー・クーパー)との出会いを契機に、どんどんスターへの階段を駆け上がって行くサクセスストーリーだ。

   だが、この作品はただのサクセスストーリーだけでは終わらない。アリーとジャクソンが織り成す深くて切ない「愛」の物語でもあるからだ。どちらかというと、アリーの「成功」よりも、2人の間の「愛」に焦点を当てて描き切った作品であるんじゃないかと感じたほどである。

   監督のブラッドリー・クーパーは、本作についてのインタビューで以下のように答えている。

   「かねてから僕は「愛」に関する物語を作りたかった。どんな人でも感情移入できるものだと思う」と。ブラッドリー・クーパーは、本作のテーマを「愛」にしようと最初から決めていたのだ。

   だからこそ、観ている者たち誰もが本作の登場人物たち、特にアリーとジャクソンに感情移入してしまい、ついほろりと涙をこぼしてしまう場面があるのだろう。

   もちろんそういった場面は、人によって様々なはずだ。アリーに感情移入する者もいれば、ジャクソンに感情移入する者もいる。もちろん、2人の両方に感情移入する者もいるに違いない。

   このように、本作は、音楽によって語られた深みある「愛」の物語なのである。

本作の魅力

   本作で流れる音楽は、どこを切り取っても最高だとしか言いようのないほどの出来である。

   OPで流れる『Black Eyes』。OPから最高にクールなギターの音が響き渡り、最高にワクワクさせられた。と同時に、ブラッドリー・クーパーの歌声がとんでもなく素晴らしかったことに驚いた。彼は、ミュージシャンとしても活動出来るのでは、と思ったくらいである。

   予告で何回聴いたかわからないほど聴きまくった事実上この映画の主題歌である『Shallow』。心が震えた。アリーとジャクソンの2人の歌声に胸が熱くなってしまったのだ。

   そして、本作の楽曲の中でも特に私が感動したのは、『I’ll Never Love Again』という曲である。この曲に込められた歌詞の内容、レディ・ガガによる圧倒的な歌唱力、そして何よりもそこで流れる映像に、観た者はきっと心を打たれることであろう。

レディ・ガガの圧倒的存在感

   本作の魅力はなんといっても主演のアリー役を演じたレディ・ガガの存在である。

   映画館のスクリーン上で、ありのままのレディ・ガガを拝むことができ、それに加えて圧倒的でなおかつ素晴らしい彼女の歌声をまるで彼女のライブに来た観客の1人にでもなったかのように聴くことが出来るのだ。なんて贅沢なんだろう。

   本作を観てレディ・ガガのことをより大好きになる人たちは大勢いるに決まっている。それほど、彼女の演技と歌声は圧巻としか言いようがない。

   レディ・ガガは、歌がとてつもないほど上手だということは、鑑賞前から知ってはいたのだが、まさか演技の方もこんなに素晴らしかったとは。レディ・ガガのことをそこまで詳しくない人が観ると、きっと彼女に対する捉え方が180度変わってしまうことだろう。

   鑑賞後、私は完全に彼女の虜になってしまった。まさか歌声で自分が泣かされるとは思ってもみなかったので本当に驚いたものだ。

私の1番好きな場面

   私の1番好きな場面は、アリーがみるみるうちにスターへの道を進んで行く様子をずっと見てきたジャクソンが、ある日アリーに向かって少し嫉妬の混ざった嫌味を言ってしまう場面である。私はこの時のジャクソンの気持ちに何だかものすごく共感を覚えた。

   この場面には、アリーに歌声だけで勝負して欲しかったというジャクソンの気持ちが込められていたのかもしれない。スターになるのはいいのだが、プロデューサーの言いなりにはならないでくれ、そういう風に彼は伝えたかったのであろう。

   この辺りは私も彼に同意する。彼女の変貌ぶりに寂しさも覚えていたはずだ。私だったら、もう耐えきれないほど寂しくなってしまうよ。このまま彼女はどこかへ飛んで行ってしまうのではないか、と。出会った頃の君のままでいて欲しい。これは男のわがままなんだろうなあ。と思いながらこの場面を見ていたものだ。

   また、ジャクソン自身は、アリーの躍進とは正反対に、どんどんアルコール中毒と難聴が進行してしまい、もう取り返しのつかないところまで追い込まれていた。この辺りのブラッドリー・クーパーの演技は文句のつけようがないほど素晴らしい演技であった。

   落ちぶれていく彼の演技にすっかり魅了され、知らぬ間に彼への感情移入が止まらなくなってしまったぐらいだ。国民的人気ミュージシャンからアル中によってスター街道を踏み外していくまでを見事に演じ切ったブラッドリー・クーパーには脱帽である。こんなにも素晴らしい演技を見てしまうと惚れてしまうなあ。

最後に

   ブラッドリー・クーパーが今後俳優としてだけではなく、監督としても目が離せない人物の1人となったことは間違いない。

   2018年の最後にこんなにも素晴らしい作品に出会えるなんてラッキーすぎた。あまりにも素晴らしい作品であったので、2019年の1月4日にIMAXで2度目の鑑賞をしてきた。さすがIMAX。迫力とサウンドが全然違う。再び感動の波に包み込まれ、年明けに相応しい素晴らしい映画体験をさせてもらった。

   自分の2018年の最後を飾った作品が2019年の幕開けをも引き受けてくれるなんて、贅沢すぎやしないか。今年はどんな映画を最後に観るのかなあ。

予告編

↓映画『アリー / スター誕生』の予告編です↓

(出典 : 【YouTube】ワーナーブラザース公式チャンネル「映画『アリー/スター誕生』予告【HD】2018年12月21日 (金) 公開」)

(出典 : 【YouTube】ワーナーブラザース公式チャンネル「映画『アリー/スター誕生』主題歌スペシャル映像【HD】2018年12月21日 (金) 公開」)

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