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ヨーダの物語 109

【前回までのあらすじ】
 少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
 親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗する。そしてレイゴウのもとで修行をし、ダークサイドに堕ちてしまう。その後ジェダイ・マスターふたりを殺し、ヨーダにも圧倒的に勝つ。
 ヨーダは、師匠となるグラドゥの住む星でフォースとは何かを学び、ついにギークのいる稲妻の星、ザンダーへ到着し、ギークとの戦いが始まった!


 ライトセーバーを起動させたということは、ギークは自分との話し合いに応じるつもりはないのだろうとヨーダは察した。だが話し合いをあきらめたくはなかった。
 ギークは少し屈むと走りだし、一気に間合いを詰めてきた。ヨーダは反射的にダブルブレイドを起動させ、相手の一撃を受け止めた。それはものすごい衝撃で、ヨーダの両手はビリビリ悲鳴をあげた。光刃どうしがぶつかり合う、電子的な不協和音とともにギークの回転する赤い光刃は、ヨーダの青い光刃を切り裂こうとしていた。ヨーダは恐怖を覚えながら後方に飛び退き、ギークから斬られるのをなんとか避けることができた。
 再び三十メートルほどの間合いがあき、ギークは今度はゆっくりと歩いてきた。
 (ギークのライトセーバー・・三本の光刃が高速で回転してるからまともにこちらの光刃で受け止めたら両断されてしまう・・まともに受けてはダメだ、攻撃をよけなくては・・)
 ヨーダは、向かってくるギークを睨みながら考えた。ギークの眼光からは殺気しか感じなかった。そしてギークとの話し合いや、言葉での説得はもはや不可能であることを覚悟せざるをえなかった。
 ギークはヨーダとの距離が十メートルほどになると立ち止まり、話し始めた。
 「ヨーダ、お前はアカデミーのギャザリングで、カイバークリスタルをふたつ見つけたよな。しかも石の方からおまえの手に飛んできたと。
 おれが石を見つけた時の話をしてなかったな。みんなとわかれ、ひとりで石を探しながら彷徨っていたおれは、すでに赤い石の存在をどこかで感じていた。なぜ青い石ではなく赤い石に惹かれてしまっているのか、自分を責めたよ。
 おれはまず青い石を見つけた。しかしそれは、おまえのように手に飛び込んでくるようなことはなく、大きな岩に埋まっていて、むしろおれの手に入るのを拒んでいるようだった。おれは自分だけの石にやっと出会えたと勘違いし、フォースを使って石を取り出そうとしたが、それが埋まっている岩があまりに厚く硬く、なかなか取り出せなかった。こんなに取り出せないのならおれは赤い石を選んでしまうぞ、と思いながら必死でフォースを使っていたら背後にゾッとするような殺気を感じた。
 振り返る間もなく、頭からこちらに突っ込んでくる何かをなんとかよけた。その「何か」はそのまま青い石の埋まった岩に突っ込んで砕き、青い石が地面に転がった。
 岩を砕いたのは、赤い眼と全身赤い石の鱗をした竜だった。竜は浮いていて、鱗が擦れてチキチキと音が鳴っていた。竜に顔の表情があるのか恐怖のあまりわからなかったが、ニヤリとされた気がした。
 それでその竜は浮いたまま去っていった。おれはわけもわからないまま青い石を拾って袋に入れ、赤い竜のあとをついていった。恐怖心でいっぱいだったのになぜついていったのか、自分でもわからない。
 しばらく追いかけると、赤く光る空間にたどり着いた。おまえたちは青い石で埋め尽くされた空間だけを見ただろうが、おれは赤い石の空間にも行ったんだ。壁という壁がすべて無数の赤い石で覆われて光を放っていた。おれは恐ろしくなって戻り、おまえたちと合流し、コウズを助けた。そのあと、赤い石が頭から離れず、「赤い空間」に引き返した。(青い石は落としてなんかいなかったのさ)
 赤い空間に入ると、いきなり赤い石三つが手に飛び込んできた。あまりの速さに手がじんじん痛んだ。おれはそのとき直感した。青い石ではない、おれだけの石はこの三つの赤い石だと。タオルで丁寧に石を包み、リュックサックのいちばん奥へつっこんだ。これを手に入れたと教授たちに知られたらおれはダークサイドに堕ちたと思われ、退学させられただろう。あの時のおれは、赤い石をすぐに捨てるべきだったのだろうが、そうはしなかった。なぜなら赤い石がおれを選んで飛び込んできたからだ。おれはジェダイとか関係なく、ただ強くなりたかった。
 赤い空間にはやはり赤い竜がいた。おれが赤い石をしまうのを見ると、そいつはまたどこかへ消えてしまった」

 (ヨーダの物語 110へつづく)