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ヨーダの物語 47

【前回までのあらすじ】
 少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
 元シス、ツキシマとの戦いで傷を負った親友ギークが療養中に訓練していると、謎の老人が現れ、戦うことになる!


 ギークは老人の言葉を無視して攻撃を続けたが、木刀は老人にかすりもしなかった。しびれを切らして右手を相手に向けフォースで攻撃しようとしたが、老人も手をかざしてそれを防いだ。逆にフォースに押し返され、ギークの右のひとさし指が逆に曲がり、悲鳴をあげた。強風によりその声は家の中にいる姉には届いていないようだった。
 ギークは後ろに飛んで退がり、木刀を左手で持って構えた。右手はもはや使える状態ではなかった。
 「ほう・・まだ戦うと?素晴らしい。すごい闘争心、ガッツじゃ」
 ギークは相手に飛びかかり、左手で木刀を振りつづけた。老人は相変わらず紙一重でよけつづけた。
 攻撃をつづけながらギークは思った。(なぜこの老人はよけつづける?やろうと思えばいつでもおれを倒せるはずなのに・・)
 ギークは攻撃する以外に考えが浮かばず、木刀を振るうしかなかった。ついにギークの体力は限界に近づき、木刀は大振りになり、小石につまずいて大きくころび、仰向けにたおれた。
 もはや起き上がれる体力は無い。老人が杖をついてゆっくり近づいてきた。
 「これほど限界になるまで戦ったことはないかね?どうだね?完全なる敗北感というやつは?」
 老人はギークの顔の包帯をゆっくりめくった。顔の左半分が露出した。ギークは片腕をあげる体力すら残っていなかった。
 「この傷があるからといって、おぬしの美しさが損なわれるわけではない。もう一度言う、もっと強くなりたかったら、恐れ山に来い。またな」
 老人は倒れたギークをそのままにしてスピーダーに乗った。顔をギークの家に向けると灰色の瞳の眼を大きく開いた。
 「姉か・・?わしは骨董品屋であり、しがない研究者でもある。わしの技術があれば、姉の病気も治せるぞ」
 老人は去っていった。
 ギークはそれを大の字で首だけ横を向き、右眼を大きくひらいて見送ることしかできなかった。
 あたりはほとんど闇になり、雲ひとつ無く、星々が降ってきそうなほど空を埋めつくしていた。
 ギークは泣いた。老人に敗北した自分の不甲斐なさと、圧倒的な強さをもった者とやっと出会えたことへの感動が入り混じっているようだった。

 さっきまで吹いていた強風と砂埃は、いつのまにか無くなっていた。あたりは全くの無音だった。
 がちゃ、という扉を開ける音と、自分の名を呼ぶ姉の声が聞こえた。早く見つけてくれ、という思いよりも、どうかこのまま放っておいてくれという感情がまさっていた。
 ギークはゆっくりと眼を閉じた。

(ヨーダの物語 48 へつづく)