三日月と金星

決して手の届くことはないそれは
誰のものでもなく
夜の中にただ浮かんでいる
それに気付いた僕らは
それを眺めることしかできない
そんなことにも気付かないで

あまりに広すぎる水色の空を
あまりに小さく進むそれが
なぜそこに浮かんでいるのか
よく分からない
大きくて重い鉄の塊
僕もそれに乗ってどこかに行きたい
知らない誰かがどこかへ飛んでく
僕はきっとあなたみたいになれない

誰にも目が合わないようにと
熱く眩しく温かくいるそれも
いつか必ず死ぬ時がくるらしい
僕らとおんなじ命なんだね
いつか死んでしまったなら
いつか死んでしまったなら
全部が全部冷たくて暗くなる
きっとその時僕らは生きていない
終わりなのか始まりなのか
宇宙にとってはどうでもいいこと

水槽の中にいるこいつが
何を思って生きているのか分からない
考えるとかそういうのはなくて
心とか意識とかもなくて
ただ生きて泳いでいるだけ
羨ましいような
そうはなりたくないような
人間さまの方がよっぽど変でさ
僕は自分が面倒くさい

私の隣にいるあなた
本当の本当は
何を考えて何を思って何を感じて
何を企んでいるのか分からない
何より分からないのは
傷や不安や罪悪感や我慢
不意にやってくるいつもの
いなくなりたい願い
逃げ出したい本音
もし隠されたら体の不調だって

あなたの隣にいる私
本当に本当の意味で
あなたを救うことはできない
そばにいられるなんて
必要な言葉なんて
たかが知れてる
それでも
あなたに元気で生きていてほしい
そう思っているのは本当のこと

一人になったあなた
最初から一人のあなた
かわいそう
なら僕もかわいそうな人
僕とおんなじ
なんなら僕は面倒くさいから
あなたの方がましな人
あなたに伝えたいことはあまりない
ってことは少しだけある

おかえり、
おつかれさま。

以上、まるごと宣伝でした。

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