ヨーダの物語 5

  ヨーダは、座学がすでに始まっている教室につくと、黒板にものを書いている教授に見つからないように、抜足差し足で自分の席に向かった。
 「ヨーダ、遅いぞ」教室中に響く大きな声でそう言ったのは、ヨーダのとなりの席であり、無二の親友であり、イニシエイトの中でも頭脳明晰、剣術やフォースでも敵なしのヒューマノイドの少年、ギークだった。
 「むむっ?」老教授が黒板に書いた手をとめ振り返る。
 「ヨーダくん、珍しいね、きみが遅刻とは。それにしてもいただけませんね、わしにばれないように席に座ろうとするとは。ギークくん、彼にいまのページを教えてあげてくれ」
 「すみませんでした!」ヨーダは頭を下げ、素直にあやまって席についた。
 「この野郎、やってくれたな」ヨーダはギークに向かって小声で恨み言をはなった。
 「428ページだ。遅れるやつが悪いんだろ。それよりどうしたんだ?遅刻なんてはじめてだろ?」ギークも小声で言った。
 「変な夢をみてさ、あとで詳しく話すよ」
 老教授は黒板を書きおわり、チョークを置くと振り返った。
 「この宇宙はとてつもなく広い。ウエスタン・リーチに属するジャクーはおろか、この広大な銀河をもってしても、宇宙全体から見れば他愛のない、ほんのちっぽけな存在じゃ。ちっぽけな銀河のなかのちっぽけな星の辺境にある、ちっぽけなアカデミーで君たちはフォースや宇宙について学んでいる。このクラスには体の大きいものや小さいもの、強そうなものから弱そうなものまでさまざまいるが、宇宙という果てしもなく大きな存在からすれば、その差異は皆無と言っていい」
 「先生」ヨーダが手を挙げた。
 「宇宙の果てに行くには船で何回ワープすればできるでしょうか?」ヨーダは、話の流れに関係なく質問するクセがある。
 「ふーむ・・」老教授は少し考えて、「おそらくワープを何千回、何万回やったところで永遠にたどり着けないじゃろう。それほど宇宙は広い。もし連続で何万回もワープできる船があるとしてだ、ワープを“完全な直線”でできる船があると思うかね?答えはNOじゃ。わずかでもワープが直線から外れれば、まっすぐ進んでいるつもりでも宇宙の一部をぐるぐる回っているにすぎないじゃろう。わしの言っている意味がわかるかな?」
 「よくわかりませんが、宇宙がものすごく広いということはわかりました!」
 「よろしい、話を続けよう。宇宙はとてつもなく深く広大で、ちっぽけな個人の差異なんてほとんど皆無だという話をした。だからといって、自分は弱いままでいいや、とか、頭の悪いままでいいや、などと思わないように。君たちが将来ジェダイとなり、シスの暗黒卿と対峙し、その勝敗を分けるのは、ほんの紙一重のフォースの差、あるいは剣術の差かもしれないのだから。またはフォースの力量や剣術の技量では言い尽くせないなにか、フォースの色や形というべきか、“運”といっても良いかもしれないが、そういったものが最後の最後に勝敗を分ける、ひいては銀河の運命をも左右するかもしれないということを忘れないように」

(ヨーダの物語 6につづく)