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ヨーダの物語 95

【前回までのあらすじ】
 少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
 親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗する。そしてレイゴウのもとで修行をし、ダークサイドに堕ちてしまう。その後ジェダイ・マスターふたりを殺し、ヨーダにも圧倒的に勝つ。
 ヨーダは、師匠となるグラドゥの住む星へ到着し、フォースとは何かを学んでいく!そして奇妙な夢をみる・・!


 「おまえの母親を殺すためだよ」
 ヨーダの心は怒りの炎で一気に燃え上がる。
 「なぜだ!!」それでもヨーダは親友を言葉によって引き止めようと試みる。
 「おまえの母親を殺せばおまえは必ずダークサイドへ向かう。おれとおまえならこの銀河を支配できる。レイゴウの力なんて借りなくてもな」
 「・・そんなことはさせない!」
 ヨーダは怒りにまかせ青と緑のダブルブレイドを起動し、ギークに向かって飛んで振り下ろす。ギークは赤い光刃で受け止める。
 「その怒りだ、その怒りこそがダークサイドへ向かう唯一の道なんだ。ダークサイドこそが、フォースの神髄なのだぁぁぁ!!」
 ギークの真紅の右眼がカッと見開かれ、声はおよそギークのものではなかった。老婆の声と野太い男の声が入り混じったようなものだった。鉄仮面の縁から鉛のような液体があふれギークの顔を覆い、口や鼻の穴にも入ってゴボゴボとギークの喉を鳴らし、やがて全身を覆う。ヨーダの心は怒りから恐怖に変わり、うしろに飛び退いて尻もちをついてしまう。「うわぁぁぁー!!」ヨーダは夢の中で叫ぶとベッドの上で目を覚ました。枕元にはミルクボールがいて、クーンと喉を鳴らしてヨーダを心配そうに見つめていた。ヨーダは時間の感覚がわからなかったため、窓の外を見た。岩でゴツゴツした地平線の輪郭が見え、空は紫とオレンジ色がグラデーションになっていた。これから朝日がのぼる。ちょうど夜明け前だ。
 「どうやら悪い夢でも見たようだね」
 グラドゥの声が聞こえた。部屋を見まわすとグラドゥはヨーダの部屋にはいなかったが、フォースによりヨーダの頭に直接話しかけていた。
 「とても恐ろしい夢でした」
 ヨーダもフォースを使って言葉を返した。悪夢によって息は荒れ、額に汗をびっしょりかいている。
 「ギークっていうあんたのお友だちも相当なフォースの使い手だね。やつはあんたが今いる場所を知っているよ。あんたの夢に入り込み、あんたをダークサイドに引き込もうと試みた。あんたは夢の中で見事に術中にはまり口車にのって怒りと恐怖を覚えて危うくダークサイドに堕ちかけた。運良くその子が救ってくれたよ」
 「その子?」
 「ミルクボールだよ。感じないかい?その子にもフォールが宿っている。なにも会話のできる知的生物だけがフォースを操れるわけではない。生命のあるもの、動物だって、昆虫だって微生物だって、植物でさえフォース感応者たりえる。その子があんたの変化を察知して、悪夢から、ダークサイドの誘惑から引き戻してくれたんだよ」

 (ヨーダの物語 96へつづく)