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ヨーダの物語 17

ヨーダの物語 17

 ヨーダとギークを囲んだイニシエイトたちはざわつきだした。その中のひとりが「ヨーダの勝ちだと思います」と言った。
 チャイムが鳴り、道場を出ようとした教授が振り返った。
 「なぜ引き分けと判断したか?これがライトセーバーを使った勝負だとしたら?ダブルブレイドであるヨーダのライトセーバーは真っ二つになって機能を失い、さきほどのギークの首への攻撃はできなかった。しかしこれは木刀での勝負だ。以上を鑑みて引き分けとした」
 言い終わると教授は去っていった。
 イニシエイトたちは、引き分けはおかしい、勝ったのはヨーダだ、とか、ライトセーバーだったとしたら壊された時点でヨーダは負けていた、ギークの勝ちだ、などいろいろ議論されたが、それはイニシエイトたちがやんや言っているだけで意味のないものだった。やがてみな解散した。

 その日のアカデミーが終わり、ホバーボードに乗ってヨーダとギークは並んで帰った。ふたりはしばらく無言だったがギークが口を開いた。ホバーボードに乗っていると風の音が大きく、大声を出さなければならなかった。
「今までお互い本気を出したことがなかったとはいえ、おれは苦労なくお前に勝てると思ってたけどそうはいかなかったな。素直に負けを認めるぜ」
「いや、教授の言ったとおりあれは引き分けだよ。ライトセーバー同士の戦いだったらおれは負けていた」
「でもさっきのはライトセーバーじゃなかったぜ。もしライトセーバーの戦いだったら、おまえはもっと違う戦い方をしていたはずだ」
「それはどうだろう・・」
「そもそもヨーダ、おまえ本当に本気を出していたのか・・?」
「えっ?いまなんて?」
 ギークの声は風にかき消されヨーダの耳には届かなかった。
「いや、なんでもないっ。またな!」
 ギークは、今度は大きな声で叫んで自分の家のほうへ逸れていった。

 *

「ヨーダ、いくぞ」
 トラックの前に立つゴンは、ヨーダを手招きした。体が小さく、大きな耳と眼を持つ緑色の生き物は、よたよたと歩き、トラックの助手席の下にかけられた小さなハシゴを昇り、助手席に座った。
 ゴンはドアを閉め運転席にすわり、エンジンをかけた。レックと呼ばれる頭に生える2本の触角は、ヨーダと出会った頃と比べていくぶん張りを無くし、シミも目立ってきた。
「あれからもう30年か・・」
 ゴンは運転しながらヨーダと出会ってからの年月を思い出していた。

(ヨーダの物語 18につづく)