生まれたということ

母子共に落ち着いた数ヶ月あと、ガラス越しの対面になった。
母親は我が子の顔を見て、自分が思い描いていた顔立ちと違い安堵した。と、同時にこれから育てていけるのかという不安に身震いしたという。
窓越しで看護師さんの腕の中で、親の不安など知らない子はミルクでお腹がいっぱいなのか眠って、眼を開かない。面会は短い。
今の医学に及ばない環境の中、保育器へと戻されていく子。
月足らずの栄養不足、先に羊水が出た、産声もすぐにあがらず力なし…医師からは発育不良、発達器官への影響による予見出来ない病気など退院日までに少しずつ一つずつ説明がなされた。
父親は入浴の手順や注意点を、母親はミルクの飲ませ方を重点的に習って帰宅となった。
通常の幼児とは違う日々が始まった。

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